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神奈川県川崎市1Rロフト付き2
私の小さな城は、外から軽い鉄骨の階段を上り、奥から2番目の部屋。ドアを開けるとまず短い廊下。右側に一口電子コンロのキッチン、左にユニットバスがあった。その先に六畳の部屋があり、後ろを振り向くと壁の右側に梯子がありロフトへと通じていた。ベランダは狭く、目の前が一軒家の窓で、線路沿いの踏切近くなのでよく電車の音とカンカンとなる踏切の音がしていた。ベランダに通じる窓の上にエアコンがあったが、ロフトは1年を通して冬は寒く夏は暑く、エアコンの風は届かなかった。
部屋は古くもないが新しくもなく、一口の電子コンロは少し使い込まれた感を出していた。床はフローリングで、赤茶の木に白い壁がよく映えていた。
確か部屋は六万ほどで、管理会社が隣の隣のそのまた隣に事務所を構えていた。一人暮らし初心者には心強い位置だった。
アパートの二階、角部屋ではない部屋のさらに少しだけ上の方で寝ることが楽しかった。部屋を見てすぐに、寝室は二階にしようと決めていた。ただ、実際暮らしていると梯子での上り下りで寝ぼけて足を滑らせてドキッとすることも多かった。
ベッドではなく実家から持ってきた敷布団は、はじめの頃は起きると畳んでいたが、そのうち大体形を整えて敷きっぱなしにする事が多くなった。
ロフトの布団で寝ていると、天井がいつもより近く感じた。小さな窓から薄く光が入り込んでいた。
一人暮らし始めては、スーパーに行くのも、献立を考えるのも、どこに行くのも当たり前のように一人で、初めての買い物は家の隣のコープだった。田舎から来た自分がこの都会の田舎で普通に買い物して大丈夫なのかおかしな不安を抱え、しかも、コープ。見たことのないスーパー。カードを作らないと買えないと思い、レジの人にカードはどこで作れますか?と聞いてドキドキしながら申し込み用紙に記入した。
家の横のスーパーの、千円デポジットの買い物カードが私の都会第一歩になった。
コープは小さな店舗で品揃えも決して多くなかったが、まだ料理をたくさん作れるわけでもない私には十分であった。マグロのサイコロ状に切られたものを買ってきて、自分で作った酢飯に乗せたものをよく食べた。納豆と牛乳と卵、そしてマグロともやしがよく買うものになった。