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韓国国家人権委員会、体育学校に在学する器械体操選手の人権保障について意見表明

 韓国国家人権委員会(以下「人権委」)は、3月16日、スポーツに特化した公立学校である体育中学校・体育高校の器械体操選手の人権保障に関して、教育部長官、関連の市・道教育監および大韓体操協会長に対する意見表明を行ないました。

-체육 중·고등학교 기계체조 선수의 인권 보호 및 증진을 위한 훈련체계 개선 등에 대한 의견표명(体育中・高校の器械体操選手の人権保護・増進のための練習体系の改善等に対する意見表明)
https://www.humanrights.go.kr/base/board/read?boardManagementNo=24&boardNo=7608951&searchCategory=&page=6&searchType=&searchWord=&menuLevel=3&menuNo=91

 人権委は2019年2月に「スポーツ人権特別調査団」を発足させ、まず小中高生選手を対象として人権状況全般に関する調査を行ないました。翌2020年には、相対的に人権侵害率が高いとわかった10種目(体操など)を選定し、詳細な面接調査を実施。その結果を踏まえ、器械体操選手を育成する6つの体育中・高校を対象として2022年にさらに詳しい調査を行ない、今回の意見表明に至ったものです。

 調査の結果わかったのは、次のようなことでした。

● 体育中・高校の機械体操選手は、身体的暴力や性暴力などの直接的な人権侵害よりも、種目特性と結びついた問題(無理な練習や過度な体重調節など)によって負傷、疲労の累積、成長・発達遅延などの困難を経験している。
● 体育中・高校に在学中の機械体操選手の多くは寮で相部屋生活を送っていることから、選手のプライバシーが十分に保障されず、練習後の回復のための休息空間としての機能にも限界が出ている。
● 相当数の寮が選手による携帯電話の使用を制限し、違反者に罰則を科している。一部の寮では管理者や先輩などによる非公式な規律も相当程度存在しているなど、多くの学生選手が統制的な環境で生活している。

 以上の結果を踏まえ、人権委は、体育中・高校に在学中の選手たちの成長発達段階やライフサイクルを考慮し、選手たちが身体的・精神的健康を維持して楽しみながら運動することができるよう、長期的な観点から科学的な練習体系と体重管理プログラムを開発・普及する必要があると判断しました。

 また、▽選手たちが使用する寮はプライバシーが保障される個人生活空間であり、休息と回復のための空間でなければならないことから、相部屋の比率を最小限にするよう寮施設の環境を改善すること、▽公式・非公式に課される各種の生活規則や規律・慣例などを点検して人権侵害の懸念を解消することも必要であるとも判断しています。

 そこで人権委は、教育部(日本の文部科学省に相当)の長官および関連の市・道教育監に対し、次のような意見表明を行ないました(要旨)。

-体育中・高校に在学する器械体操の選手が身体的・精神的健康を維持して楽しみながら運動することができるよう、練習体系(時間・頻度・強度など)の科学的改善を図り、ガイドラインを定めてその遵守を促すとともに、選手や指導者などを対象して関連の教育を行なうことが必要である。
-体育中・高校の寮で生活する器械体操選手の人権が幅広く確保されるよう、寮の環境を改善する必要がある。

 あわせて、大韓体操協会長に対しても、過度の練習、個人の経験に依拠した体重調節などによって体育中・高校に在学する器械体操選手の健康が脅かされないよう、成長発達段階および選手のライフサイクルを考慮した科学的練習体系および体重管理プログラムを用意し、指導者や選手に普及する必要があるという意見を表明しています。

 スポーツや部活動・クラブ活動で子どもの権利(とくに暴力・暴言やハラスメントを受けない権利)を守るための取り組みは日本でも徐々に広がりつつありますが、練習・指導のあり方を子どもの権利の視点から見直すための努力もさらに強化していく必要があるように思います。

 なお、〈マレーシア人権委員会、スポーツコーチ等を対象とする人権・子どもの権利講習の必修化を勧告〉なども参照。

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平野裕二
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