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子宮頸がんワクチン打った

予約に至った経緯

 2024年9月6日、子宮頸がんワクチンの1回目を接種した。本当だったらもっと早く、高校生の頃に来ていたお知らせに従って接種するはずだった。
 私は入学した高校の環境が合わずに心身を壊し、高校生活の約半分はうつ状態だった。途中で通信制の高校に転校し、心身の調子を取り戻したり大切な友達ができたりしたので、いつかそのこともお話したい。
 とにかく、ワクチンのお知らせが来ていることを確認したり、病院に電話して予約をとったりする余裕がなかったのだ。そうこうしているうちに市から手紙が来た。「無料で受けられる期間が2025年の3月で終わっちゃうよ。全部で3回打ち終わるのに半年かかるから、2024年の9月には1回目を打ってね」と。なるほど、かしこまりました。初めてお知らせが来た際の接種を逃した人向けに、キャッチアップ接種を行っているという案内だった。ありがたい話である。
 バイトを頑張っているが、金銭に余裕のある生活はできていないため、なんとしてでも無料で受けたい(20歳になって年金を支払い始めたのだが、将来の自分を助けようと学生向けの免除を選ばなかったために毎月少々苦しい思いをしている)。病院はいつもどこも混雑しているイメージがあるため、近所のクリニックの開院と同時に電話をかけて予約をとった。この予約の電話をかけるのにも数日かかってしまった。あれこれ言い訳したいが、要は先延ばしにしてしまったのだ。気合が足りない。

母子手帳

 20歳にもなると、病院に行く機会がほとんどない。特に持病がなく、日常生活で大きな怪我をすることがないのはありがたいことだ。父方の祖母から受け継いだ健康で丈夫な体、いつもありがとう。
 以前にもキャッチアップ接種を受けようとして、市から予診票を送ってもらったことがある。予約の電話では「母子手帳と、予診票を記入して持ってきてくださいね」と言われたので、すぐに「あれのことか」と思い出し、引っ張り出してきた。母子手帳も持ってきて、なんとなくパラパラと見てみると、これがまたおもしろいのだ。
 3ページ目に「妊婦の職業と環境」という項目があった。仕事内容や勤務時間、通勤の状況などに加え、住居の種類や騒音、日当たりまで細かく質問項目があった。当時の私(in 母)は、2階建て集合住宅の1階で、騒がしく、日当たりの良好な家に住んでいたようだ。元気な生後20年の現在では「こんなことも聞かれるのか」と思うような項目だが、妊娠期の母子にとっては精神的なストレスの面で重要なことなのだろう。
 さらに進むと、8ページ目には「出産の状態」が記録されていた。妊娠39週で、私は外界に出るのに9時間49分かかったらしい。「正常分娩」のハンコがどっしりと押されている。20年前、3000g弱の私は立派に外界での人生をスタートさせたようだった。

接種

 全3回のワクチン接種でお世話になるクリニックは歩いて10分ほどのところにある。徒歩圏内にあることで、重い腰をあげなくてはならない感覚が軽減され、さっさと行って帰ってくることができた。
 予防接種をしてくれる病院を調べていた時に、今回のクリニックの口コミが目に留まった。「医者は良いが受付の感じが悪い」だの、「受付に問題はないが医者が最悪だ」だの、人によって言っていることは違うが内容は総じて酷い有様であった。正直、一瞬ためらった。嫌な思いはしたくない。しかし、私には時間がない。無料期間中に全3回の接種を終わらせたいのだ。そういえば、病院の口コミなんてどこも酷いことを書かれているのが常ではないか。意を決して予約の電話をかけて良かった。電話口の女性の声や言葉は柔らかかった。

 実際に受付での対応も丁寧であった。呼ばれて奥の部屋に行くと、母と同年代くらいに見える看護師さんが気さくに話してくれた。
「今の時期多いのよね~、キャッチアップ期間は延びたけどもうすぐ終わっちゃうんだもんね。20歳ってなると、高校生の頃ちょうど接種が止まってた時期よね」
 そうだったのか。まったく情報を入れていなかったために初耳であった。お知らせは来ていた気がするけれど、その後に受付を停止していたようだ。どうやら副反応が強く出てしまう人が多くいたらしく、その割合や対処などの不明な点があったため、一時的に受付を休止していたらしい。
「これ自費で打とうとすると高いから…うちだと1万5000円かな。全部で3回だから4万5000円はかかるもんねぇ」
 あっっっぶな。本当に危なかった。大出費につらい思いをするところだった。キャッチアップありがとう。

 そのうちお医者さんがやってきて、受付で提出した予診票の内容を確認し始めた。どうやらお急ぎのようで、確認は正確でありながらも「適当か?」と一瞬だけ疑ってしまうほどに速かった。
 そして「はいじゃあやりますよ~」と声がかかり、左腕にアルコール消毒をされ、ひんやりした部分に針が刺された。「ちょっとちくっとしますよ~」は20歳になっても言ってもらえた。母の話では、私は幼いころの注射で泣いたことは一度もない。この歳で泣くことは絶対にないから、「注射で泣いたことがない人」の称号を確定することができた。
 そういえば最近は行っていないが、一時期は趣味かと思うほど献血に通っていた。献血で刺される針は普通の注射針よりも太い。泣くほどではないが、あれはさすがに痛い。あの痛みを知っているから、もう普通の注射では「いって!」みたいなことにはならないだろうと思う。

 接種後、経過を見るために20分は院内で待つようにとお願いされた。20分経ってもなんともなかったので、そのまま受付で次回の予約をしてクリニックを出た。
 次回は11月9日の土曜日にまたここへ来る。私の体が少しずつ子宮頸がんに強くなっていく。


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