マンガのデジタル制作化までの道 その5(ファンシーな絵土産デザイナー時代のハナシ)
まさかの続き!!(笑)
デジタルはじめてから、やってみたかった事。それが素材作り。
専門分野のソフトだし、ご存じない方も多いと思うのですが
CLIPSTUDIOを始めてみて、なるほどいいなぁと思ったのは
漫画家やアマチュアの作家さんたちが、自分で作った素材を
共有して公開できるというサービスがあるところ。
例えば、お花とか効果線とかもそうだし、背景なんかに至っても
無料で公開されているものもあれば、そこでしか使えない通貨で
公開している人もいるし、一定のレベルがあって審査に通らないと
出来ないけど、現金で売ることも可能。
プロアシの人なんかが自分の描いた背景を販売できるわけ。
アシスタントさんに個別に依頼するよりは安いし、何人かの作家で
背景を共有することになるんだけど、読者には関係のない事なので
これはこれでいいなぁと思ったりする。
以前から自分の描いた背景などをソフト化してデータを販売している方々や
自分で作ったスクリーントーンのデータなんかをソフト化して
売っている人たちがいたので、時々買っていたんだけど
使い方次第で個性がまったく違うので、これはとてもいいなぁと
思っているので、自分でも素材を公開してみることにする。
私はもともと漫画家になる前は専門学校を卒業して、下町の小さな会社に就職した。
地方土産卸会社で、都内ではデザイナーを2人かかえられるくらいには
そこそこ大きい会社だった。(他社はデザイナーは雇えずに外注)
土産物というとキーホルダーが主流だったのですが、
キーホルダーはフリーランスのキーホルダー専門に扱う人がいて、うちには5~6人のキーホルダー業者さんが出入りしていた。
その人たちが
デザイナーを安く雇ってはうちの会社に卸に営業に来るわけ。
みなさんそれぞれデザイナー不足で困っていて、
奥さんがサンリオの元デザイナーなんて方もいたけど、それは稀で
どうやったらデザイナーさんを雇えるのか首をかしげていた。
当時はPCは情報処理と会社の在庫管理に使うだけでネットは
ここまで普及してなかったので、色々と情報が不足していたの。
私と私の直属の上司の二人がデザイナーとして倉庫の片隅にある
小さなデザイン室に一日中いて、次から次へとくる仕事を
こなしていたというわけ。キーホルダーも時々やったけど
おそらくキーホルダーは専門業者で安く卸してから売ったほうが
収益になるので、私の職場ではほとんど手掛けなかった。
我々デザイナーはひたすら、提灯の図案とか通行手形とか、白虎隊の死亡者と年齢を並べた手ぬぐいの字だけ…なんて憂鬱になるものから、各地の名産や名物や、そこに生息する動物をデフォルメして次々とキャラクターを描いていたの。
そういえば、この記事を書いてて思い出した!!
かなり昔から提灯の図案を描く『画伯』と呼ばれるおじいちゃんが
会社に出入りしていた。アル中で、結婚もしてなくて生活保護で
妹さん夫婦の家に居候していたけど、お金がないとうちの会社に
提灯の図案を描く仕事をもらいに来ていた(;・∀・)
ジャッキーチェンの映画の酔拳の師匠みたいなおじいちゃんで( ´艸`)
アル中なんで筆がふるふるで、線もよれよれなんだけど、不思議な味が出てて意外と上手いので、時々仕事まわしていたんだよね・・・
あまりにもひどいと私の上司が手直し加えていたけど(;・∀・)
交通費がなくていつも1時間以上歩いてうちの会社に来て…帰りのバス代もないので、時々優しい営業のおじさんが1000円あげてた(;・∀・)
話をもとに戻すと( ´艸`)
私が入社した当時は16面パズルと10色ボールペンのセットで
日本全国各地のデザインをするのが多かった。
これは色も使えるし手ごろな値段でかわいいので売れたらしくて
50種類以上は描いたと思う。
例えばね、鍾乳洞だとコウモリ…とか
京都だと舞子さん…とか忍者とか
鹿がいっぱいいるところは鹿とか
海のそばだとイルカとかカメとか、軽井沢みたいな山だと
クマとかキツネとか…たいていは営業マンが指定された動物を
描くんだけど、何にもないと男女カップルのキャラクターを
その場で作るように言われて描いていくことも多い。
バブル末期だったので給料も良くて
会社の若い営業マンたちは都内にも関わらず全員車通勤という
今ではありえない現状だった(-_-;)
私はデザイナーとして入社したけど、会社で一番若かったせいもあって
実質は会議にも参加できないし、意見は無視。
茶くみや雑用で絵が描ければいい…的な扱いだったのに、
品物が売れないと絵が悪いせいだと、いちゃもんつけられる。
売れれば手柄は社長のもので、売れないと若い営業マンと絵のせい。
搾取社会と男尊女卑と年功序列のハラスメント天国だったので
権利はないのに結果の責任を押し付けられる立場にいた。
年に何度かやられるホントに困った思い付きの上司からの指令…
これにはもう円形脱毛症になるほど悩んでいた。
デザイナーは私と私の上司(男)の2人だけなのですが、
「お前らいつも同じものしか描けないのか!少しは違うもの描いてみろ!
売れる工夫をしろ!」…てんで、マーケティングに
新宿や池袋などに出向いては世間で流行しているキャラクターや雑貨などを買ってきたり、本などをたくさん揃えたりで、大げさに大改革を打ち出されるのだ。
その上で、これはどうでしょう、あれはどうでしょう…と色々と違うパターンの絵や違うタイプの構図を出してみるんだけど・・・・何枚も何枚も
さんざん描かせておきながら結局は
結果的には「これはうちのタイプじゃない」「こんなものは売れない」で
いつもと同じようなタイプの絵と同じような構図と、何故かローマ字ポエム付きの似たようなものばかりになる…というのを半年に一回くらいやる。
私は若かったし、なんとかしようと必死に描き続けたけど
私の上司は入社10年、ず~~~~~~~~~~~~~っとこれを
何度も何度も何回も何回も延々とくりかえされてきていて・・・
「でも、違うもの描いてもどうせ『これはうちのカラーじゃない』とか
『こんなものは売れない』とかいちゃもんつけられて同じものを
延々と描くしかないんだよ。オレ、このくだり何度やらされたと思う?」と
遠い目で肩を落としながら言っていた(-_-;)←さすがに同情した
諦めて毎回それに付き合うしかないのよね・・・
で、気が付くといつもと同じ構図のいつものパターンの絵ばかり描かされてしまい、売り上げが下がると同じパターンの絵しか
描けないデザイナーのせいで売り上げが下がっているんだと責任を押し付けられるわけ。
競馬でも一番人気しか買えないくせに、負けると人のせいなんだよ・・・
たまたま売れたり、たまたま当たると自分の手柄。
ホントに手堅い失敗のない石橋たたいて、たたいて、たたいて渡っても
失敗する時は失敗するし、売れるときは売れるので先なんか読めるわけないのだ。なのに絶対に失敗しない商売ができないのはデザイナーのせいだって
言われちゃうんだよね・・・キャラクター指定してきて、デザインの確認を
とった時点で自分も責任の一環があるはずだよね?でも、その責任はとらないんだよね…
ボツになった無駄な作業の産物は、一応ファイルに残してあって
退社するときに全部持ち出してきたので、これらを素材にすることに
したのでした(笑) 長いフリだったな・・・
この時の経験が生きていてキャラクター系の絵は、
なんなくサラサラと描けるので、ちょこちょこと描いて
サイトで期間限定で無料公開してから有償にした。
あんまり需要があるわけでもないんだけど・・・・
私自身、ここの素材で無償提供されたものでとても助かっているので
恩返しの意味もあって期間限定で無償提供したんだけど
本当は基本的には無償で使うとそれが当然となり、
技術の要求を無償でやれると考えるバカが多いので、
期間限定でお試しも含めて・・・という形をとる。
このシステムのいいところは、無償提供された素材でも
ユーザーの厚意で少しだけ投げ銭が可能なのよね~
私はけっこう気前よくバンバン投げ銭する。
技術には対価が払われて当然だと思っているから。
そんなわけで、素材は時々作りたいなぁ…と思っているの
つづく…かもしれない