国連・子どもの権利委員会、一般的意見26号(子どもの権利と環境)に関するコンセプトノートを発表
国連・子どもの権利委員会が次の一般的意見(26号)のテーマを「子どもの権利と環境(とくに気候変動に焦点を当てて)」に決定したことについては、6月の投稿で報告済みです。
委員会は、第88会期の最終日である本日(9月24日)、一般的意見26号に関するコンセプトノートを発表しました(委員会のページでは9月23日となっています)。
そこでは、気候変動の影響によるものを含む環境危害が世界の子どもたちに甚大な影響を与えており、今後さらに大きな影響を及ぼしていくという認識のもと、次のような問題を取り上げる方針が打ち出されています(太字は平野による)。
・一般的意見ではまず子どもの権利と環境に関する全般的議論を行ない、さらに進めて気候変動危機に焦点を当てることが考えられる。前者においては、環境に関連する3つの論点――汚染、生物多様性の喪失および気候変動(概観)――をとくに取り上げてもよい。また、3つのすべての側面に焦点を当てながら、4つの一般原則(具体的には差別の禁止、最善の利益、生命・生存・発達に対する権利および子どもの意見)に関わる議論に焦点を当てることもできよう。その後、具体的なテーマ別論点に関する議論のほとんどを気候変動に集約させてもよい。
・一般的意見の適用範囲では、気候変動にとくに焦点を当てながら、環境との関連で子どもたちに対して負っている3つの態様の義務――具体的には実体的義務、手続的義務およびより高度な義務(heightened obligations)――のすべてを網羅することも必要とされよう。さらに、一般的意見においては、気候変動およびそれが子どもの権利に及ぼす影響をめぐる科学が参考にされることとなる。一般的意見の起草にあたって子どもの権利条約が主たる根拠文書であることは変わらないものの、選択議定書の関連個所と、限られた程度で他の関連の国際文書を検討することも必要となろう。
さらに、一般的意見の目的のひとつには、「子どもたちが、情報に対する権利、参加の権利および環境危害から身を守るために司法にアクセスする権利をどのように行使できるべきかを明らかにすること」も掲げられています。
ユニセフ(国連児童基金)は最近、『気候危機は子どもの権利の危機――子どもの気候危機リスク指数の紹介』(The Climate Crisis Is a Child Rights Crisis: Introducing the Children's Climate Risk Index)と題する報告書を発表し、▽2億4,000万人の子どもが沿岸洪水リスクにさらされていること、▽3億3,000万人の子どもが河川の洪水リスクにさらされていることなどの深刻な状況を明らかにしました(日本ユニセフ協会〈子どもの気候危機報告書 約10億人が極めて高いリスク 子どもの気候危機リスクをランキング〉8月20日付)。
冒頭で紹介した記事の後半で紹介したように、健康的な環境に対する人権/子どもの権利をめぐる国際的な動きも活発化しています。
日本に対しても、2019年2月、国連・子どもの権利委員会から次のような勧告が出されました。
気候変動が子どもの権利に及ぼす影響
37.委員会は、持続可能な開発目標の目標13およびそのターゲットに対する注意を喚起する。とくに、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
(a) 気候変動および災害リスク管理の問題を扱う政策またはプログラムの策定にあたり、子どもの特別な脆弱性およびニーズならびに子どもたちの意見が考慮されることを確保すること。
(b) 気候変動および自然災害に関する子どもの意識および備えを、学校カリキュラムおよび教員養成・研修プログラムにこの問題を編入することによって高めること。
(c) 国際的、地域的および国内的な政策、枠組みおよび協定をしかるべく策定する目的で、さまざまな災害の発生に対して子どもが直面するリスクの諸態様の特定につながる細分化されたデータを収集すること。
(d) 子どもの権利、とくに健康、食料および十分な生活水準に対する権利の享受を脅かすレベルの気候変動を回避するための国際的誓約にのっとって温室ガスの放出量を削減すること等により、気候〔変動〕緩和政策が条約と両立することを確保すること。
(e) 他国の石炭火力発電所に対する締約国の資金拠出を再検討するとともに、これらの発電所が持続可能なエネルギーを用いた発電所によって徐々にとって代わられることを確保すること。
(f) これらの勧告の実施にあたり、二国間協力、多国間協力、地域的協力および国際協力を求めること。
一般的意見26号は早ければ来年(2022年)中には採択されるのではないかと思われますが、草案公開などの動きがあればまたお知らせします。なお、「子どもの権利と環境」についての一般的討議(2016年)を踏まえてとりまとめられた委員会の勧告も参照。これまでの一般的意見の日本語訳はこちらのページを参照。