国連・子どもの権利委員会の第97会期が終了/個人通報議定書発効10周年記念イベントも開催
あれこれ忙しかったので取り上げるのが遅くなりましたが、8月26日からジュネーブで開催されていた国連・子どもの権利委員会の第97会期は9月13日に終了しました。
- Committee on the Rights of the Child Closes Ninety-Seventh Session after Adopting Concluding Observations on Argentina, Armenia, Bahrain, Israel, Mexico and Turkmenistan
(子どもの権利委員会、アルゼンチン、アルメニア、バーレーン、イスラエル、メキシコおよびトルクメニスタンに関する総括所見を採択した後、第97会期を終了)
https://www.ohchr.org/en/news/2024/09/committee-rights-child-closes-ninety-seventh-session-after-adopting-concluding
- Le Comité des droits de l’enfant clôt les travaux de sa 97ème session en déplorant la persistance de graves violations des droits de l'enfant, en particulier dans le contexte des conflits armés
(子どもの権利委員会、第97会期の活動を終了するにあたり、とくに武力紛争を背景として行なわれる重大な子どもの権利が根強く続いていることを憂慮)
https://www.ohchr.org/fr/news/2024/09/committee-rights-child-closes-ninety-seventh-session-after-adopting-concluding
今会期中に報告書審査が行なわれたバーレーン(条約の2つの選択議定書のみ)、トルクメニスタン、メキシコ、アルゼンチン、イスラエル、アルメニアに関する総括所見(先行未編集版)は、先ほど第97会期のページに掲載されました(イスラエルに対するパレスチナ関連の勧告については、別途取り上げるつもりです)。審査後に出されたプレスリリースの見出しの日本語訳を、記事の後半に掲載しておきます。
委員会の次回の会期(第98会期)は2025年1月13日~31日にかけて開催され、エクアドル、エリトリア、ガンビア、ホンジュラス、ペルー、スロバキア、スペインの報告書が審査される予定です。
報告書審査以外の委員会の主な活動
第97会期の開会会合(8月26日)では、子どもの権利および福祉に関するアフリカ憲章(1990年)に基づいて設置されている「子どもの権利および福祉に関するアフリカ専門家委員会」委員長の出席を得て、同委員会と国連・子どもの権利委員会との間で了解覚書(MoU)が交わされました。両委員会は6月16日に初の共同声明を発表しており、今回の了解覚書により、協力関係がいっそう進展することが期待されます。共同声明についてはFacebookで簡単に紹介しましたので、以下に採録しておきます。
また、委員会は8月30日の「強制失踪の被害者のための国際デー」にあたって声明(PDF)を発表し、とくに条約7条・8条にしたがって強制失踪の対象とされた子どものアイデンティティおよび家族的つながりの回復を確保するため、これらの子どもの権利擁護のための行動をとるよう各国に求めました。
委員会は、子どもの強制失踪に終止符を打ち、その影響に包括的に対処するための効果的政策の策定と対応を求めており、行方不明になっている子どもの家族の遺伝子データベースの構築および必要な場合のDNA検査を具体的な施策のひとつとして例示しています。また、失踪した子どもの捜索および居場所の特定を容易にするため、関連文書へのアクセスを妨げる官僚的障害の解消も求めています。違法な国際養子縁組に関する国連人権諸機関の共同声明(2022年9月)についても言及されていますので、あわせてご参照ください。。
OPIC(通報手続に関する選択議定書)関連
9月12日には、委員会、OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)、スロベニアおよびドイツの在ジュネーブ国連代表部、Child Rights Connect の共催により、パレ・デ・ナシオン(国連欧州本部)で通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書(OPIC)の発効10周年記念イベントも開催されました(アーカイブ動画はこちら)。
- Committee on the Rights of the Child Commemorates Tenth Anniversary of the Third Optional Protocol to the Convention on a Communications Procedure
(子どもの権利委員会、通報手続に関する条約の第3選択議定書発効10周年を記念)
https://www.ohchr.org/en/news/2024/09/committee-rights-child-commemorates-tenth-anniversary-third-optional-protocol
- Le Comité des droits de l’enfant célèbre le dixième anniversaire de l’entrée en vigueur du troisième Protocole facultatif à la Convention relative aux droits de l’enfant, qui établit une procédure de plaintes
(子どもの権利委員会、苦情申立て手続を定めた子どもの権利条約の第3選択議定書発効10周年を記念)
https://www.ohchr.org/fr/news/2024/09/committee-rights-child-commemorates-tenth-anniversary-third-optional-protocol
委員会に申立てを行なったことによりスペインで教育を受けることができるようになった女の子(申立て当時12歳)も出席し、委員会の支援に感謝するとともに、他の子どもたちにも通報手続を活用して自分の権利のために闘うことを呼びかけたとのことです(本件申立ての概要についてはこちらの記事の後半で紹介しています)。
通報手続に関する選択議定書の締約国は52か国に留まっており、日本も含めて速やかな批准・加入を進める必要があります(note〈子どもの権利条約・女性差別撤廃条約の個人通報制度に関するツールキット(国連人権高等弁務官事務所〉も参照)。個人通報制度に基づく委員会の決定(一部)については筆者のサイトをご参照ください。
今会期における個人通報の処理状況ですが、委員会は8件の通報に関して決定を採択し、そのうちフィンランドを相手どった申立て1件で条約違反を認定しました。先住民族サーミの伝統的土地における鉱物探査許可の付与をめぐる事案ですが、決定が公開されたらまた概要を紹介します。また、フランスを相手どった通報2件が不受理とされたほか、アルゼンチン、デンマーク、フィンランド、スペインを相手どった計5軒が審理打ち切りとなりました。
報告書審査に関するプレスリリース
最後に、各国の報告書審査に関するプレスリリースの見出しの日本語訳を掲載しておきます(Facebookで紹介済みですし、以下は有料とさせていただきます)。
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