国連・子どもの権利委員会、一般的意見26号のテーマを「子どもの権利と環境」に決定
今日(6月5日)は「世界環境デー」です。オンラインで第87会期(5月17日~6月4日)を開催していた国連・子どもの権利委員会は、閉会にあたり、次の一般的意見(26号)のテーマを「子どもの権利と環境(とくに気候変動に焦点を当てて)」とすることを決定しました(これまでの一般的意見の日本語訳は私のサイトを参照)。
★ OHCHR: The UN Committee on the Rights of the Child commits to a new General Comment on Children’s Rights and the Environment with a Special Focus on Climate Change
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=27139&LangID=E
今会期から委員長に就任した大谷美紀子さん(弁護士)のメッセージ動画(英語)も公開されています。
委員会は、2016年に「子どもの権利と環境」についての一般的討議を開催し、勧告をとりまとめています。この勧告も踏まえ、各国政府、国際機関、NGO、そしてもちろん子ども・若者の意見を聴きながら作業が進められていく見込みです。
健康的な環境に対する子どもの権利をめぐっては国際的にさまざまな動きが起きており、たとえばユニセフ(国連児童基金)・UNEP(国連環境計画)・OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)の各地域事務所は、昨年9月、健康的な環境に対する子どもの権利をASEAN(東南アジア諸国連合)地域で促進・保護していくための政策ガイダンス草案を発表しています。その概要を以前の投稿で紹介した際、「これらの〔草案の一般原則に掲げられている〕諸権利は、すでに国連・子どもの権利条約などの国際文書で保障されている(=国に保障義務がある)と考えることが可能でしょう」とコメントしておきましたが、一般的意見26号の作成にあたってはこうした文書もおおいに参考にされると思われます(なお、この政策ガイダンスは今年中に発表される見込みのようです)。
6月4日には、やはり世界環境デーに向けて、51人以上の国連人権専門家が「健康的環境に対する権利の承認は、環境危機への対応および人権保護の鍵である」と題する共同声明を発表しました。環境問題への対応を国際人権法上の権利・義務という視点から捉える流れは、ますます加速していきそうです。
★ OHCHR: Time for UN to formally recognise right to clean, healthy environment - experts (World Environment Day, 5 June 2021)
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=27138&LangID=E
なお、国連・子どもの権利委員会は今回初のオンライン審査に踏み切り、ルクセンブルクとチュニジアの報告書を審査しました。それぞれプレスリリースが出ています。
1)In dialogue with Luxembourg, Experts of the Committee on the Rights of the Child ask about protection from violence, both offline and online
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=27109&LangID=E
2)In Dialogue with Tunisia, Committee on the Rights of the Child welcomes positive steps and asks about corporal punishment
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=27127&LangID=E
どちらの国の審査でも、子どもに対する暴力の問題が主要な論点のひとつになっています。チュニジアが、欧州以外の国では初めて欧州評議会のランサローテ条約(性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する条約、2007年)を批准したというのも興味深いニュースです。