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メキシコ議会(上院)が体罰全面禁止法案を全会一致で承認

 メキシコ連邦議会(上院)は、9月23日、子どもに対する体罰または屈辱的な取り扱い・罰を禁止する法案を全会一致(賛成92票)で承認しました。この後、法案は下院(代議院)に送付されます。

1)Mexico News Daily: Senate approves new law prohibiting corporal punishment against children
https://mexiconewsdaily.com/news/senate-approves-new-law-prohibiting-corporal-punishment-against-children/

2)Tiempo Digital: Senate bans corporal and humiliating punishment of children and adolescents
https://tiempodigital.mx/2020/09/24/ya-se-prohibe-castigo-corporales-y-humillantes-a-ninos-y-adolescentes-en-mexico/

 今回の法案は、「女児、男児および青少年の権利に関する一般法」(Ley General de los Derechos de Niñas, Niños y Adolescentes、2014年)を改正して体罰等の禁止規定を導入するものです。すでに昨年(2019年)11月26日に上院が法案を承認したと報じられていましたが(Facebookへの投稿参照)、1)の記事によればこれは「予備的承認」だったとのことです。

 1)の記事で紹介されている体罰禁止規定の内容は次のとおりです。

 母、父または家族のいかなる者も、子どもまたは青少年の矯正またはしつけの形態として、体罰またはいずれかの形態の屈辱的な取扱いおよび罰を用いることを禁じられる。

「体罰」については次のように定義されています。

 女児、男児および青少年に対して行なわれる、有形力が用いられるすべての行為であって、手もしくはいずれかの物で殴打すること、押すこと、つねること、噛むこと、髪もしくは耳を引っ張ること、不快な姿勢の維持を強制すること、火傷を負わせること、熱した食品その他の製品を摂取させること、またはたとえ軽いものであっても苦痛もしくは不快感を引き起こすことを目的とする他のすべての行為を含む。


 また、屈辱的な取扱いには、攻撃的(offensive)なもの、品位を傷つける(degrading)もの、貶める(devaluing)もの、スティグマ(汚名・烙印)を与える(stugmatizing)もの、嘲笑する(ridiculing)もの、侮蔑的(disparaging)なものが含まれるとのことです。

 さらに、法案では、すべての家族構成員(とくに女児、男児および青少年)は、その健康的発達に寄与するため、他の構成員から自己の身体的、精神的および情緒的不可侵性(integrity)を尊重される権利を有するとも定められています。なお、他の多くの体罰禁止国と同様に、体罰や屈辱的な罰そのものに対する刑事罰は定められていません。

 2)の記事によれば、これらの規定は、教育施設、スポーツ施設、宗教施設、保健施設、社会援助施設、刑事施設その他のあらゆる種類の施設の管理者にも適用されるとのことです。

 法案が下院で承認されて成立すれば、メキシコはラテンアメリカ地域で11番目*、世界で61番目の体罰全面禁止国となります(ただし韓国が先行する可能性もあります)。

* ラテンアメリカ地域における他の体罰全面禁止国は、ウルグアイ、ベネズエラ、コスタリカ、ホンジュラス、ブラジル、ボリビア、アルゼンチン、ニカラグア、ペルー、パラグアイです。筆者のサイトの〈各国の体罰等全面禁止法(年代順)〉参照。

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平野裕二
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