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スコットランド:子どもの権利に関する幼い子ども向けの絵本

幼い子どもの参加:保育者向けのガイド(スコットランド)〉〈幼い子どもたちと相談するためのツールキット(スコットランド)〉とスコットランド(英国)で作成された資料を紹介してきましたが、もうひとつ、スコットランドで作成された、子どもの権利に関する幼い子ども向けの絵本を紹介しておきます。

★ Youngest children explore their rights with Commissioner's new book.
https://www.cypcs.org.uk/news-and-stories/youngest-children-explore-their-rights-with-commissioners-new-book/

『私たちの権利について調べてみよう』Let's Explore Our Rights、絵:Corrina Campbell)と題するこの絵本は、スコットランド子ども・若者コミッショナー事務所が昨年(2023年)5月12日に発表したものです。5月17日に退任した前任コミッショナー、ブルース・アダムソンさんの置き土産ということになるでしょうか。おおむね5歳までの子どもを対象とするもので、作成にあたってはインバネス市のロカーディル(Lochardil)初等学校・早期学習保育部の子どもたちも協力したそうです。スコットランドのすべての就学前施設に(ゲール語版とともに)送付されるということで、すでに送付されているのではないかと思われます。

 絵本はまず、次のような言葉から始まります(pp.4-5)。「ものごとを変える力」(power to change things)についても触れられているのは重要だと思います。

子どもはみんな、権利をもっています。

権利は、わたしたちが幸せに、愛されて、わかってもらいながら大きくなっていくことを助けてくれます。
わたしたちは、大きくなり、豊かに育っていけるべきであり、いつでも安全だと感じられていられるべきです。
わたしたちは、自分がどんな気持ちでいるのか、ほかの人たちに言っていいんだということを知っているべきですし、ほかの人たちはわたしたちの話をきくべきです。

権利は、ものごとを変える力をわたしたちにくれます。

どこに行っても、わたしたちには権利があります。
だれも、わたしたちの権利を取り上げることはできません。

 その後、次のような権利が順番に取り上げられます。

● 安全な家で暮らす権利(暖かい家/安全を守ってくれる人/食べもの/着るもの)
● 学ぶ権利
● 健康でいる権利
● 意見を聴かれる権利
● 遊ぶ権利

 そのうえで、「子どもの権利はすごく特別(extra special)として国連・子どもの権利条約に言及するとともに(p.11)、スコットランド子ども・若者コミッショナーについて紹介しています(p.12)。

 最後に大人向けのメッセージも掲載されていますので(p.13)、訳出しておきます。

 この本は、幼い子どもたちと人権について考える最初の会話のきっかけになることをめざしたものです。子どもたちには大人と同じように人権がありますが、子どもたちには追加的な権利もあります。
 子どもの権利は、世界のほぼすべての国が賛成している国連・子どもの権利条約(UNCRC)に掲げられています。
 すべての権利は同じように大切であり、どの権利もつながっています。ある権利が尊重されなければ、他のさまざまな子どもの権利にも影響することが少なくありません。
 子どもの権利は、すべての子どもたちのためのものです。
 自分の権利が尊重されなかったときに子どもたちが法的に異議を申し立てられるようにするため、スコットランドの法律にUNCRCが含まれていることは大切です。けれども、そうするためには、自分の権利がどんなものなのかを子どもたちが知っている必要があります。
 エンパワーメントにつながるこのような会話は、もっとも幼いころから始めることができます。

 なお、Facebookではお知らせしましたが、2021年3月にいったん可決されながらも英国政府の異議申立てを最高裁が認めたことにより修正を余儀なくされていた国連・子どもの権利条約(編入)(スコットランド)法案は、昨年(2023年)12月7日、修正版の法案がスコットランド議会により可決されました。英国政府によるさらなる異議申立てがなければ、英国国王の裁可を経て成立する見込みです。

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平野裕二
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