(検閲) / 2020年3月
1日
教養が欲しい。教養を手に入れてなにがしたいかというと・・・・・・・・・・・・(検閲)。
2日
水の夢をよく見る。今日は、おおきな川の中でワニに追われた。
3日
ひと月ぶりの人に会う。話されなかった話のひとつもないように聞いて、聞かれなかった話のひとつもないように話した。そこにある話が、擦り切れるほど繰り返されていたとしても、一回一回、星の砂みたいに大切なことの混ざっているので、あまり聞き漏らしたくはないし、あまり聞き漏らさないでほしいと思う。
そういうわけでこの日は、とても大切に話をしたのに、別れ際には壁打ちしたみたいな気分になって、沈む。
4日
ひと月ぶりの人に会う(昨日とは別の人)。言わないことが功を奏することもあるんだなと思った。
5日
悩むほどのことじゃない。それはわかった。でも、悩みがないとそれこそ生きていられない。
6日
森博嗣の新書を読む。
最近小説が読めなくなった。特に文芸書。なんか、脳が受けつけない。文字が上滑りする。エッセイとか日記とか新書とか実用書のほうがよほど頭に入ってくる。
まあ、そんな時期があってもいいか。
7日
いったん全部やめてみたらどうなのかなって。
8日
昼から人と会う。「どうしてそういうふうになったの?」と聞かれる。それがわからないからこういうふうになったんだよ。
帰りに書店に寄って、文庫本と雑誌を買う。
9日
昨日買った本をひと息に読む。『仮面病棟』(知念実希人)。最近映画化されたミステリ。当直の医師が、ピエロのマスクを被った強盗犯の病院立てこもり事件に巻き込まれる、という話。人質の女子大生と一緒に、ピエロから逃げ隠れつつ、病院に隠された謎を解き明かしていく……んだけど、この男女ペア、ところかまわずいちゃいちゃしだすので、謎よりもそっちに気を取られる。それも含めて面白い。
著者の知念さんは人気作家にして現役医師(すごすぎ)、病院の描写にリアリティがある。夜の病院ってやっぱり怖い……。むかーし、入院していたとき、夜中にトイレに行くのがすっごい怖かったのを思い出す(遠くで光ってるナースステーションの明かりがむしろ怖いのだ)。
10日
やるべきことはそれなりに重たかったものの、それなりに準備をしていたので、それなりにつつがなく終える。
11日
欲望に忠実になってみようと思い、帰路、コンビニに寄る。大量のスナック菓子が入った籠をレジに出すと、店員が目を丸くする。
家に帰って、ベッドの上で貪る。不良の気分を味わう。
12日
帰りの電車の中で、唐突に、「全部終わったら映画館に行けるんだ!」という閃きがあり、活力が沸いたような気になる。
13日
活力が沸いたような気になっていたのは幻想だった。格別幻想が悪いとも思わないけど。
14日
ほとんど記憶がない。
15日
一晩中星を見て過ごした。
16日
地球規模で考えると人類の歴史なんてすごく浅いんだよ、というグラフを書く。
17日
捨てたら、すごく楽になったような気がしたが、数秒後には幻想だったと気づく。というのを一人でずっと繰り返している。
18日
白っぽい丸。
19日
興味本位で人様の日記を読み、胸を打たれてぼろぼろ泣く。
20日
風が煩くて眠れなかった。
21日
花束をかかえて夜道を歩く。
22日
歌詞を書いた。救われない恋の歌になった。
24日
やるべきことがそれなりに重たかったのだが、ほとんど寝ていなかったため、ほとんど意識を飛ばしたまま終える。
25日
決意があり、沈丁花の香水をつける。よいやみのなかでいっとうさみしく香る。
26日
外国の本をつまみ読みする。夜はお酒を飲んでこんこんと眠った。
27日
2月(!)の日記を公開する。
2月の頭なんてぜんぜん世間も、自分も安穏としていたなあと思う。地盤沈下みたいにゆるゆると突然、全部のことが慌ただしくなった。
28日
1年振りくらいに朝ごはんを食べる。
先月の日記を読み返して、自分の発想に戦慄した。
29日
桜の短歌をつくった。短歌でお花見。
30日
買ったきりほとんど使っていない香水が山と出てきた。香水を買うのは趣味です。
31日
とてもとてもきれいに飛ぶつもりが、なし崩し的に消えてしまうなど。
例のウイルスのせいで世間がたいへんなことになっており、このような日記をつける(公開する)意義についていろいろ考えた。結果、そもそも意義なんて考えていたらわたしは最初から(公開される)日記という形式をえらんでいないよ、というところに落ち着いたので公開することにした。
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