ガチャを引くのは自分 By Umeko
中国の工場のトラックの運転手が笑いながら言った。
「うちの子、黒戸なんだよね。 5才になるまでに戸籍が買えるまでお金を貯めないと、幼稚園にも行けないんだ。 だから、この仕事を首になるのは困るんだ。」 トラックの運転手の月給は350元~550元、運搬する荷物の量などにもよりかわる。 子供の戸籍は10万元、5年でたまる金額ではない。
そう言って噛みタバコを噛んでは赤い歯を見せて笑った。
5才までにお金がたまらないと、運転手の子供は幼稚園にも小学校にも行けない、病院にも行けない、戸籍が無いから。 そのような子供が中国にはたくさんいる。 ここ十年になって、一人っ子政策は変わったが、小学校に行っていない子供が、中学から学校に行く。 ついて行けるわけもなく、ドロップアウトする。 チンピラがまた一人増えただけだ。
イラクのクルド族の男の子が工事現場に働きに来た。 英語もアラビア語も出来ない。 手ぶり身振りで、なんでもやるから、働かしてほしいと。 ちょうどイラク人がプライドが高いばかりで仕事が出来ないのに嫌気をさして、思い切って、イラク人以外を使おうと募集をかけた時だった。12~16才ぐらいの子供が働きにきた。 戦時国なので、16才以上の男子は戦争に行っていない。 見て12才と分かる子供は雇えないので、16才の証明書を持ってきた、クルド人4人と、トルコ人2人を雇うことにした。
そうして気が付くのは、学が無い人々は、学校にも行けない。 親がすでに文字が読めない。 文字を読めない親が子供に教えるのだから、結果は見えている。 それでも、手ぶり身振りで仕事を覚えようと努力する。 ここの仕事は3か月で終わるので、そこまでしか雇えない。 それも説明したが、ここの仕事が無いと、現金の収入がゼロだと言う。 どうやって食っていたのかと聞くと、羊の放牧と、近所の大きな農家の手伝いでほんの少しのお金を稼いでいたと。 ここの給金はイラクの最低賃金を守っているので、穴掘りでも、一日20ディナールにはなる。 お茶が1杯0.1ディナールの時代だ。ちなみに、チョコレートが1枚10ディナールであった。
20ディナールあると、家族8人が一日食え、少しは貯蓄できる金額だそうだ。 クルド族の男の子の家に遊びに行ったら、コップの水をもらった。 その家で、一番いい水をお客には出すと聞いていたので、飲む。
コップの半分が泥水で、上澄みを飲んだ。 お湯のようにあたたかい。 気温が40度以上ある泥壁の家には風も通らない。 クーラーなぞ望むべくもない。
そのような現実をたくさん見たし、経験した。
虚構と笑えない。
日本だけじゃない、世界は偽善に満ちていて、息が苦しい。
そんな時代に風穴をうめこさんは開け続けるのかもしれない。