ニュージーランド子ども・若者委員会、レイシズムに関する子どもたちの声をまとめた報告書を発表
3月21日は国連が定める #国際人種差別撤廃デー でした。ニュージーランド(アオテアオラ)では同じ日を「人種間関係デー」(Race Relations Day)として祝っていますが、同日、子どもコミッショナーに代わって2023年7月1日に発足した独立機関「子ども・若者委員会」(アオテアオラの先住民族マオリの言葉で「マナ・モコプナ」)が、同国におけるレイシズム(人種差別・民族差別)についての子どもたちの視点をまとめた報告書を発表しました。
★ Mana Mokopuna: Children and young people share their experiences of racism and ideas to end it
https://www.manamokopuna.org.nz/publications/media-releases/children-and-young-people-share-their-experiences-of-racism-and-ideas-to-end-it/
『「レイシズムがなければ、アオテアオラはもっとよくなる」:モコプナ〔若者〕がシェアするレイシズム経験とその解決策』("Without racism Aotearoa would be better": Mokopuna share their experiences of racism and solutions to end it)と題するこの報告書は、法務省と全国イウィ〔部族連合〕首長フォーラム(NICF)の委嘱を受けて同委員会が2022年9月~2023年6月にかけて実施した調査を踏まえたものです。調査には、マオリをはじめとするさまざまな民族・背景の子ども全国161人(9~18歳)が参加しました。
子どもたちの声から導き出された主な知見は、次の5つにまとめられています。
1)私たちはさまざまな形でレイシズムを経験している。
2)レイシズムはどこにでもある。
3)自分の文化とつながることは、居場所があると感じる役に立つ。
4)モコプナは、レイシズムのないアオテアロアへの希望を抱いている。
5)レイシズムを終わらせるための解決策はたくさんあるが、行動することが不可欠である。
解決策として子どもたちがとくに強調したのは、教育の役割です。前掲プレスリリースでも、次のように述べられています。
「モコプナは、レイシズムに終止符を打つための解決策は教育制度にもっとも早い時点から埋めこまれるべきであり、そこには文化的多様性、包摂および理解が反映されていなければならないことも教えてくれました。モコプナは、教員や学校理事会に多様性が反映されることを求めるとともに、学校内で包摂的な環境を構築するための若者主導の取り組みを唱道しています」
具体的には、▽全世代の人々および権力のある立場の人々の教育が重要であること、▽年齢の低いモコプナを対象として悪循環を断ち切れば、レイシズムは止められること、▽教員および学校幹部を多様な構成にする必要があることなどが指摘され、いくつかのアイデア(学校内の多様性を示す「文化デー」の開催、文化的多様性ファシリテーターの配置など)が提案されています(報告書pp.51-54)。
こども大綱に向けたパブリックコメントでも指摘しましたが、日本では、国連・人種差別撤廃条約に加入しているにもかかわらず人種差別・民族差別をなくしていくための取り組みが非常に立ち遅れており、こども大綱でも具体的施策がほとんど挙げられていません。最近も、群馬県桐生市の高校で、サッカー部コーチの男性教諭2人が外国ルーツの生徒に対してヘイトスピーチを含む暴言を吐いていたことが報じられました(毎日新聞〈桐生第一高サッカー部 2教諭が外国ルーツ生徒に差別発言や暴言〉3月23日配信)。速やかに文部科学省として通知・通達を出すともに、実態調査を行なってさらなる対応を図る必要があります。