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「2024年ジュネーブ子どもの権利宣言」

 1989年11月20日に国連(国際連合)総会で子どもの権利条約が採択されてから、今日で35年が経ちました。

 今年は、国際的な子どもの権利保障の出発点となった国際連盟・ジュネーブ子どもの権利宣言の採択(1924年9月26日)からちょうど100年という節目の年でもあります。この間、同宣言をあらためて想起し、今日および将来世代の子どもたちの権利保障にいっそう取り組んでいくことへのコミットメントを再確認するために「2024年ジュネーブ子どもの権利宣言」を作成する取り組みが進められてきましたが、ジュネーブ時間の20日午前0時(日本時間午前8時)に公式サイトがオープンし、正式に発表されました。

 この宣言は、スイス政府の推薦を受けて国連・子どもの権利委員会に選出されているフィリップ・D・ジャフェ委員(ジュネーブ大学名誉教授)のリーダーシップのもと、ジュネーブ市と、セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナル、アンファン・デュ・モンド(Enfants du Monde、世界の子どもたち)、テールデゾム(Terre des hommes)・スイスなどのNGOが協力しながら取り組んできたものです。原文は英語・フランス語ですが、すでに各国語版も掲載されています。日本語版の作成は縁あって私が担当したのですが、現時点で未掲載のようなので、とりいそぎこちらのnoteに掲載しておきます(追記:その後、日本語版も掲載されました。こちらのページの左側にあるBoxから言語を選択できます。現在36言語で掲載されています。当初は宣言の名称も Renewed Declaration for Children's Rights とされていたため、日本語版ではそれがそのまま残っています)。

 すでに早期賛同者の募集は進められており、国連・子どもの権利委員会の歴代委員長を含む1,300人以上の賛同者が集まっています。賛同は2024年12月31日まで受け付けていますので、賛同する方は、大人用フォーム子ども用フォームからお申込みください。

2024年ジュネーブ子どもの権利宣言

2024 Geneva Declaration on the Rights of the Child

 2024年11月20日、

 政府間機関によって承認された、したがって子どもの権利の普遍性を確認した初めての子どもの権利宣言である、国際連盟が1924年9月26日に採択した「ジュネーブ宣言」の100周年を記念し、

 35年前(1989年11月20日)に採択され、その後(197か国中)196か国の締約国によって批准された国連・子どもの権利条約(UNCRC)――その締約国の多くは、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(OPSC)、武力紛争における子どもの関与に関する選択議定書(OPAC)および通報手続に関する選択議定書(OPIC)にも加入している――を想起し、

 子どもの権利およびウェルビーイングに関して過去100年の間に達成された多くの重要な成果に留意し、

 にもかかわらず、世界中で数億人の子どもたちが貧困、暴力および気候変動の影響を受けており、かつ、これらの子どもたちが、その人生において、身体的健康および精神的レジリエンスに影響を及ぼす他の多くの課題に直面していることを危惧し、

 子どもの権利を保護しかつ促進するための緊急かつ包括的な共同行動がとられないかぎり、今日の子どもたちおよび将来世代が置かれることになるであろう苦境を深く憂慮し、

 人権擁護者および特に人権擁護者である子どもの並外れた貢献を認識し、

 私たちは、すべての国(地方および国の当局)、諸機関および組織――政府機関および非政府組織の双方――、ならびに、子どもか大人かを問わずすべての関係者に対し、次のことをするよう強く勧奨する。

● 国際的な協力および連帯の精神も踏まえ、UNCRCおよびその選択議定書に掲げられた、すべての子どもの諸権利を差別なく尊重し、保護しかつ充足することへのコミットメントを再確認すること。
● 今日および将来世代のすべての子どもに対して保障されるべき以下のことに優先的課題としてコミットメントを表明するよう呼びかける、以下の「新・ジュネーブ子どもの権利宣言」に賛同すること。

1.子どもたちが、尊厳およびウェルビーイングが守られる条件下で、貧困に陥ることなく、かつ到達可能な最高水準の健康を享受しながら生活できること。
2.子どもたちが、もはや武力紛争の影響を受けることのないコミュニティで育っていけること。
3.子どもたちが、自己に影響を与えるすべての決定において意見を聴かれかつ重視されることにより、自らが暮らしているコミュニティの形成に参加する基本的権利を承認されること。
4.子どもたちが、その生存、発達およびすべての権利の享受に資する、安全、清浄、健康的かつ持続可能な環境のもとで豊かに成長できること。
5.子どもたちが、急速に変化するデジタル環境において、自己の行為主体性を保全でき、かつ安全な利用のためのデジタルリテラシーを備えることのできる環境下で、安全でエンパワーメントにつながる経験から利益を得られること。
6.子どもたちが、家庭を含むすべての場面で、あらゆる形態の(身体的、心理的および性的な)暴力から保護されること。
7.現在および将来のすべての生物工学(バイオテクノロジー)の発展において、子どもたちの最善の利益が尊重されること。
8.子どもたちが、自己の権利が侵害された際、子どもにやさしい司法制度および相応の救済措置にアクセスできること。
9.子どもたちに対し、いかなる差別もなく、無償かつ包摂的な乳幼児期教育、初等教育、中等教育および職業教育を提供されること。
10.子どもたちが、すべての人が望み得る、子ども時代の肯定的なかけがえのなさを経験できること。

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平野裕二
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