国連・移住労働者権利委員会、移住者の恣意的拘禁等に関する一般的意見草案を公表
国連・移住労働者権利委員会が、「身体の自由および恣意的拘禁からの自由に対する移住者の権利」に関する一般的意見5号の草案を公表し、意見募集を行なっています(提出期限:2020年10月30日)。
★ Call for comments: Draft General comment No. 5 (2020) on migrants' rights to liberty and freedom from arbitrary detention (deadline for interested parties: 30 October 2020)
https://www.ohchr.org/EN/HRBodies/CMW/Pages/CFI-GC5-2020.aspx
委員会は、恣意的拘禁の禁止が国際法上いかなる逸脱も許されない強行規範(jus cogens)であることを再確認したうえで、入管収容など移住者関連のいかなる拘禁も、
● 正当な国家の目的に基づいていること
● 常に、必要性および比例性の基準と両立する、最後の手段としての例外的措置として位置づけられること
● 刑事施設またはこれに類する施設を含む懲罰的環境で行なわれてはならないこと
● 拘禁が依然として必要であることを確保するために定期的再審査の対象とされること
の要件を満たしていなければならないとしています(草案パラ19)。拘禁の恣意性の判断基準として次のような図も示されています(正当な目的→法律適合性→必要性→比例性)。
さらに、身体の自由に対する移住労働者およびその家族構成員の権利に関わる条約の基本原則として、(a)差別の禁止の原則(第1条・第7条)、(b)移住の非犯罪化の原則、(c)入管収容の例外性の原則、(d)移住者である子どもの非拘禁原則、(e)脆弱な状況にある者の非拘禁原則の5つを挙げています(草案パラ36~53)。
日本は移住労働者権利条約を批准していませんが、恣意的拘禁の禁止は前述のとおり国際法上の強行規範として位置づけられるようになっています。また、身体の自由および恣意的拘禁からの自由に対する権利は日本が批准している自由権規約などでも保障されている権利であり、(d)の子どもの非拘禁原則は子どもの権利条約に基づく義務でもあります(この点については、移住労働者権利委員会が子どもの権利委員会と合同で作成した一般的意見4号(2017年)でも詳しく述べられています。パラ5~13参照)。
さらに、今回の一般的意見は、日本も賛成した「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト」(2018年)の実施に関する指針を示すものでもあるとされています(パラ8)。同グローバル・コンパクトのうち入管収容に関連する箇所は、日本語訳が法務省のサイトにPDFで掲載されています。
以上のことから、一般的意見5号が採択された場合、日本としてもその内容を参照することが求められます。というより、正式な採択を待たず、今回の草案も参考にしながら入管収容のあり方を人権の視点から見直していくことが必要です。
なお、移住労働者権利委員会の一般的意見については、前掲4号のほか、2号(非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利、2013年)と3号(国際移住の文脈にある子どもの人権についての一般的原則、2017年)の日本語訳を作成していますので、ご参照ください。国連移住ネットワーク「COVID-19 と入管収容:政府と他のステークホルダーは何ができるか?」(PDF、児玉晃一・鈴木雅子・仲晃生訳)なども参照。
【追記】(2021年5月12日)
まだ公表されていませんが、一般的意見5号は2021年4月30日に採択されました。