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デジタル環境における子どもに関するOECD勧告/子どもの保護とエンパワーメントのためのG20原則

 OECD(経済協力開発機構)が2021年5月31日に採択した「デジタル環境における子どもに関する理事会勧告」Recommendation of the Council on Children in the Digital Environment)について、以前のFacebookへの投稿
「最近の関連国際文書と同じく、オンラインのリスクから子どもたちを保護することと、デジタル世界が提供する機会および利益の促進とのバランスを図るための指針を提供しています」
 とコメントしました。

 同勧告について、その策定に関わった齋藤長行さん(東京国際工科専門職大学教授)が「青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に関するタスクフォース」第16回会合(11月11日)で発表を行ない、その際の資料(PDF)が公表されています。デジタル環境における子どもの権利保障をどのようにバランスよく進めていくか考えるうえでたいへん有益な資料なので、国連・子どもの権利委員会の一般的意見25号(デジタル環境との関連における子どもの権利)およびその他の関連資料とあわせてご参照ください。

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 なお、11月18日(木)13:00~15:00(中央ヨーロッパ時間)には、同勧告のハイレベル・ローンチイベントがオンラインで開催されるとのことです(こちらのページを参照;11月17日までに要申込み)。

 齋藤さんの発表資料で触れられていますが、2021年8月5日にトリエステ(イタリア)で開催されたG20デジタル大臣会合では、「G20デジタル大臣宣言」(Declaration of G20 Digital Ministers〔PDF〕)の付属文書2として、「デジタル環境における子どもの保護とエンパワーメントのためのG20ハイレベル原則」(G20 High Level Principles for Children Protection and Empowerment in the Digital Environment)が採択されています。

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 同原則は前掲OECD勧告を踏まえており、内容的にも共通する点が多いものです。構成は次のとおりです。

セクション1.子どものための安全かつ有益なデジタル環境に関する原則
 1.1 基本的価値観(子どもの最善の利益/子どもの権利の保護・尊重)
 1.2 エンパワーメントとレジリエンス
 1.3 比例性と人権尊重
 1.4 適切性と包摂性
 1.5 責任の共有、協力および積極的関与
セクション2.子どものための安全かつ有益なデジタル環境に関する包括的政策枠組み
 2.1 政府によるリーダーシップとコミットメント
 2.2 法的枠組みの整備
 2.3 デジタルリテラシーの推進
 2.4 デジタル環境で子どもを支えるためのエビデンスに基づく政策
 2.5 年齢にふさわしいチャイルドセーフティ・バイ・デザイン
セクション3.国際協力
 3.1 国内機関・組織の国際的ネットワークの強化
 3.2 国内政策アプローチに関する国際的な情報共有
 3.3 地域的・国際的能力構築等の支援
 3.4 さまざまな国際的・地域的機関等の活動の調整
セクション4.デジタルサービスプロバイダー
 4.1 ベストプラクティスや行動規範の発展

 日本でも、インターネット等をめぐる議論で、子どもの「保護」だけではなく「エンパワーメント」の視点をもっと強調していく必要があるように思います。

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平野裕二
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