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国連・子どもの権利委員会、シリアの難民キャンプに収容されている子どもの帰還をめぐってフィンランドの条約違反を認定

 9月24日付の記事でお知らせしたとおり、国連・子どもの権利委員会は、個人通報制度に基づき、シリア北東部の難民キャンプに収容されているフィンランド国籍の子どもについての事案でフィンランドの条約違反を認定しました。プレスリリース(10月12日付)が出ています。

1)UN News - Finland: Rights of Finnish children detained in Syria camps violated
https://news.un.org/en/story/2022/10/1129462

2)OHCHR: Finland violated rights of Finnish children detained in northern Syria by failing to repatriate them, UN committee finds
https://www.ohchr.org/en/press-releases/2022/10/finland-violated-rights-finnish-children-detained-northern-syria-failing

 委員会の見解(CRC/C/91/D/100/2019、2022年9月12日採択/10月20日刊行)はこちらから参照できます。

 本件の申立人は、シリア北東部のアルホール(Al-Hol)難民キャンプに収容されている6人の子どもたちの親族です。同キャンプは現在、クルド人中心の民兵組織・シリア民主軍(SDF)の支配下にあります。

 子どもたちはいずれもシリア生まれですが、親がフィンランド人であることからフィンランド国籍を有しています。子どもたちの親はダーイシュ(ISIL=イラク・レバントのイスラム国)の協力者であったとされます。

 2019年9月に通報が行なわれて以降、6人の子どもたちのうち3人は母親とともに自力でキャンプを脱出し、フィンランドに帰国しました。残る3人の子ども(5~6歳)は依然としてキャンプに収容されたままです。

 フランスの条約違反が認定された類似の事案と同様に、委員会は、キャンプの生活条件が非常に劣悪であることなどを踏まえ、次のように判断しました。

● フィンランドには、シリアのキャンプに収容されている子どもたちを帰還させるための行動をとることにより、生命に対する切迫したリスクからこれらの子どもを保護する責任および権限がある。
● 生命が脅かされるような条件下における子どもの長期の拘禁は、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰にも相当する。

 このような判断を踏まえ、委員会はフィンランドが条約6条1項(生命に対する権利)および37条(a)(非人道的なまたは品位を傷つける取扱いの禁止)に違反したと認定し、申立人と被害を受けた子どもに対して実効的な補償を行なうとともに、次の措置をとるよう勧告しています(パラ12‐13;なお、フランスの事案とは異なり、今回は条約3条〔子どもの最善の利益〕違反は認定されていません)。

(a)誠実に行動し、被害者である子どもたちを帰還させるために緊急の積極的措置をとること。
(b)帰還した子どもまたは別の場所に再定住した子ども1人ひとりについて、その再統合・再定住を支援すること。
(c)当面の対応として、シリア北東部に留まっている子どもたちの生命・生存・発達に対するリスクを緩和するための追加的措置をとること。

 委員会のアン・スケルトン(Ann Skelton)委員はプレスリリースで次のようにコメントしています。

「キャンプの子どもたちの状況については、水・食料・保健ケアをはじめとする基礎的必要条件を欠いた非人道的なものであり、切迫した死のリスクに直面していることが広く報告されてきました」
「私たちはフィンランドに、これらの子どもたちの生命を保護し、子どもたちを家族のもとに返すために即時的かつ決定的な行動をとるよう求めます」

 なお、今回の見解にはルイス・エルネスト・ペデルネラ-レイナ(Luis Ernesto Pedernera-Reyna)委員とブノワ・ヴァン・ケルスビルク(Benoit Van Keirsbilck)委員の補足意見が付されています。委員会は、6条1項と37条(a)に加え、6条2項(子どもの生存および発達を可能なかぎり最大限に確保する義務)および37条(b)(不法または恣意的な自由の剥奪の禁止)の違反も認定するべきだったというのが両委員の見解です。また、通報では言及されていながらも身元が詳らかではないため審査の対象とすることができなかった33人の子どもについても、特定のために徹底的調査を行なって緊急の援助を提供すべきだとしています。

 国連・子どもの権利委員会が個人通報制度に基づいて行なったこれまでの決定については、私のサイトの〈国連・子どもの権利委員会 個人通報 決定一覧〉参照。

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平野裕二
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