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在上海活下记录 1
芥川龍之介 「上海遊記」に寄せて
私の支那国上海での初日は冷めざめと降り頻る雨であった。
飛行機を降りる前、父が初めて私に教えた支那語は【不要(ブゥヤオ)】であった。ニィハオでもシェシェでもない、ブゥヤオ。意味は見ての通り必要ないという意である。何故と訝しがる私に父は一言「降りたら分かるさ。追いかけてくる男たちに言うんだよ」
機場の外に出たか否か、何十人もの車屋が私たちを包囲した。何かわぁわぁと喚きたてているものの、それが乗っていかないのか?という誘いであることぐらいしか分からない。半ば怯えていると外套の袖を引っ張られた。私はブゥヤオ!!と反射的に叫んで数歩先にいる父のもとに退却した。車屋はニヤリと笑い、私の声色を真似て、ブゥヤオ!とふざけていった。こうして支那人に初めて通じた中国語は【不要】となった。
《続》
芥川の上海への旅行記を読んでいたら、もう100年近く前のことなのに、芥川が上海に最初に抱いた印象と私が最初に上海に抱いた印象が似通いすぎて驚いたのです。なので、私も文体だけは大正10年に戻ったつもりで、上海での初感を書いてみたくなりました。
明日また続きを書きます。
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