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マレーシア人権委員会、スポーツコーチ等を対象とする人権・子どもの権利講習の必修化を勧告

★ Malay Mail - Suhakam: All sports coaches should undergo compulsory training on children's rights to receive licence
https://www.malaymail.com/news/malaysia/2023/01/18/suhakam-all-sports-coaches-should-undergo-compulsory-training-on-childrens-rights-to-receive-licence/50837

 マレーシア人権委員会(SUHAKAM)は、1月18日、すべてのスポーツコーチおよび指導員を対象として、生徒の指導ライセンスを得るための条件として人権・子どもの権利に関する講習を必修にするべきだと勧告しました(SUHAKAMのプレスリリース〔英語・マレー語〕も参照)。

 この声明は、あるバレーボールのコーチが2人の選手(10代)に対する暴力行為を理由にマレーシア・バレーボール協会(MAVA)からライセンスを取り消されたことを受けて出されたものです。この暴力事件は第20回マレーシア・ユースU14バレーボールチャンピオンシップ(2022年12月14~16日、ジョホール州)で起きたもので、コーチが選手2人に平手打ちをする動画がSNSなどで拡散され、非難を集めていました(FMT: Coach who slapped players suspended by volleyball association〔2023年1月1日配信〕 など参照)。協会の対応については、教育省と若者・スポーツ省も1月12日付の共同声明で支持を表明しています。

 SUHAKAMのリリースを訳出しておきます。

 マレーシア人権委員会(SUHAKAM)は、コーチまたはスポーツ教員を対象として、コーチライセンスを取得するための条件として人権・子どもの権利講習を必修とすることを勧告します。1989年子どもの権利条約(1989年)の締約国として、遊びおよびレクリエーション活動に自由に参加する子どもたちの権利が承認・尊重されることを保障するのは国家の責任です。
 これは、マラッカU14バレーボールチームのコーチが2人の選手に平手打ちを加えている様子を撮影した、最近拡散された動画を受けたものです。SUHAKAMは、マレーシア若者・スポーツ省および教育省がとった対応と、当該コーチの第1級バレーボール指導免許を取り消すというマレーシア・バレーボール協会(MAVA)の決定を支持します。
 このような処罰は、両省ともアスリート、とくに子どものアスリートの安全とウェルビーイングをないがしろにしないという、すべてのスポーツコーチ・教員に対する確固たるサインであるとSUHAKAMは考えます。この決定はまた、子どもやティーンエイジャーがスポーツ、芸術または文化的活動に参加する際、誰からも虐待されたり品位を傷つけられたりしないという保証とも理解されます。このような事件が適切に対処されなければ、子どもの情緒が乱されるおそれがあり、また子どもたちが遊んだりスポーツ活動に参加したりすることを怖がるようになる可能性があります。
 SUHAKAMはまた、すべての親/保護者のみなさんに対し、コーチやスポーツ教員による暴力や生徒の品位を傷つける事件があった場合には、より積極的に問題に対処する集団的取り組みの一環として、警察または女性・家族・コミュニティ開発省福祉局(15999もしくはWhatsapp 019-2615999)および関連省庁に通報するよう、要請します。

 警察や関連省庁への通報が「より積極的に問題に対処する集団的取り組みの一環」と位置づけられていることなどは、日本でも広く共有していかなければならないと思います。

 日本では、昨年(2022年)12月、スポーツ庁と文化庁が「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」をとりまとめました。暴言・暴力、行き過ぎた指導、ハラスメント等を根絶する必要性はいくつかの箇所で指摘されていますが、子どもの「権利」にはまったく触れられていません(当然、子どもの権利条約やこども基本法にも言及されていません)。12月に行なわれたパブリックコメントに応じて意見を送っておきましたが、まったく反映されなかったようです。

 以下、送った意見を採録しておきます(12月1日にFacebookに投稿したものの採録;リンクは今回追加)。子どもに関わる政策文書で子どもの権利にきちんと言及されるようにするためにも、国レベルで子どもオンブズパーソン/コミッショナーを設置することが不可欠だと思います。

★「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン(案)」に関する意見募集の実施について
〔リンク省略〕

 現在、上記のパブリックコメントが実施されています(~12月16日)。とりいそぎ、「子どもの権利」と「子どもに対する身体的・精神的・性的暴力」の観点から、次のような意見を提出しておきました。いずれも最低限必要なことだと思いますので、反映されることを望みます。みなさんからも意見を送っていただけるとよいと思います。

1)ガイドライン案では「子どもの権利」についてまったく言及がありませんが、子どもに直接関連するガイドラインである以上、関連の施策は子ども(児童)の権利条約およびこども基本法を踏まえて推進していかなければならない旨、「前文」および「本ガイドライン策定の趣旨等」で明示するべきです。運動部活動や地域スポーツクラブとの関連では、ユニセフ「子どもの権利とスポーツの原則」も踏まえることが求められます。
2)指導者に関しても、条約・こども基本法・「子どもの権利とスポーツの原則」の理念および内容を十分に承知していることの必要性を強調するべきです。
3)暴言・暴力、体罰、行き過ぎた指導、ハラスメントなどの根絶の必要性がガイドライン案のいくつかの箇所で強調されているのは評価できますが、これらの許されない行為の内容が必ずしも明確ではありません。別添「運動部活動での指導のガイドライン」には〈〔5〕肉体的、精神的な負荷や厳しい指導と体罰等の許されない指導とをしっかり区別しましょう〉(8~11ページ)という項目が設けられており、ガイドラインにおいても独立の項を設けてもう少し詳細に記述することが必要です。その際、これらの行為が子どもの人権侵害であることも強調することが求められます。
4)ガイドライン案には性暴力に関する具体的言及がありません。別添「運動部活動での指導のガイドライン」では「セクシャルハラスメントと判断される発言や行為を行う」ことが「許されない指導と考えられるものの例」に含まれていますが、不十分です。ガイドラインで「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」(令和3年法律第57号)に明示的に言及し、このような性暴力がいかなる場合にも許されないことを強調するべきです。
5)子どもの権利条約およびこども基本法の規定を踏まえ、本ガイドライン案についても、子ども向けのわかりやすい資料を作成したうえで子ども向けのパブリックコメントを実施することが求められます。

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平野裕二
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