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龍華工場から長安工場に移転した理由

2000年前後から、基板の製造に欠かせない半田が鉛フリーに
変わってきました。 
当時のうちの設備は、フロー炉と言う半田をつける装置が主流で、
半田を鉛フリーに置き換えて、基板の製造をしていましたが、
温度管理など鉛入りの半田と同じでは、不具合が多発しており、
装置の見直しも迫られ、工場も手狭なので、
引っ越しと同時に、フロー炉を全取り換えにして、
最新式のフロー炉やリフロー炉なども追加設備して、
生産量をあげることにしました。

フロー炉の新品は、メーカーの技術指導もあり、
最初から鉛フリーの半田用の装置で、不具合も減りました。 

射出成型や押出成形の製品の色付けには
カラーバッチと言う着色料を使用します。 
また、電線などのビニル製品には可塑剤と言う
ビニルを柔らくする油を含有します。 
ソニーショック後、移転に伴い、RoHS指令に準拠した製品つくりと、
ソニーのグリーンパートナーになるための環境つくりも
同時にクリアーしようと寝ないで仕事をしていました。 

RoHS指令より、ソニーの部品・材料における
環境管理物質 管理規定(SS-00259)の方が厳しい規格なので、
SS-00259をクリアー出来れば、RoHS指令もクリアー出来ると
踏んでいました。 

ただし、当時、疑問に思っていたこともあります。 

まず、半田に対するカドミウムの含有量ですが、
RoHS指令では、100ppmが閾値ですが、SS-00259では20ppmでした。 
現在は100ppmに統一されています。 
したがって入荷した半田の
MSDS(Materiar Safety Data Sheet:化学物質等安全データシート)にての
確認では、1000ppmが閾値なので各自が材料の
成分検査をしなければいけないと言う問題がありました。 
最近ではカドミについては20ppm以下であることを明記した
MSDSも多くなっています。 

梱包材についても、100ppmが閾値ですが、
梱包材は100%段ボールになり、段ボールの場合、
リサイクル率が非常に高いため、原材料が使用した
段ボールと言う事があり、段ボールの流通、使用過程においての、
カドミの汚染が避けられません。 
例えば、日本の場合、火山灰地帯に多量の段ボールの使用があり、
火山灰にはカドミが含有されています。 
キャベツ農家にて使用された、火山灰地帯の農産品を入れた
段ボールがリサイクルされて、家電品の段ボールに混入した場合、
測定したモノや部分により、閾値を超えた数値が計測されることがあり、
すべての製品が出荷停止になると言う問題もありました。 

カラーバッチに含まれるカドミは多くの企業が努力して
カドミなどを使用しないカラーバッチの開発が進んでいたので、
何とかクリアできました。 

もう一つの問題は、根深い問題で、アメリカの可塑剤メーカーの陰謀も
あるんじゃないかと、疑っています。 
当時の多くの血液パックはビニル製で、
フタル酸を含む可塑剤で作らていました。 

人の命を守る血液やその他の点滴薬剤の大部分がビニルパック製でした。 

アメリカの可塑剤メーカーが開発した可塑剤は値段が高く、
可燃性も高いため、ほとんど使用されることもありません。 
そんな中、フタル酸の可塑剤が身体に影響があると言う
研究結果が出され、アメリカで訴訟になり、
ついにフタル酸の可塑剤が使用禁止になり、
世界的にこの方向に進みましたが、
実際のビニル製品からフタル酸が使用されなくなるまで、
何年もの時間が必要でした。 
その間、ビニル製品が作れないため、
装置を遊ばして置くと言う問題がありました。 

このようなもろもろの問題を抱えながらの
工場移転と、工場の拡大をしていました。 

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環境管理物質の流れ(1)
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