女性に対する暴力撤廃の国際デー:国連人権専門家/機関の声明
11月25日は「女性に対する暴力撤廃の国際デー」(International Day for the Elimination of Violence against Women)でした。アントニオ・グテーレス国連事務総長もメッセージを発表しています。また、この日から12月10日(世界人権デー)までの16日間、「世界をオレンジ色に:団結しよう! 女性と少女に対する暴力撤廃へ向けた行動のために」というテーマで国際キャンペーンが実施されています。
女性に対する暴力撤廃の国際デーにあたり、女性と少女に対する暴力に関する特別報告者をはじめとする多数の国連人権専門家および2つの人権条約機関(女性差別撤廃委員会・子どもの権利委員会)が、「女性と少女に対する暴力を終わらせることこそ、世界的危機への対処と繁栄の達成の鍵」と題する共同声明を発表しました(11月24日付)。
★ Ending violence against women and girls key to tackling global crises and achieving prosperity
https://www.ohchr.org/en/press-releases/2022/11/ending-violence-against-women-and-girls-key-tackling-global-crises-and
以下、その全訳です(太字は平野)。
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私たちは、ジェンダー平等を後退させようとするかなり組織化された国際的動きが激しくなっていること、また女性と少女が尊厳のある、安全な、暴力のない生活を送るのを妨げる脅威が増加していることを、依然として深く懸念しています。世界中の女性と少女は、多様な表れ方をするジェンダーに基づく暴力を経験し続けています。
女性と少女に対する暴力の表れ方のなかで、もっとも広がっており、かつ憂慮されるもののひとつは、彼女たちの身体的自律性およびセクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる権利へのアクセスに対する苛烈な攻撃の増加です。社会的、文化的、宗教的または政治的主張のもとに行なわれるこのような攻撃は、彼女たちの生命、健康およびウェルビーイングを危機にさらしています。
女性と少女に対する暴力はデジタル空間で増幅され続けており、そこでとくに標的とされているのは、表現・平和的集会・結社の自由を行使しながら政治的・公的活動をしている女性たちです。人権擁護者の女性、女性弁護士、女性政治家・ジャーナリスト、そしてマイノリティ集団に属する女性と少女が、しばしば標的にされています。女性と少女に対するオンラインの暴力を防止するための規範的枠組みを強化して保護の向上を図るための重要な取り組みを行なってきた国および非国家主体もいくつか存在しますが、依然として多くの課題が残されたままです。テクノロジーの提供・仲介に従事する事業者は、人権機構との協力を強化するとともに、国、テック企業その他の関係者と連携しながら協調的戦略を発展させていかなければなりません。
これらの現実は、今日の世界が直面している多様かつ大規模な複合的危機に鑑みれば、懸念すべきものです。近年、あらゆる国と社会が、COVID-19パンデミック、食料危機、そして気候危機の破壊的影響に直面してきました――いずれもジェンダー化された危機であり、あらゆる年齢層の女性の生活にさまざまな形でかつ不均衡に影響を及ぼしていることが明らかになっています。極度の貧困および社会経済的不平等は、男性に比べ、女性にとって劇的に増加することが見込まれています。
あらゆる年齢層の女性と少女に対する暴力は平時と紛争時のいずれにおいてもはびこっていますが、性暴力は紛争状況において常態的かつ組織的に武器として用いられ続けています。紛争下の性暴力の被害者およびサバイバーが司法、援助、保護および賠償にまったくアクセスできない状況も、しばしば続いています。紛争で引き裂かれたいくつかの国でジェンダーに基づく迫害が激化していることは、とりわけ憂慮されます。
私たちは、さまざまな法域の違いを超えて、女性と少女がぞっとするような扱いを受け続けていることを依然として懸念します。このような扱いは、女性と少女がすべての公的生活領域に全面的に参加することを妨げ、女性・少女であることを理由にその人権を剥奪するものです。
とくに女性と少女を対象とする暴力が多発しているにもかかわらず、フェミサイド、すなわちジェンダーに関連する女性・少女の殺害を独立の犯罪として位置づけた国はほとんどなく、十分かつ関連性のあるデータの収集も深刻に不足しています。性別・年齢・ジェンダーによって細分化された、包括的で信頼できるデータを収集することは、各国がこの現実に意味のある形で対処できるようにする、必要不可欠かつ最低限の第一歩です。
各国はまた、とくに監護事件の扱いにおける、女性に対する暴力と子どもに対する暴力との関連性もそろそろ認識するべきです。すでにいくつかの国際的・地域的人権機構が、子どもの監護事件に関する判断において女性に対する親密なパートナー間暴力が無視されるパターンが世界のさまざまな法域の違いを超えて存在することについて、懸念を表明しています。したがって私たちは、各国に対し、女性と子どもに対するジェンダーに基づく暴力(有害慣行を含む)を防止するために必要なあらゆる措置をとらなければならないという、国際法に基づくデューディリジェンスの義務を想起するよう求めます。
世界中で女性と少女が途方もない集団的課題に直面しているにもかかわらず、女性と少女による人権の享受および女性と少女の保護を確保するはずの確立された規範的枠組みは、ジェンダー平等の達成における成果を覆そうとするさまざまな国家主体・非国家主体によって組織的に阻害されています。各国は、きわめて重要な法的枠組みを貶めようとする虚偽言説に対抗することによって自国の責任を果たすことに対して、またこれらの法的枠組みの関連性および実現性を確保することに対して、積極的コミットメントを示さなければなりません。
いまも続いている現代の複雑な危機に、そして女性と少女の人生に影響を及ぼしているその他の問題に対処するために、すべての関係者は、自分たちが行なっているすべての事業および取り組みに対し、確固たる、そして社会変革的なジェンダーの視点および人権を基盤とするアプローチを適用しなければなりません。
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後半で言及されている「とくに監護事件の扱いにおける、女性に対する暴力と子どもに対する暴力との関連性」については、先日の投稿〈国連人権専門家、女性に対する暴力とドメスティックバイオレンスに関するEU指令案について改善意見を送付〉も参照。
なお、11月29日は「人権擁護者の女性のための国際デー」(International Women Human Rights Defenders Day)でした。UN Womenのシマ・サミ・バホス事務局長やフォルカー・ターク国連人権高等弁務官が声明を発表していますので(いずれも英語)、そちらも参照してください。
【追記】(11月30日)
書き忘れていましたが、11月18日は第1回「子どもの性的搾取・虐待・暴力の防止およびこれらの行為からの癒しのための世界デー」(World Day for the Prevention of and Healing from Child Sexual Exploitation, Abuse and Violence)でした。国連総会(第77会期)が11月7日に無投票で採択した決議に基づくものです。これを受けて、子どもの売買および性的搾取に関する特別報告者、女性と少女に対する暴力に関する特別報告者、とくに女性および子どもの人身取引に関する特別報告者、現代的形態の奴隷制に関する特別報告者などが11月18日付で共同声明を発表しています。
-Global emergency of child exploitation and abuse needs global action: UN experts
https://www.ohchr.org/en/statements/2022/11/global-emergency-child-exploitation-and-abuse-needs-global-action-un-experts
「(被害者/サバイバーである子どもに生じる)トラウマは、拷問および他の残虐な非人道的なまたは品位を傷つける取扱いに相当する場合さえあり得ます」と指摘されている点、「子どもをケアし、保護し、その生活を支援するはずの個人、施設および機関が時としてこのような暴力を固定化させていること」に特段の懸念が表明されている点などが注目されます。
11月7日の国連総会決議についてはFacebookで紹介済みですので、以下に投稿内容を採録しておきます。