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「ソ」イ・ソースマン

 202X年……世界は水に浸され、圧力をかけられ、煮られ、小麦と種麹を混ぜられて発酵させられ、塩水を足されて醸造された。海は醤油になり、地は裂けて豆皮とうひになり、あらゆる生命体は絶滅したかに見えた。
 だが、人類は死滅していなかった。身動ぎもせず、何も考えず、耐え抜いた。
 あらゆる混沌が寂莫サイレンスを覚え、一切エヴリシィンが眠りについた頃、残された彼らは昏き世界へと顔を出した。
 されど、待ち受けるは無間地獄。無限の死などそれまで。まことの苦しみ相対す。
 今まで築かれた文明は悉く崩壊し、それに乗じて易々と行われる鬼畜の所業。強盗、殺人、強姦……それらを顔色変えずに行える悪党共。荒涼と絶望だけが広がる世界に鬼畜が百鬼夜行パーティの火が灯る。
 そんな中、真闇から一筋の光さす。悪党の仲間か?否。ただの死にたがりか?否。それは一つ、希望の光。もろみの中から這い出ては、無頼の畜生道ザ・ロードを闊歩し、喑冥のそら穿つらぬいて、忘却オブリヴィオンから見つけるは日華の煌めき。
 体全身、黒光り。されどの夢、白光り。過去に背を見せ、覚悟握りしめ、邪知暴虐、悪逆非道を駆け抜ける。
 彼の名前はソイ・ソースマン!彼を染め上げた醤油で善を助け、悪を滅ぼす。
 
 
 

第一話「うみの中から」


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