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神奈川県川崎市1Rロフト付き

大学進学とともに上京することが決まり、初めてではないが全然慣れ親しんでもいない渋谷へ到着し、はじめての一人暮らしの家を探しに向かった。母と共に、母が調べてくれた不動産屋へ。入学式は4月だが、足を運んだのはまだじんわり暑い秋の頃だったと思う。

東京からほど近い田舎から、渋谷のセンター街付近の不動産に足を踏み込んだ時、田舎者だから変なところを紹介されるんじゃないかと1人で身構えていた。

入店してすぐに担当についてくれたのが、俳優のムロツヨシさんに似たくりっとした目のおじさんで、なんだか頭もくるくるしていて本当にこの人で大丈夫なのかと不安は募るばかりだった。

はじめての一人暮らし。右も左も分からない。希望などなくどのくらいが学校からの適正距離なのかもわからず、母が横で希望を伝えるのをただ黙って聞いていた。バスとトイレは一緒でも大丈夫かと聞かれた気がしたが、確か大丈夫と答えたはず。丸洗いできるじゃんって思ったりした。住んでみてわかったが、丸洗いできるけどバストイレは別に越したことはない。人が来ることが多い人は特に。

ムロさんに紹介された部屋は全部で3つ。全て電車で周った。何線なのか、どこ方面なのか分からずムロに連れられて行きついた先は、神奈川の、改札目の前が畑というなんとも上京した感のない駅だった。改札を出ると、鶏がどこかで1鳴きし、カエルが合唱した。母とともにここは本当に都会なのか?と首をかしげたが、そこが私のはじめての一人暮らし舞台となった。

駅を降りた真ん前には野菜の無人販売所があった。

確か他にも2つほど、あまり都心に近くない家を見て回ったはずなのに私の記憶はこのはじめての神奈川県川崎市のロフト付きの部屋しかないのだ。多分、ロフト付きだから。少し憧れてたから。

この部屋は、はじめての一人暮らしではじめてだらけを経験した、今でも思い出深い部屋になった。

一人暮らし始めの大学生は、家具や家電、インテリアへのこだわりはあれどお金はない。ありがたいことに両親が揃えてくれた家電、家具での幕開けとなった。

実家の近所のヤマダ電機に通い、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、掃除機、ポットを購入してもらい、モールに行って食器や棚を選ぶ時間は本当に楽しかった。親の機嫌を損ねると買ってもらえないかもしれないという懸念があったので、基本両親がこれいいんじゃない?と言ったものはありがたくお願いするようにした。

かくして、私の初ソロ生活が始まったのだった。

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