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スポーツにおける子ども・若者の虐待~日本と韓国
★ヒューマン・ライツ・ウォッチ-日本:メダル獲得努力の裏の子どもの虐待
ヒューマン・ライツ・ウォッチによる報告書『「数えきれないほど叩かれて」:日本のスポーツにおける子どもの虐待』(7月20日発表)は、日本のメディアでは(いまのところ)あまり大きく報じられていない印象ですが、国外ではBBCやCNNも取り上げるなど注目されています。
-BBC:日本のスポーツ選手、暴力などの虐待被害 人権団体が報告
-CNN:日本のスポーツ界で横行する指導者の暴力や虐待、子どもの被害実態を人権団体が告発
ちょうどいま南部さおり著『反体罰宣言――日本体育大学が超本気で取り組んだ命の授業』(春陽堂書店・2019年)を読んでいたのですが、部活動などの場で指導者の暴力により子どもが殺された複数の事例が詳しく紹介されており、その凄惨な状況に胸が締めつけられる思いです。
これほど多くの事件が起きていながら根本的な対応がとられていないのは重大な問題であり、ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書が提言するように、▽スポーツ基本法や児童虐待防止法の改正または新規立法(ユニセフ「子どもの権利とスポーツの原則」も参照)、▽スポーツにおける子どもへの暴力・暴言等に対応する独立した行政機関「日本セーフスポーツ・センター」(仮称)の設置などの抜本的措置をとることが求められます。子どもに対する暴力撲滅グローバル・パートナーシップ(GPeVAC)の取り組みの一環として策定が進められている国内行動計画でも、優先的課題のひとつとしてスポーツ(学校における体育・部活動等を含む)における子どもへの暴力・暴言等を取り上げることが必要です。
なお韓国では、2019年1月、国家人権委員会がスポーツ界における性暴力および暴力に関する声明を発表し、特別調査を行なう方針を明らかにしていました。
★ヒューライツ大阪-韓国国家人権委員会によるスポーツ界における性暴力及び暴力に関する声明
その後の進捗については把握していませんが、韓国では、かねてから指導者による暴行等を訴えていた女子トライアスロンの元国家代表、チェ・スクヒョン選手が今年6月末に自死したことで、あらためてスポーツ界における人権侵害を問題視する声が高まっています。文在寅大統領も「スポーツ界は後進的な行動から抜け出さなければいけない」と批判し、関係省庁に徹底調査と再発防止策を指示したとされます(朝日新聞〈性的暴行、体罰…韓国スポーツ界の闇、日本が学べること〉7月23日配信)。
国家人権委員会も、遺族からの申立てを受けて調査に乗り出す方針を明らかにしました(The Korea Herald〈Nat'l human rights body investigating abuse claims by late triathlete〉7月3日配信)。
一定の取り組みが進められていたにもかかわらず新たな犠牲が出てしまったのは、残念としか言いようがありません。日韓両国の関係者がおたがいに学びながら、抜本的な対策をとっていくことが必要です。
ちなみに、松本市子どもの権利擁護委員(長野県)は小中学生が学校外で行なうスポーツ・文化活動についてのアンケートを実施し、▽指導者の言動による権利侵害を発見・解決していく仕組みづくり、▽子どもの権利に配慮した活動の推進などの必要性を提起しました(2019年6月;Facebookでの投稿も参照)。このような独立した子どもの権利相談・救済機関の設置を広げていくこともあわせて重要です。
スポーツにおける子どもの性的虐待をなくすために欧州評議会が展開している "Start to talk"(声をあげよう)キャンペーンなども参照。
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