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国連特別報告者、汚染・有害物質管理のさらなる強化の必要性を指摘

1)Reuter: Pollution causing more deaths than COVID, action needed, says U.N. expert
https://www.reuters.com/business/environment/pollution-causing-more-deaths-than-covid-action-needed-says-un-expert-2022-02-15/

2)朝日新聞(ロイター):公害による死者はコロナ以上、迅速な行動必要=国連報告書
https://www.asahi.com/international/reuters/CRWKBN2KL07W.html

[ジュネーブ 15日 ロイター]- 国連は15日に公表した環境報告書で、国や企業による環境汚染で新型コロナウイルスよりも多くの人が死亡しているとし、一部の有害化学物質を規制するため迅速で野心的な行動が必要だと指摘した。
(中略)
 報告書の著者である国連特別報告者デビッド・ボイド氏は「汚染と有害物質がもたらすリスクを管理するための現在の方策は明らかに失敗しており、清潔で健康的かつ持続可能な環境を獲得する権利の侵害が広がっている」と結論付けた。
 同氏はロイターとのインタビューで「われわれは、こうした人々に対してより良い行動を取る倫理的、法的義務がある」と強調した。

 安全、クリーン、健康的かつ持続可能な環境の享受に関連する人権上の義務の問題に関する特別報告者、デビッド・ボイド氏の報告書はこちらから参照できます(国連人権理事会第49会期に向けて提出されたもの)。

 報告書には、
「マーシャル諸島、カザフスタン、チェルノブイリ(ウクライナ)および福島(日本)の人々は、核実験や原子炉災害に由来する放射線の悪影響に苦しみ続けている。……」(パラ35)
 との指摘もあります*。

* これに続く記述では米国と旧ソ連による核実験について触れているのみで、福島原発事故については具体的には述べられていません。なお、福島の状況については、日本の第7回・第8回報告書に関する女性差別撤廃委員会の総括所見(PDF)、パラ36-37が参照されています。

 公害等が子どもに及ぼす悪影響についても多くの箇所で触れられており、〈脆弱な状況に置かれた住民に対する特別な義務〉(Special duties towards vulnerable populations)と題する項目では、最初に子どもに関わる義務について説明されています。

59.子どもたちは、汚染・有害物質への曝露がもたらす健康上の悪影響を受けやすい特有な状況に置かれている。子どもの権利条約(第24条)に基づき、締約国は、環境汚染の危険性およびリスクを考慮しながら、十分に栄養のある食事および清潔な飲料水の提供を要求される。それでも、汚染および有害物質を原因として早すぎる死を迎える5歳未満の子どもは毎年100万人を超えている。子どもの権利委員会によれば、子どもが環境汚染の被害者であることが明らかになった場合、子どもの健康および発達に対するこれ以上の被害を防止し、かつ、すでに生じたあらゆる被害からの回復を図るための即時的措置が、関連するすべての当事者によってとられるべきである*。国には、子どもたちに影響を与える可能性のある決定を行なう際に子どもの最善の利益を考慮する義務があり、かつ、有害性のない(non-toxic)環境がすべての子どもたちの最善の利益の基本的要素のひとつであることは論をまたない。
60.子どもたちおよび若者たち自身の視点を考慮することが重要である。本報告書のために「子どもの環境権イニシアティブ」(Children's Environmental Rights Initiative)が集めた声には次のようなものがある。
 (a)「昔いつも走り回っていた草地は、いまでは工場団地になっています。昔いつも見上げていた星いっぱいの空は、いまでは煙でいっぱいです」
 (b)「男の子にも女の子にも、汚染のない星に暮らす権利があります」
 (c)「世界のリーダーたちは自分の国の健康に責任を負い、汚染レベルを下げようとしなければいけません。そのことが、命を救うことにつながるでしょう」
*「企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務」についての委員会の一般的意見16号(2013年)、パラ31からの引用。

 ボイド特別報告者は、
「安全、クリーン、健康的かつ持続可能な環境に対する権利が最近承認されたことは、汚染・有害物質の管理に対する社会のアプローチのターニングポイントと位置づけられるべきである。人権の観点からは、有害性のない環境を達成することは政策的選択肢ではなく法的拘束力のある義務なのである」(パラ47)
 と強調しています。ここでは明示されていませんが、国連人権理事会が2021年10月8日に採択した「安全、クリーン、健康的かつ持続可能な環境に対する人権」に関する決議(決議48/13、日本は棄権)を指していることは明らかです。

 報告書では、このような義務を国や企業がどのように果たしていくべきかに関する指針および勧告も詳細に掲げられています。日本も、これまでの消極的姿勢をあらため、積極的な取り組みを進めていくべきです。

 関連の動向はマガジン〈子どもの権利と環境〉も参照。

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平野裕二
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