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スリランカ最高裁、子どもに対する体罰を違憲と判断

 今日(4月30日)は「子どもの体罰を終わらせる国際デー」International Day to #EndCorporalPunishment of Children)です。昨日の投稿でパキスタンの動きについて取り上げましたが、今日はスリランカの動向を紹介します。

 スリランカ最高裁判所は、2021年2月12日、学校における体罰は憲法違反であるとする画期的判決(事件番号SC/FR/97/2017)を言い渡しました。

★ End Violence Against Children / End Corporal Punishment: Sri Lanka Supreme Court judgment condemns corporal punishment in schools
https://endcorporalpunishment.org/sri-lanka-supreme-court-judgment-condemns-corporal-punishment-in-schools/

 今回の判決は、2017年3月に子ども(当時15歳)とその親によって申し立てられた憲法請願を受けて言い渡されたものです。申立人の子どもは教員から平手打ちを受けたために永続的な聴覚障害を有するようになり、教員の対応はスリランカ憲法第11条(拷問および残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰)に違反するものだと訴えていました。

 スリランカ最高裁は、教員の体罰は憲法第11条違反であったと認め、当該教員および国に対し、申立人に賠償金を支払うよう命じました。最高裁は、国連・子どもの権利条約の諸規定や国連・子どもの権利委員会の一般的意見8号(体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利、2006年)も参照しながら、次のように指摘しています(日本語訳および太字による強調は平野による)。

「……体罰そのものが本件において拷問に相当するわけではないが、子どもの固有の尊厳を無視して身体的または精神的処罰を加える慣行は、非人道的なまたは品位を傷つける処罰に相当する
「子どもは独立の存在であり、独自の自己意識および尊厳に対する権利を有する。暴行を受けた子どもが、同じ状況下にある成人であれば救済措置に対する権利を認められるのに、未成年者であるという理由でそのような救済に対する権利を認められない場合があると判断することは、受け入れられない。いずれにせよ、未成年者には、脆弱で感じやすい状況にある社会の一員として、より高い水準の保護を受ける権利がある

 ただし、今回の判決をもって学校における体罰が違法化されたと判断することはできず、法改正が速やかに進められる見込みも薄いようです。

 一方、国連・自由権規約委員会に対しても、スリランカの学校における体罰に関して個人通報が行なわれています。

★ EconomyNext: UNHRC registers complaint made by Sri Lankan child
https://economynext.com/unhrc-registers-complaint-made-by-sri-lankan-child-76317/

 申立人は、インターナショナルスクールに通っていた11歳(当時)の女子生徒とその母親です。英語のリーディングブックを忘れたという理由でひざまずかされ、耳を引っ張られたほか、学校側の不適切な対応によっていやがらせを受けて数日間学校に行けなかったなどと訴えています。最高裁にも憲法請願を行なったものの受理されなかったため、2019年8月に自由権規約委員会への通報に踏み切りました。

 2020年7月には申立人に通報が登録された旨の連絡があり、現在、委員会としてスリランカ政府のコメントを求めているところのようです。規約違反と認定される可能性が高いと思われますが、スリランカ政府には、前述の最高裁判決なども踏まえて速やかに法改正等の対策をとることが求められます。

 なお、前掲記事では明らかにされていませんが、個人通報を行なった母親は、娘さんの事件をきっかけに体罰禁止運動に取り組み始め、Stop Child Cruelty Trust という団体も立ち上げたトゥシュ・ウィクラマナヤカ(Tush Wickramanayaka)医師です。彼女のインタビューも参照。

★ End Violence Against Children: In Sri Lanka, Dr Tush Paves the Way for Safer Schools
https://www.end-violence.org/articles/sri-lanka-dr-tush-paves-way-safer-schools

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平野裕二
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