国連・子どもの権利委員会の一般的意見27号(司法および効果的救済措置へのアクセス)に向けた協議のための子ども向け解説資料
国連・子どもの権利委員会が一般的意見27号(司法および効果的救済措置にアクセスする子どもの権利)の作成に向けた第1次意見募集(5月23日~8月23日)を実施したことについては、設問内容とともに5月の記事で紹介しました。
これに応じて提出された多数の意見書は、すでにこちらのページに掲載されています。7月31日~8月2日にかけてフィリピンのマニラで開催されたNGOの会合(第9回子どもの権利連合/ネットワーク・アジア太平洋パートナーシップ会合:APPM、Child Rights Coalition Asia 主催)の最終日に一般的意見27号に向けた意見書作成のためのワークショップがあり、私もあれこれと意見を言ったのですが、そこでの議論を踏まえた意見書も Child Rights Coalition Asia 名義で無事に提出されていました。
興味深いのは、各国の国内人権機関から計30本もの意見書が出されていることです。2018年に「子ども中心の申立ての取扱いに関する手引き」(2018年)を作成したアイルランド子どもオンブズマン事務所や、今年5月末に「子どもにやさしい苦情の取扱いの原則」および「子どもにやさしい苦情の取扱い手続ガイダンス」を発表したスコットランド公共サービスオンブズマン(SPSO)からも意見書が提出されており、とくに後者の意見書では「原則」および「ガイダンス」の内容に詳細に言及されています(アドバイザーである子ども・若者の声を踏まえて作成されたアイルランド子どもオンブズマン事務所の意見書については、同事務所のリリースも参照)。
そのほか、オーストラリア(連邦人権委員会およびクイーンズランド州家庭子ども委員会)、オーストリア(子ども・若者オンブズ事務所)、ニュージーランド(主任オンブズマン)、スコットランド〔英国〕(子ども・若者コミッショナー)、メキシコ(メキシコ市人権委員会)、南アフリカ(ジェンダー平等委員会)、フランス(国家人権諮問委員会)、デンマーク(デンマーク人権機関)、ブラジル(連邦護民官事務所・国家人権グループなど計5件))、ドイツ(ドイツ人権機関等・2件)、テュルキエ(テュルキエ人権平等機関)、モルディブ(人権委員会)、アルゼンチン(国家護民官事務所ほか・4件)、レバノン(国家人権委員会)、北アイルランド〔英国〕(子ども・若者コミッショナー事務所)、ノルウェー(ノルウェー国家人権機関)、フィンランド(子どもオンブズマン)、ポルトガル(オンブズマン)、クロアチア(子どもオンブズパーソン)などの諸機関から意見書が提出されています。各意見書の内容はきちんと確認していませんが、子どもの相談・救済に関わる各国の状況もある程度うかがい知ることができそうです。
子どもたちとの協議に向けた子ども向け解説
第1次意見募集には、子ども・若者グループからの意見書や、子どもたちと協議した結果の報告書も、コロンビア、アルゼンチン、チリ、南アフリカ、エクアドルから提出されています。
〈国連・子どもの権利委員会の一般的意見27号(司法および効果的救済措置へのアクセス)に関する協議のためのガイダンス〉で紹介したとおり、上記の意見募集とは別にこうした協議の結果を報告する機会も設けられており、その提出期限は2024年12月31日とされています。
子どもたちとの協議に向けて、NGOである Child Rights Connect が一般的意見27号についての子ども向け資料(PDF)を作成していますので、その概要を紹介します(Child Rights Connect のサイトの一般的意見コーナーに掲載されているものです)。
この資料では、国連・子どもの権利委員会および一般的意見そのものについての説明、今後の予定、委員会が知りたいこと(設問内容)についても説明されていますが、「司法および効果的救済措置にアクセスする権利」について解説している部分のみ、訳出しておきます。委員会が一般的意見27号でどのような問題を取り上げようとしているかについて、理解を深める一助になると思います。
――――――――――――――――――――――――――――――――――司法および効果的救済措置にアクセスする権利とはどういう意味?
国連・子どもの権利条約は、子どもが持っているすべての人権をリストアップしています。政府は、子どもが自分の権利を実際に使えるようにするため、2つのことをしなければいけません。子どもが支えを必要とするときは支えること、そして子どもが自分の権利を使おうとするときに邪魔をしないことです。子どもが支えを得られなかったり、子どもが自分の権利を使おうとするときに政府が邪魔をしたりした場合、子どもの権利が侵害されたと言います。
そんなとき、子どもは「公正な判断(justice)をしてくれる機関」のところに行き、状況を正すように求めることができます。これは、子どもの権利を侵害したのが政府ではなく、一般人や民間の会社だったとしても、変わりません。このような機会のことを、司法(justice)へのアクセスと呼びます。
同時に、大切なのは、公正な判断をしてくれる機関が決めたことにより、子どもがきちんと救われることです。このような機関は、子どもの権利が誰によって侵害されたかについて、そして状況を正し、子どもが受けた被害を回復し、同じことが二度と起こらないようにするために何をするべきかについて、判断します。これらをすべて含んだよい決定のことを、効果的救済措置と呼びます。つまり、子どもには権利があるし、権利が侵害された場合には公正な判断と効果的救済措置を求める権利もあるということです。
どんな機関が、どのように、公正な判断をして救済措置を提供する?
子どもは、権利が侵害された場合、個人として、あるいはグループで、次のような機関のところにいって救済措置を求めることができます。
自分の国の裁判所(宗教裁判所、部族裁判所、先住民族裁判所のような特別な裁判所を含む)
どちらの味方でもない人がみんなにとって納得できる合意を見つけるのを手助けしてくれる、調停のような裁判所以外のところ
子どもの権利を守るのが仕事であるオンブズパーソンや国内人権機関
学校、病院、子どものケアのための施設、子ども司法施設、何らかの目的のために人を閉じこめておく施設など、政府の機関や公共サービス機関(子どもの権利侵害がそこで起きた場合)
インターネットプロバイダ、ソーシャルメディア、ウェブサイトのオーナーなどの企業・会社(子どもの権利侵害がオンラインで起きた場合)
場合によって、人権を守る国際的・地域的な裁判所または委員会
普通は、これらの機関は次のようなやり方で活動します。
1.子ども(たち)が通報や申立てをするか、これらの機関に連絡をとって何があったかを話す。
2.公正な判断をしてくれる機関が、子ども(たち)の主張を検討する(つまり、もっと多くの情報を集めて、見聞きしたすべてのことについて注意深く考える)。その際、これらの機関は子どもの声に耳を傾け、子どもを支えなければならない。
3.これらの機関が、子ども(たち)にとって納得できる決定をするとともに、政府などが責任をとるようにする。――――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、第1次意見募集には世界中の市民社会組織からも多数の意見書が提出されていますが、Together (スコットランド子どもの権利連盟)のように提出した意見書とそのチャイルドフレンドリー版を公開している団体もありますので、あわせてご参照ください。