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ENOC(子どもオンブズパーソン欧州ネットワーク)、「独立した子どもの権利機関の強化およびそのかけがえのない役割の認識」に関する立場声明を採択

 ヨーロッパの34か国に設けられた44機関が参加するENOC(子どもオンブズパーソン欧州ネットワーク)は、9月21日、ブリュッセル(ベルギー)で開催された第27回総会で「独立した子どもの権利機関の強化およびそのかけがえのない役割の認識」に関する立場声明Position Statement on "Strengthening Independent Children's Rights Institutions and recognising their unique role"〔PDF〕)を採択しました。

 この立場声明は、近年、子どもオンブズパーソン/コミッショナーのような独立した子どもの権利機関(Independent Children's Rights Institutions: ICRIs)が相当の圧力や課題に直面していることを踏まえ、ICRIsの中核的原則――とくに独立性、自律性、十分な権限・資源、アクセスしやすさ、可視性および参加――をあらためて強調するとともに、すべての子どもの権利を保護・促進することを任務とする専門機関としてICRIsが果たすかけがえのない役割についての認識を新たにすることを目的としたものです。

 立場声明は、前文で
「国には、効果的な独立した子どもの権利機関(ICRIs)の設置なども通じ、子どもの権利条約を実施するためにあらゆる必要な措置をとる義務があること」
 などを強調したうえで、国際機関・欧州機関、各国および国内・地方当局に対して勧告を行なうとともに、自分たちのコミットメントも表明しています。日本における、とくに自治体レベルでの取り組みのあり方を考えていくうえでも参考になると思われますので、以下、勧告とコミットメントの部分を全訳しておきます(太字は平野による)。

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私たちENOCメンバーは、国際機関・欧州機関、各国および国内・地方当局に対し、以下の勧告を実施することによって自らの義務を履行するよう促す。

ENOCは、EU、欧州評議会、国連・子どもの権利委員会および他の関連の欧州・国際機関に対し、次の措置をとるよう求める。

● パリ原則ベニス原則〔欧州評議会・法による民主主義のための欧州委員会「オンブズマン機関の保護および促進に関する原則」〕および子どもの権利委員会の一般的意見2号に掲げられた最低基準が満たされることを確保しながら、独立した子どもの権利機関の設置を促進すること。
● ICRIsが存在する国では、とくにそれがより幅広いNHRI〔国内人権機関〕または一般オンブズパーソン事務所の一部とされている場合に、国の当局が、ICRIの可視性およびその任務を効果的に遂行する能力を高めるための子どもに特化した十分な資源を確保していることをモニタリングすること。
● 国が、ICRIの任務の効果的履行を確保するための法的根拠および権限ならびに必要な技術的資源、財源、人的資源その他の資源を提供しているかどうか、定期的評価を実施すること。
● 子どもの権利に関する基準の実施の独立したモニタリングにおけるICRIsの主要な役割、ならびに、その役割および実効性を強化する必要性およびそのための手段についての、国に対する具体的な勧告を策定すること。
● EU子どもの権利瀬略の枠組みのなかで、子どもの権利に特化したモニタリング機構を発展させること。
● 人権・子どもの権利に関する条約のモニタリングの一環として、ICRIsの任務を強化するための具体的かつ詳細な勧告を系統的に含める(とくにICRIsがより幅広いNHRIまたは一般オンブズパーソン事務所の一部とされている場合)とともに、定期的審査の際に勧告のフォローアップを確保すること。
● 人権・子どもの権利に関する条約機関のモニタリングプロセスにおいて、ICRIsと積極的に関わること。その際、ICRIsの役割および重要性に広範な注意を払うとともに、条約機関のモニタリングプロセスにおいてICRIsに可視性、重みおよびスペース(独立の発言枠を含む)を与えること。

ENOCは、各国ならびに国、地方および関連する他のすべての当局に対し、次の措置をとるよう求める。

● 条約に基づくすべての子どもの権利を効果的に保護・促進するため、十分な権限および資源を有するICRIについて国内法/地方法で規定すること。
● 予算、人員配置、広報および戦略に関わる問題についての自律性を保証することにより、既存のICRIs(またはより幅広いNHRIもしくはオンブズパーソン事務所内に設けられた子どもの権利局/部)の独立性および地位を確保するための資源を配分し、このような独立性および地位を発展させかつ促進すること。
● ICRIに対し、とくに当該機関がより幅広いNHRIまたは一般オンブズパーソン事務所の一部とされている場合に、その任務を効果的に履行するための十分な資源を保証すること。
● 当該の職に就く者を任命するための採用プロセスが、子どもの権利に関する専門性および経験ならびにその役割にとって必要なリーダシップを考慮した、透明な、独立の、健全な、かつ子どもが関与するものであることを確保すること。
● 子どもたちおよびその権利の実現に影響を与える立法上、行政上その他の問題についてのICRIの助言、勧告および指導を積極的に求め、かつそれに迅速に対応すること。
● 子どもの権利委員会の一般的意見2号にのっとり、ICRI(またはより幅広いNHRIもしくは一般オンブズパーソン事務所内に設けられた子どもの権利に関する局/部もしくは副オンブズパーソン)を、権限および資源のいかなる削減からも保護するとともに、その強化のみを確保すること。
● 子どもの権利影響評価に関するENOCのポジションペーパー(2020年)〔原文PDF〕にのっとり、公的な意思決定ならびに子どもに影響を与える法律、政策、予算決定、プログラムおよびサービスの策定および実施において権利基盤アプローチをとること。
● あらゆる段階の学校カリキュラムに人権教育および子どもの権利教育が含まれること、ならびに、権利侵害に対する効果的救済(ICRIsにおけるものを含む)にアクセスしかつそれを求める方法についての情報が普及されることを確保すること。

私たち、子どものためのオンブズパーソンおよびコミッショナーは、次のことにコミットする。

● 国連・子どもの権利条約にのっとり、常に子どもたちの視点を前面に出し、差別なく、子どもの最善の利益にしたがって行動し、かつ子どもの権利の享受を前進させること。
● すべての子どもの権利のモニタリング、保護および促進に際し、与えられた任務のあらゆる権限を可能なかぎり最大限に行使するための措置をとること。
● 地方または国のレベルで子どもの権利を保護しかつ促進するため、パリ原則ベニス原則および一般的意見2号にのっとって独立の立場で行動すること。
● より幅広いNHRIまたは一般オンブズパーソン事務所内に子どものための局/部または副オンブズパーソンが設置され、かつ、当該機関が可視化されかつ公的介入を通じて活発に活動するための権限、スペースおよび自律性を与えられることを確保するための法的規定を設けることを唱道すること。
● 任務のあらゆる側面(関連する場合、子どもの権利侵害に対して救済を提供するための効果的で子どもにやさしい苦情申立てのしくみを提供することも含む)を充足するために積極的、戦略的かつ創造的な措置をとること。
● 時間に関する子どもの認識および経験が異なることを考慮しながら、迅速な対応、支援および救済を提供するとともに、子どもの発達上のニーズに合わせて手続またはプロセスを修正すること。
● 苦情申立てに対する厳密な、公正な、子ども中心のかつ権利を基盤とするアプローチを提供しまたは確保するとともに、苦情申立ての結果および勧告に関する知見に対して日常的に意思決定者の注意を促すこと。
● 専門家、ボランティアならびに子どもとともにおよび子どものために働く人々を対象として、その実践において子どもの権利を根づかせかつ保護するための研修および職能開発を実施し、またはそのような研修および職能開発を唱道すること。
● 子ども(とくに被害を受けやすい集団・状況の子ども)、子どもをケアする人々および子どもとともにまたは子どものために働く他のすべての大人の間で、年齢にふさわしいやり方で子どもの権利に関する意識を高めるために特別に配慮すること。
● 子ども(とくに被害を受けやすい集団・状況の子ども)、そのケアをする人々、専門家、子どもとともにまたは子どものために活動する市民社会組織などの間で、ICRIの可視性およびアクセス可能性を高めること。
● あらゆる可能な現場および場所(教育現場、入所型・閉鎖型施設、コミュニティセンターなど)で、日常的に、子ども・若者に積極的に働きかけ、子ども・若者と会い、かつ子ども・若者に意味のあるやり方で関与すること。
● ICRIsをその目的にしたがって設計し、子どもにやさしく安全な、適切な物理的空間およびデジタル空間を備えること。
● 子どもたちの経験および洞察が全面的に考慮されるよう、機関の活動に、さまざまなやり方(調査、フォーカスグループ、インタビュー、子ども助言委員会といった意味のある参加のしくみによるものを含む)で系統的に子どもたちの関与を得ること。これには、機関の活動の将来の発展、評価および実施への子ども参加も含まれる。
● 適切なときは、機関の可能性を全面的に実現できるよう、機関の権限および資源の影響および規模に関する自主評価または独立評価のための手続を策定すること。
● 子どもに影響を与える法律、政策、予算決定、プログラムおよびサービスの策定および実施におけるCRIAs〔子どもの権利影響評価〕を促進すること。
● ICRIsが適格で信頼できる知識ハブとして参照の対象となり、かつ、すべてのスタッフが、子どもの権利に関する、高度かつ部門横断的な定期的研修を受けることを確保すること。加えて、指定されたスタッフが子ども参加および子どもの保護に関する特別研修を受けることを確保すること。
● ICRIsの戦略および優先事項を、子ども(とくに被害を受けやすい状況に置かれた子どもを含む)が自己の権利の享受に関して現場で直面している問題と一致させること。
● 定期的審査の枠組みのなかで、国連・子どもの権利委員会に対し、子どもたちの意見を踏まえたオルタナティブレポートを提出すること。委員会における意見交換への子ども参加を促進すること。


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平野裕二
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