好きな作家
好きな作家は誰と問われて1人だけ答えることができる。江國香織さん。
出会いは中学1年生の時。
後ろに小さな本棚があって、毎日、朝の時間に15分程度読書をしろという謎の週間があった気がする。その時間以外にも休み時間など好きな時間にそこに置いてある本を読むことができた。
その後ろから教室をどうでもよさそうに見ている本棚から「つめたいよるに」という本を選んだ。朝の時間に読めというのでそんな十数分で何を読めってんだと思っていたので、短編集になっているそれを選んだと思う。もしくは表紙が可愛かったとかそんな理由だ。
私はとてもはまってあっという間に他の時間でも読み進めてしまった(いつもはまるまでが時間かかる)。一文が短いし、わかりやすい言葉が多いし、さらにひらがなになっているところとか文字の横にうってある点々の強調でなんとなく情景や心情が浮かぶ気がした。
私が読んだ第一印象は水の中を漂うような、だけどたまに泥を投げつけられるような、そんな印象だった。たまにどきっとする話がある。
その中でも印象に残っているのは「デューク」という話だ。後から調べて知ったけれど、この話は以前のセンター試験かなんかで取り上げられて号泣する人が現れたらしい。確かに犬を飼っている人は胸に刺さるものがあるだろう。
私は泣きはしなかったものの、とっても切ない好きなお話しだった。小説を読んだ後はそこに出てくるアイスクリームを食べたり落語を聞いてみたい気持ちになる。単純。
単純といえば、私がこの時期いろいろ本を読もうとなったのも、国語の先生に褒められたからだ。この本知ってますって言って、さすがよく知ってるねと感心されたから(全教科で国語が一番マシな成績だった)。それから気をよくした私は図書館でも本を借りていた。単純。だけど1ページも読まずに返した本の方が恐らく多い。
最近心の余裕ができたので、また江國香織さんの本を読んでみた。一時期はまっていたのでブックオフで買った本が何冊か手元にある。
読んだのは「ウエハースの椅子」という文庫本。不倫をしているちょっと変わった女性のはなし。不倫といってもどろどろではなくて、さらっとしている。相手の奥さんは一切でてこない。主人公の子供の頃とか現在の状況とかが描かれている。読んだか読んでないか忘れたので読んでみた。久しぶりに腰を据えて小説を読んだので面白かった。
江國さんの物語に登場する女性は、ちょっとだけ風変わりで自由で奔放で繊細だなと思うことが多い。それに憧れている節もあるのかもしれない。私はどちらかというと、頭でっかちというか、損得とか効率を考えて物事を考えたり選択したりすることが多い。最後は直感に任せる時もあるけど。だから自分とは違った、そういう自分の気持ちのままに生きている人が羨ましいのかもしれない。
読んでみてやっぱり好きだなぁと思ったし、こういう好きな時間を過ごせるのはありがたいなぁと思った。余裕があったら本読も。
小説を読み始めてはまるとよく歩きながら読んでしまう。二宮金次郎みたいになる。
ながら歩きはやめましょう。