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ウェールズ:「ザ・ライト・ウェイ」アプローチの評価で際立つ子どもコミッショナーの存在感

 ウェールズ(英国)の子どもコミッショナーが2017年に打ち出した戦略枠組みザ・ライト・ウェイ:ウェールズにおける子どもの権利アプローチに関わる資料をいろいろと紹介してきました。

-〈ウェールズ(英国)の子どもコミッショナーが求める「子どもの権利アプローチ」
-〈ウェールズ政府(英国)、子どもの権利アプローチを実践するための政府関係者向けマニュアルを作成
-〈ウェールズ(英国)の「子どもの権利計画」2021年版
-〈子どもの権利に関する意識啓発計画で子ども・若者のエンパワーメントを目指すウェールズ政府
-〈子どもの権利アプローチを学校でどう推進していくか:ウェールズ子どもコミッショナーの指針
-〈ウェールズ:子どもの権利アプローチを社会的養護の現場で活かすために
-〈ウェールズ:乳幼児教育・ケアの現場に子どもの権利を根づかせていくためのリソースパック
-〈ウェールズ子どもコミッショナー、親向けの子どもの権利条約ガイドページを開設〉(2022年7月4日追加)
-〈追加的な学習ニーズのある子どもたちの権利保障――ウェールズ子どもコミッショナーの指針〉(2022年11月2日追加)

 今年(2022年)3月には、「ザ・ライト・ウェイ」(TRW)アプローチの実施状況を評価した報告書『野心から行動へ:「ザ・ライト・ウェイ」の評価』Ambition to Action: an evaluation of 'The Right Way')が発表されています。評価のための調査には33機関が参加したほか、フォーカスグループにも22機関が参加しました。

 報告書では、TRWアプローチを推進するために子どもコミッショナー事務所が行なってきたさまざまな取り組みを振り返るとともに、同アプローチの有効性と課題を評価しています。全体的には、TRWについて次のような肯定的意見が多かったようです(リリース文より)。

● 子どもの権利に対する一貫した共通のアプローチを示してくれている。
● 連携の機会を持てるようにしてくれている。
● 「ザ・ライト・ウェイ」を理解して実行に移すための実際的支援を提供してくれている。
● コミッショナーの「お墨付き」(badge)があるので上司の了解が得られるようになっている。

 最後の点については次のようなコメントが紹介されています。子どもの権利を現場に根づかせようとしている人たちにとっては、コミッショナーの存在が心強い存在になっているようです。

「子どもコミッショナー事務所から出される公式なガイダンスと文書は、意思決定を行なう立場にある上司の了解を得るうえで役に立ってきました。サービス提供をめぐるさまざまなプレッシャーや要求をさばいていくためにはもうちょっと多くの直接の奨励が必要で、サリー〔・ホランド、前任の子どもコミッショナー〕がそれをもたらしてくれているんです。彼女の名前を見ると、みんな注意を払います。これはもう私個人の声ではなく、コミッショナーの戦略とリソースなのです。それを歓迎します」

 一方、このようなアプローチがさまざまな機関で組織的に定着しつつあるとは必ずしも言えないようで、今後必要な取り組みとして次の5つが挙げられています(報告書pp.12-13)。

1)アドボカシー(Advocacy):TRWの原則を根づかせることの戦略的利点を具体的に唱道しながら、TRWをいっそう幅広く推進する。
2)上級職員の承認(Seniority):子どもの権利の唱道および子どもの権利を根づかせるためのリソースに、コミッショナーが唱道することについて、決定的に重要な上級職員の承認を促すために必要な「影響力」が伴うようにする。
3)ロビイング(Lobbying):政策および計画立案にTRWを組みこむよう、ウェールズ政府を含む上級幹部へのロビイングを行なう。
4)検証(Scrutiny):TRWを活用している機関の正式な検証。マトリックスツールを活用した、毎年の進捗状況の確認。組織運営方針や計画(たとえば「警察・犯罪対応計画」、学校カリキュラムなど)におけるTRW原則の活用の検証。
5)研修(Training):TRW研修の機会を調整のとれた形で水平展開していく。これには、マトリックスの組みこみ、CRIA(子どもの権利影響評価)に関する支援のほか、TRWを根づかせることが、子ども・若者との関連で当該機関に課された立法上の義務の達成にどのように役立つかについての明確な関連づけが含まれる。

 とはいえ、子どもコミッショナーを軸とする継続的な取り組みにより、ウェールズの諸機関に子どもの権利の視点が根づいていくことは十分に期待できそうです。こうした機関を設けることの重要性をあらためて感じます。

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平野裕二
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