見出し画像

欧州評議会、「若者と気候変動」に関する加盟国への勧告を採択

 欧州評議会の閣僚委員会は、10月23日、「若者と気候行動」に関する加盟国への勧告CM/Rec(2024)6を採択しました。欧州評議会のプレスリリース(10月24日付)を訳出しておきます(太字は平野による)。

★ Council of Europe: Council of Europe urges measures for young people and climate change
https://www.coe.int/en/web/portal/-/council-of-europe-urges-measures-for-young-people-and-climate-action-investing-in-green-jobs-and-skills-addressing-eco-anxiety-access-to-rights-for-vulnerable-groups

欧州評議会、若者と気候変動に関する措置を促す

 気候変動は、ヨーロッパのほとんどの若者にとって最優先課題のひとつである。そこで欧州評議会は、若者に特化した、気候変動に関する一連の措置を提案してきた。欧州評議会の閣僚委員会は、この問題に関する国際文書としては初めてのものとなる新たな勧告において、若者の表現の自由と、環境問題に関する司法審査の重要性を強調している。

「法律なくして刑罰なし」の原則が適用されるべきである。国はとくに、脆弱な状況に置かれている若者(周縁化されている若者や先住民族の若者を含む)が公的議論において環境悪化に関する懸念を表明する際、その権利を尊重するよう求められる。欧州諸国はまた、環境問題に取り組んでいる若者団体を財政的に支援するなどの手段を通じ、気候関連の意思決定プロセスへの若者参加の強化および意識啓発も図るべきである。

 グリーンジョブ、グリーン教育およびグリーンスキルに投資することが、もうひとつの勧告である。〔欧州評議会〕加盟国は、マイクロファイナンス制度を通じて若いグリーン起業家に対し、またグリーンテック(green tech)分野の研究開発プロジェクトに、これらの目的に特化した資金を提供するよう求められる。ユースワーカーに対してもその状況に応じた支援が提供されるべきであり、公的機関が提供する建物および施設(ユースクラブ、学校およびユースセンターなど)は、最適な労働・生活条件を確保できるよう、気候変動耐性を備えたものであるべきである。

 欧州諸国はまた、専門の若者向けサービスを設けることにより、気候危機が若者の身体的・精神的健康に及ぼす有害な影響の緩和にも努めるよう求められる。公的機関は、気候不安現象に関する調査研究を支援し、その現象に関する意識啓発を図り、かつ気候不安に苦しむ人々向けの支援サービスを発展させるべきである。

 若者に対し、環境問題についての、信頼できる、若者にやさしい情報が(主としておよび可能であればデジタル形式で、またマイノリティ言語でも)提供されるべきである。環境問題に関する偽情報の拡散を限定するための法的・実際的保障措置の確立が求められる。

 各国はまた、気候関連の政策決定に関して長期的視野を持つことを奨励するため、将来世代コミッショナーのような専門の機関を設置することも検討するべきである。

 勧告CM/Rec(2024)6は、前文と、欧州評議会加盟国がとるべき措置を具体的に掲げた付属文書から構成されています。付属文書の内容は次のとおりです。

適用範囲および目的
原則
措置
-若者が諸権利にアクセスすることの確保
-若者参加の強化
-グリーンジョブ、教育およびグリーンスキルへの投資
-ユースワーカーに対するその状況に応じた支援への投資
-保健ケアおよび焦点化された若者向けサービスへのアクセスの確保
-情報へのアクセスおよび情報を知らされる権利
-差別への対処および世代間衡平の確保

 今回の勧告では「若者」についてとくに定義されていませんが、欧州評議会による若者セクターの活動は基本的に18~30歳を対象としています。国際的には15~24歳/29歳の年齢層を指して「若者」ということが多いので、そのように理解しておけばよいと思います。

 たとえば、「若者参加の強化」に関して加盟国が促されているのは次のような措置です(要旨)。

  • 気候危機の影響から生じる若者のニーズや、科学的エビデンスと直接の経験を融合させた政策の立案のためにとるべき行動についての意見に関して、若者と協議すること。

  • 気候政策に関する意思決定プロセスへの若者の関与のための支援的環境を構築するとともに、若者の多様な代表性および意味のある参加を確保すること。ただし、気候危機およびその影響の複雑さに鑑み、若者の関与は、若者政策だけに限定されるのではなく、あらゆる関連のセクターに統合されるべきである。

  • 気候関連の法律について、またそれに基づく政策・決定の実施状況および評価について、若者に知らせること。

  • 若者の積極的関与をともなう規制・立法プロセスを促進するとともに、地方・広域行政圏・国レベルにおける政策立案に若者の視点を統合すること。

  • 気候問題に取り組む若者および若者団体の能力構築を図り、かつ金銭的支援を含む支援を提供すること。

  • 若者団体および若者が主導するその他の気候運動の言論・表現の自由および自律を尊重すること。

  • 政策立案機関の構想、設置および評価にあたり、制限的な社会規範およびジェンダー障壁を意思決定プロセスから取り除くこと。

  • 教育および学習、とくに乳幼児期から高等・成人教育に至るまでの学校における気候関連カリキュラムを通じて、若者・子どもの間で環境意識および環境に対するコミットメントの文化を涵養するとともに、持続可能な開発のための教育に関する教員とユースワーカーの連携を促進すること。

 勧告CM/Rec(2024)6に関する説明覚書Explanatory Memorandum)も作成されていますので、あわせてご参照ください。たとえば「意味のある若者参加」(meaningful youth participation)については、末尾の用語集(Glossary of terms)で次のように説明されています。

意味のある若者参加:若者の生活または集団的文脈における意思決定プロセスに加わることを指す場合がある。より幅広く、活動に加わることを意味することもある。参加はプロセスを指す場合もあれば、結果(outcome)を指す場合もある。若者参加の正当化事由としては、若者の権利の尊重、よりよい意思決定、民主主義の増進、周縁化された若者のエンパワーメントなど、さまざまなものが挙げられてきた。若者参加を促進するためには、力関係、プロセスのさまざまな段階で意思決定に影響力を行使できる実際の可能性、そのプロセスで若者に与えられた役割を検討することとともに、トレーニングを提供すること、提示されたアジェンダ(議題)に応じるだけではなく自分たち自身でアジェンダを設定できることが必要である。参加は、公式な参加型のしくみ(structures)および実践のなかで、またそのようなしくみや実践を通じて行なわれるが、日常的な状況においても行なわれる(若者パートナーシップ)。

「若者参加の強化」以外の項目についても、また機会があれば紹介したいと思います。日本も欧州評議会のオブザーバー国ですので、今回の勧告も参考にしながら取り組みを進めていくことが必要です。なお、マガジン〈子どもの権利と環境〉も参照。

いいなと思ったら応援しよう!

平野裕二
noteやホームページでの翻訳は、ほぼすべてボランティアでやっています。有用だと感じていただけたら、お気持ちで結構ですのでサポートしていただけると、嬉しく思います。