韓国政府、在留資格のない子どもに対する在留資格付与要件を緩和
韓国政府(法務部)は、在留資格がないまま学校に通っている外国籍の子どもに「教育権を幅広く保障し、韓国社会の構成員として国民とともに生きていけるように」(法務部の発表より)する目的で、このような子どもに対する在留資格付与要件を緩和しました。1月20日に発表され、2月1日から適用されています(ただし、現段階では2025年3月31日までの時限的措置とされています)。
★ The Korea Times: Stay permit requirements for undocumented foreign children to be eased from February
https://www.koreatimes.co.kr/www/nation/2022/01/177_322654.html
これまでは、在留資格のない子どもに対して学業を理由とする長期在留資格(D-4ビザ)が付与されるのは、韓国で出生し、韓国に15年以上滞在しており、国内の中学校・高校に在学中の生徒または高校卒業生に限られていましたが、今回の方針変更により、滞在期間の要件が、▽韓国内で出生した子どもまたは幼児期(6歳未満)に入国した子どもについては6年、▽幼児期を過ぎて入国した場合には7年に短縮されました。要件とされる滞在期間の短縮にともない、中学校・高校だけではなく小学校に在学中の子どもも新たに対象に含まれています。
法務部の発表(韓国語)によれば、外国人登録番号を持たないまま国内の小学校・中学校・高校に在学している子どもは現在3000人あまりで、その相当数が救済対象になると見込まれます。現在は上記の要件を満たしていなくても、2025年3月31日までに要件が満たされる場合には申請が可能です。高校卒業後は、進学・就職などの進路に合った別の在留資格を付与することが予定されています。
今回の要件緩和は、韓国国家人権委員会(人権委)による勧告などを踏まえて実施されたものです。人権委は、2020年3月31日、在留資格を持たずに長期滞在している子どもの退去強制を停止し、子どもが継続的滞在を希望する場合は在留資格を申請できるようにする制度の創設を勧告しました。これを受けて法務部は2021年4月19日に「国内出生長期不法滞在児童救済対策」を導入しましたが、これについても人権委から救済対象範囲が限られているなどの懸念を表明され、今回、要件とされる滞在期間を短縮することにしたものです。また、2021年11月15日に開催された「移民政策パラダイム転換大討論会」で学界・市民団体・移民政策専門家などから出された意見も踏まえたとされます。
人権委は1月27日付の声明(韓国語)で今回の法務部の発表を歓迎し、とくに幼児期に入国した子どもも救済対象に含まれるようになった点について、次のように述べました。
一方、今回の措置が約3年間の時限的措置であること、成人後の大学進学や就職がスムーズにいかなかった場合は1年間の暫定的在留資格しか得られずに不安定な状況に置かれることを指摘し、さらなる改善も求めています。
いくつかわからない点(▽D-4(一般研修)ビザの有効期間は最長で1年とされているようだが、在学中の子どもも毎年更新を申請しなければならないのか、▽子どもに在留資格が認められれば保護者の在留資格も当然に認められるのか、など)もありますし、そもそも新たな滞在要件期間でさえ不必要に長すぎるのではないかとも感じますが、いずれにしても子どもの最善の利益を踏まえた政策転換とは言えそうです。