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国連・子どもの権利委員会、審査や総括所見で用いる新たなクラスター構成を確認

 昨年末に投稿した〈資料:国連・子どもの権利条約に掲げられている子どもの権利(分野別)〉で、
● 国連・子どもの権利委員会の定期報告書ガイドラインでは条約の実体規定が9つの分野(クラスター)に分類されていること
● 第94会期(2023年9月)以降、総括所見に〈子どもの権利と環境〉という新たなクラスターが設けられたこと
● その他、▽〈基礎保健および福祉〉のクラスターが〈健康(第6条、第24条および第33条)〉〈生活水準(第18条(3)、第26条および第27条(1)~(3))〉に分けて記載されるようになったり、▽「市民的権利および自由」の見出しが「市民的および政治的権利」に修正されている場合があったりといった変化が見られること
――について報告しておきました。

 NGOの Child Rights Connect が、最近発表した資料(UN Committee on the Rights of the Child: NEW - Dialogue Structure〔PDF〕)でこれらのクラスターの変更について整理してくれていますので、あらためてまとめておきます。

 Child Rights Connect によると、委員会は第95会期(2024年1~2月)に締約国との対話の新たな進め方(revised dialogue structure)を正式に承認したとのことです。定期報告書ガイドラインそのものはまだ正式に改訂されていませんが、今後、本審査の進行および総括所見の作成は後掲の新たなクラスターに基づいて行なわれることになります。

 主要な変更点は次のとおりです(上記の説明と重複している部分もあります)。

  • 子どもの年齢に関わる問題を取り上げていた〈子どもの定義〉(1条)のクラスターが削除され、これらの問題は〈実施に関する一般的措置〉の立法の項で扱うことになった。

  • 児童婚の問題については、引き続き、〈子どもに対する暴力〉の有害慣行の項で取り上げられる。

  • 新たなクラスターとして〈生活水準〉および〈子どもの権利と環境〉が設けられた。

  • 〈市民的権利および自由〉のクラスターは〈市民的および政治的権利〉と呼ばれるようになった。

  • 2つの選択議定書のフォローアップについては、それぞれ関連するクラスターに――OPSC(子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書)は〈子どもに対する暴力〉に、OPAC(武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書)は〈特別な保護措置〉に――編入することになった。

  • いくつかのクラスターで新たな項目を設けた(後掲)。

 以下、新たなクラスター構成をまとめておきます(すべての締約国の報告書審査で以下のすべての問題が取り上げられるとは限らない点にご注意ください)。新規項目は太字で示しておきます。


1.実施に関する一般的措置(1条、4条、42条および44条(6))

2.一般原則(2条、3条、6条および12条)

  • 差別の禁止

  • 子どもの最善の利益

  • 生命、生存および発達に対する権利

  • 子どもの意見の尊重

3.市民的および政治的権利(7~8条および13~17条)

  • 名前および国籍/出生登録

  • アイデンティティに対する権利/アイデンティティの保全

  • 表現の自由

  • 思想、良心および宗教の自由

  • 結社および平和的集会の自由

  • プライバシーに対する権利

  • 適切な情報へのアクセス

4.子どもに対する暴力(19条、24条(3)28条(2)、34条、35条、37条(a)、39条およびOPSC)

  • 虐待およびネグレクト

  • 体罰

  • 有害慣行

  • 拷問および残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰

  • OPSC(該当する場合)〔新〕

  • 被害を受けた子どもの回復および再統合

5.家庭環境および代替的養護(5条、9~11条、18条(1)~(2)、20~21条、25条および27条(4))

  • 家庭環境

  • 家庭環境を奪われた子ども

  • 養子縁組

  • 不法移送および不返還

  • 親が収監された子ども

6.障害のある子ども(22条)

  • 障害のある子ども

7.健康(6条、24条および23条)

8.生活水準(18条(3)、20条および27条(1)~(3))

  • 生活水準(社会保障および住居を含む)

9.子どもの権利と環境(2条、3条、6条、12条、13条、15条、17条、19条、24条および26~31条)

  • 子どもの権利と環境

10.教育、余暇および文化的活動(28~31条)

  • 教育(目的および提供範囲)

  • 教育の質

  • インクルーシブ教育〔新〕

  • 職業上の訓練および指導

  • 人権教育

  • 休息、遊び、余暇、レクリエーションならびに文化的活動および芸術的活動

11.特別な保護措置(22条、30条、32~33条、35~36条、37条(b)~(d)38~40条およびOPAC)

  • 庇護希望者、難民および移住者である子ども

  • マイノリティ集団または先住民族集団に属する子ども

  • 経済的搾取(児童労働を含む)

  • 路上の状況にある子ども

  • 人身取引

  • 子ども司法の運営

  • 武力紛争における子ども(該当する場合にはOPACを含む〔新〕)

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平野裕二
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