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「福岡県子どもの虐待防止と権利擁護に関する条例案」への意見
【追記】(2022年3月25日)本条例は2022年3月24日に県議会で可決され、成立しました。4月1日から施行されます。福岡県〈「福岡県子どもへの虐待を防止し権利を擁護する条例」を制定しました〉参照。条例の概要と条文はこちらのページを参照。
Facebookでは紹介済みですが、福岡県が「福岡県子どもの虐待防止と権利擁護に関する条例案」についての意見募集を行なっています。提出期限は12月28日(火)午後5時(必着)です。
「……子どもの人権が尊重され、かつ、子どもが健やかに成長することができる社会の実現に寄与する」(目的)
「子どもを虐待から守るにあたっては、子どもの生命を守ることを最優先とするとともに、子どもを権利の主体として尊重し、子どもの最善の利益を考慮しなければならない」(基本理念)
「県は、子どもの保護及び援助を行うに当たって、子どもの意見を聴く機会及び子どもが自ら意見を述べる機会の確保その他子どもの権利を尊重するための取組みを行う」(虐待を受けた子どもへの援助)
などの規定は評価できますが、いろいろと改善の余地がありますので、とりいそぎ以下の3点について意見をまとめました。少し寝かせてから明日(27日)にでも送るつもりです。意見を出そうと思っている方の参考になるかと思い、ここで公開しておきます。時間があれば他の点も追加するかもしれません。
1.基本理念(1)について
基本理念(1)虐待は何人も決して行ってはならず、また、許してはならない
【意見の内容】
虐待等の人権侵害は家庭だけで起きているわけではないことを踏まえ、「何人も、虐待その他の暴力を決して子どもに対して行ってはならず、また、許してはならない」旨の規定とすること。また、「福岡県における性暴力を根絶し、性被害から県民等を守るための条例」にも言及すること。
【意見の理由】
政府が2021年8月にとりまとめた「子どもに対する暴力撲滅行動計画」にも表れているとおり、子どもに対する虐待・暴力は家庭だけではなくさまざまな場所で発生しており、あらゆる場面での/あらゆる者による暴力に対処するのでなければ、虐待を効果的に防止することは困難であると考えられるため。家庭にとくに重点を置いた施策を進めていくのはよいとしても、このような視点を条例に明記しておくことが求められる。
2.基本理念(2)について
基本理念(2)子どもの生命を守ることを最優先とするとともに、子どもを権利の主体として尊重し、最善の利益を考慮
【意見の内容】
(1)「子どもの人権が尊重され、かつ、子どもが健やかに成長することができる社会の実現に寄与する」という目的を踏まえ、この点に関する基本文書である子どもの権利条約にのっとった対応をとっていくことを明記するべきである。
(2)基本理念の前後に、子どもの権利について具体的に定めた条文を置くべきである。
【意見の理由】
子どもの人権/権利の根拠および具体的内容に関する規定がなければ、条例の効果が減殺されると考えるため。なお(2)については、たとえば「沖縄県子どもの権利を尊重し虐待から守る社会づくり条例」第3条に
「全ての子どもは、適切に養育されること、能力が十分に発揮されること、虐待から守られること、自己の意見を表明することその他の個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する」
との規定が置かれていることなどが参考になろう。
3.児童虐待の防止に関する基本的施策(1)について
児童虐待の防止に関する基本的施策(1)虐待の未然防止 ③ 県による虐待に係る子どもへの啓発及び相談先の情報提供
【意見の内容】
(1)子どもへの啓発は、虐待に限定することなく子どもの権利全般について行なうこと、また虐待に限らずさまざまな悩みや権利侵害について相談できる機関に関する情報提供を行なうことを、明記すること。
(2)子どもへの啓発にあたっては、子どもが自分の権利についておよび自分が権利行使の主体であることを認識できるような方法で行なうよう努める旨、規定すること。
【意見の理由】
虐待問題に限定した啓発では、子どもによるSOSの発信が十分に行なわれない可能性があるため。この点、次の規定が参考になろう。
・東京都子供への虐待の防止等に関する条例第8条第2項「都は、学校、学校の授業の終了後又は休業日における子供の活動場所等において、子供に対し、自身が守られるべき存在であることを認識するための啓発活動及び権利侵害に関する相談先等の情報提供を行うものとする」
・沖縄県子どもの権利を尊重し虐待から守る社会づくり条例第19条「県は、子どもが虐待から逃れるため自ら行動することができるよう、市町村及び関係団体等と連携し、子どもに対し情報の提供その他の必要な支援を行うものとする」
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