成長期の乳房

気違いがやってくる。
大きな鉈を持って、
僕の所へやってくる。
足を引きずって、
じわりじわりとにじり寄ってくる。
僕は何にも悪いことをしていないのに、
彼は僕を殺そうとしてくる。
嫌だ!嫌だ!
殺さないで!
まだ夢もかなえていないのに、
まだ愛する人も見つけていないのに、
まだ宿題を終わらせていないのに、
どうして僕を殺そうとするんだ?
彼はまだやってこない。
だから僕は毎晩今日こそ死ぬと、
思いながら目を瞑る。
そしたら僕はいつの間にか寝てしまっていて、
ある夢を見るのだ。
それは僕が大きな鉈を持って、
足を引きずって、
じわりじわりと、
ある男の元へにじり寄る夢だ。
僕は、そこでは気違いを演じているのだ。
全く失礼な話だ!
でもこの夢の中では意外と、
嫌な気持ちはせず、
嬉々として足を引きずって、
その男の元へとにじり寄るんだ。
夢を見るごとに僕は、
その男の元へと近づく。
そして僕の恐怖も、
日に日に膨らんでいく。
まるで成長期の乳房だ。
きっと僕が夢の中で彼に出会うとき、
僕は殺される。
どうか夢の中の僕よ、
彼のところへ行かないでくれ!
後生だ!

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