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国連・子どもの権利委員会、気候変動と子どもの権利に関する一般的意見の第1次草案を発表して意見募集を開始

 本日(2022年11月15日)、国連・子どもの権利委員会が作成中の一般的意見26号(とくに気候変動に焦点を当てた子どもの権利と環境)の第1次草案が公表され、その内容に関する第2次協議が始まりました(~2023年2月15日)。オンラインアンケートのほか、子どもたちとのワークショップを開催するためのツールキットなども作成されています。詳しくはこちらのページ(英語)を参照してください(国連・子どもの権利委員会のページも参照)。
 とりいそぎ、第1次草案のチャイルドフレンドリー版を日本語訳しましたので、公開します。PDF版もあわせて掲載しておきます。子どもたちへの声かけや説明に適宜ご活用ください。草案そのものの日本語訳は、12月に入ってから公開する予定です(追記:公開しました)。なお、オンラインアンケートについては今回も日本ユニセフ協会が対応すると思いますので、質問内容などの日本語訳は作成しません。これまでの経緯および今後の動向についてはマガジン〈子どもの権利と環境〉を参照してください。

一般的意見 第1次草案 チャイルドフレンドリー版

 国連・子どもの権利条約は、子どもの権利を守ると約束した国々による大切なとりきめです。条約では、誰が子どもにあたるか、子どもがどのような権利を持っているか、政府にはどのような責任があるかが説明されています。すべての権利は関係しあっており、いずれも同じぐらい大切で、それを子どもたちから取り上げることはできません。

 子どもの権利委員会は、世界中から集まった、子どもの権利に関する18人の専門家のグループです。委員会は年に3回ジュネーブ(スイス)で会議を開き、条約に調印したそれぞれの国で子どもたちの権利が促進・尊重されているかを話し合っています。委員会は、どうすれば子どもたちの権利をよりよく保障できるかについて、各国に対する勧告もおこないます。

 委員会は、子どもの権利が環境および気候変動とどのように関係しており、その権利を守るために政府が何をしなければならないかについて説明する、政府向けのガイダンス(一般的意見)を作成中です。

 さて、第1次草案ができました。
 第1次草案のこのバージョンは、子どもたち向けのものです。

はじめに

「ぼくたちは未来の世代なんだと〔おとなに〕言いたい。あなたたちがこの星をこわしてしまったら、ぼくたちはどこで生きればいいんですか?」(男子、13歳、インド)

 環境危害は、世界中で、子どもの権利に対する緊急かつ重大な脅威(おびやかすもの)となっています。子どもたちには、環境危害から守られる権利があります。子どもたちは緊急の行動を求めており、子どもたちの権利は守られなければなりません。この一般的意見では、緊急の環境・気候行動がなぜ必要とされているか、そして子どもたちが持っているすべての権利を守るために政府は何をしなければならないかを説明しています。

 環境に関する自分たちの権利を守るために立ち上がる子どもたちの目を見張るような努力に励まされて、委員会はこの一般的意見を作ることにしました。子どもたちは、この第1次草案の作成にあたって非常に大切な役割を果たしてくれています。一般的意見26号子どもアドバイザリーチームのメンバーといっしょに企画したグローバル協議では、103か国・7416人の子どもたちが意見やアイデアをシェアしてくれました。

※一般的意見草案およびこのチャイルドフレンドリー版で紹介している子どもたちの声は、グローバル協議の報告書からとられたものです。報告書は childrightsenvironment.org/reports/ から見ることができます。
〔訳者注/報告書の概要は〈国連・子どもの権利委員会の一般的意見26号(子どもの権利と環境)に関する子ども・若者アンケートの結果が発表される〉も参照。〕

キーコンセプト(基本的考え方)

 一般的意見では、非常に大切な4つの考え方を説明しています。

1 持続可能な開発

 政府は、何かを決めるとき、さまざまな国、さまざまな世代、そして子ども・おとなのさまざまなグループのニーズを考えるようにしなければならず、また社会的・経済的開発と環境保護とのバランスをとらなければなりません。

2 世代間の公平

 現在の世代の利益および現在の世代がおこなう決定によって、将来の世代に悪影響が生じるべきではありません。

3 利用可能な最良の科学

 政府は、決定をおこなうにあたり、科学者から示されたエビデンス(科学的根拠)を活用しなければなりません。

4 予防原則

 政府は、たとえ環境リスク(危険性)についてはっきりわからない部分が残っていても、そのリスクから子どもたちを守るための行動をとらなければなりません。

子どもの権利は環境および気候変動とどのように関係している?

生命・生存・発達に対する権利

 子どもたちは、健康的・安全な環境で暮らし、成長し、(身体的・精神的・霊的・社会的に)発達できるべきですし、年齢に応じて必要となる支援を受けられるべきです。汚染、鉛への曝露(ばくろ)のような環境危害のために子どもたちの命と暮らしが危険にさらされることは、あってはなりません。

健康に対する権利

 気候変動、汚染、不健全な生態系、生物多様性の喪失によって、子どもたちの心身の健康に影響が生じるべきではありません。子どもに健康上の問題があるときには、保健ケアと支援にアクセスできなければなりません。

教育に対する権利

 子どもたちに、正確で、子どもたちが理解できるやり方による環境教育がおこなわれるべきです。環境教育では、子どもたちが環境および他の人々とつながり、環境および他の人々を尊重することへの支援が求められます。子どもたちが学ぶ場所は、環境危害を受けない場所であるべきです。

人間らしい生活水準に対する権利

 子どもたちは、安全な食べ物、きれいな水、よい住居、そして生活・成長のために必要なその他の物にアクセスできるべきです。政府は、子どもたちが貧しい状態または安全ではない環境で暮らすことがないようにしなければなりません。

休息・遊びに対する権利

 子どもたちは、きれいで安全な場所で遊んだり活動したりすること、そして自然とつながることができるべきです。政府は、人々が暮らす場所を開発するとき、子どもたちがどのように遊んだり休んだりできるかを考えなければなりません。

先住民族の子どもの権利

 先住民族の子どもの命と生活、生存および文化的慣習は、先住民族の自然環境と非常に強くつながっていることが少なくありません。政府は、先住民族の子どもの権利を守り、その生活に関しておこなわれるすべての決定に子どもたちの参加を得るようにするべきです。

差別されない権利

 どんなグループの子どもたち(たとえば女の子、障害のある子どもなど)も、他の子どもたち以上に環境問題の被害を受けることがあってはなりません。政府は、グループ間の不平等についてもっと知るための情報を集め、その解決のために具体的行動をとるべきです。

子どもの最善の利益

 環境や気候変動に関する決定をおこなうとき、政府や企業は、子どもたちがどのような影響を受けるか、また現在・将来の子どもたちの幸福と発達をどのように支えていくかについて考えなければなりません。

意見を聴かれる権利

 子どもたちには、環境や気候変動に関連する問題についての発言権が認められるべきであり、その意見はおとなから真剣に受けとめられるべきです。政府は企業は、環境や気候変動に関する決定をおこなうとき、子どもたちの関与を得ることが求められます。

表現・結社・平和的集会の自由に対する権利

 子どもたちは、人権擁護者(人権を守るために活動する人)として、環境に関わる自分たちの権利のためにしばしば立ち上がっています。多くの子どもたちは、さまざまな環境で、友達やグループとも時間を過ごしています。政府は、こうした子どもたちの行動をやめさせたいと考えるどんな人からも、子どもたちを守らなければなりません。

司法にアクセスする権利

 環境被害や気候変動によって子どもたちの権利に影響が生じた場合、子どもたちは、地域的・国際的レベルで司法に――すなわち、自分たちが経験している危害および影響についての解決、支援および補償に――アクセスできるべきです。

清浄、健康的かつ持続可能な環境に対する権利

 この権利は条約に直接含まれているわけではありませんが、委員会は、子どもたちには清浄、健康的かつ持続可能な環境に対する権利があると説明しています。子どもたちがすべての人権を享受するためには、清浄な環境が必要です。子どもたちは、清潔な空気と水、安全な気候、健全な生態系と生物多様性、健康的な食べ物および汚染されていない環境にアクセスできるべきです。

清浄、健康的かつ持続可能な環境に対するあなたの権利を守るために、気候変動を背景として、あなたの国の政府は何をするべきか?

 条約に調印したすべての国(1つの国だけを除いた世界のすべての国)の政府は、いくつかの規則にしたがわなければなりません。

「地球温暖化などの問題は、国際的協力がなければ解決することはできません」(女子、11歳、中国)

政府がやるべきではないこと

  1. 子どもの権利に影響を及ぼす環境問題をつくり出すこと。

  2. 気候変動につながる活動を支えること。

  3. 環境や気候変動に関しておこなわれる決定から子どもたちを締め出すこと。

  4. 子どもたちが環境・気候行動に参加できないようにすること。

政府がやるべきこと

  1. 環境に関する政府の決定が子どもたちにどのような影響を与えるか(または与えつつあるか)を理解する(そして解決する)ため、いつも「子どもの権利影響評価」を実施すること。そのさい、異なるグループの子どもたちへの影響が異なる形で生じるかもしれないことに、とくに注意を払うこと。

  2. どうすれば環境危害や気候変動から自分自身および他の人たちを守れるかについて、明確な情報を子どもたちに提供すること。

  3. 企業が環境を汚染したり子どもたちに危害を与えたりしないようにするための法律を制定するとともに、自社が環境に与える影響について企業がうそをつかないようにすること。

  4. 環境問題は国境で止まるものではないことから、他国の政府と協働すること。環境にもっとも悪影響を与えている国々は、他国よりも多くの対応をとり、もっとも影響を受けている国々を支援することが求められます。

  5. 気候変動に対応するための活動が子どもたちの権利に悪影響を与えないようにすること。

  6. 気候変動について、いま行動を起こすことの重要性について科学者が教えてくれることにしたがうこと。

  7. 地球温暖化を抑えるための約束を守ること。

  8. すでに気候変動の影響を経験している子どもたちを守ること。暴風雨、洪水その他の異常気象に備えて校舎や水道管を強化するとともに、緊急事態には食料を供給すること。

  9. 計画、決定および解決策の策定に子どもたちの参加を得ること。

  10. 気候変動に関しておこなわれるすべての決定で子どもたちの権利を考慮し、また子どもたちに関しておこなわれるすべての決定で気候変動を考慮すること。

 この第1次草案に関する委員会への意見をお待ちしています。詳しくは:
childrightsenvironment.org/get-involved

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平野裕二
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