子どもに対する暴力の根絶に関するグローバル閣僚級会議(コロンビア)で示された「行動のための枠組み」
11月7日から8日にかけて、コロンビアのボゴタで第1回「子どもに対する暴力の根絶に関するグローバル閣僚級会議」(Global Ministerial Conference on Ending Violence Against Children)が開催されました。Facebookで簡単に取り上げたので、まずその投稿を採録しておきます(なお、公式サイトの Country Attendance マップによれば、日本からも閣僚級の参加 Ministerial level participation があったとのことです)。
会議にあたり、「子どもの保護制度の強化:行動のための枠組み」(Strengthening Child Protection Systems: A Framework for Action、英語版PDF)が発表されていますので、以下、その概要を紹介します(公式サイトの Resources に掲載されています)。
2ページから構成されている「行動のための枠組み」では、まず
「子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止することおよびこれらの暴力に対応することの緊急性は、これまでになく高まっている。毎年10億人以上の子どもが暴力を経験しており、その経済的影響は7兆ドルにのぼると推定されている」
という危機感を表明し、続けて次のように述べています(第2段落で触れられているWHO〔世界保健機関〕のINSPIRE戦略〔子どもに対する暴力撤廃のための7つの戦略〕については、ワールド・ビジョンのサイトに掲載されている日本語資料をご参照ください)。
以上のような認識を踏まえ、「行動のための枠組み」では、
「私たちは、あらゆる国のあらゆる子どもを対象とする子どもの保護制度を強化するため、各国、ドナー、市民社会組織その他の主要なステークホルダーに対し、次の行動をとるよう呼びかけます」
として、以下の6項目を提言しています(太字は原文ママ)。
■ 政策・立法
あらゆる状況におけるあらゆる形態の暴力、虐待、搾取、ネグレクトおよび有害慣行からあらゆる子どもを保護する法律および政策を採択・実施する。
政策および法的枠組みにおいて子どもの権利が遵守され、かつ暴力の防止、早期の介入および対応が取り上げられていることを確保するため、その見直しを行なう。
■ ガバナンスおよび調整
国・広域行政圏・地方のレベルで諸部門全体に渡り子どもの保護について調整する権限を持った、子どもの保護に関する専門の主務官庁を設置し、そこに投資する。
この主務官庁が、子どもの保護のための体制および機構をすべてのレベルで確立するために市民社会との調整を図り、かつ、両者が共同で人道危機および規模拡大への備えを整えること(国境を越えた対応を含む)を確保する。年齢、ジェンダーおよび障害に関わるモニタリングを含む、明確な説明責任確保および監督のための機構を設置する。
■ 切れ目のないサービス
子どもの保護に関わる防止、早期介入および対応のための切れ目のないサービスを提供する。
子どもの養育および不必要な分離の防止に関して親・養育者を支援する。暴力防止のため、家族、コミュニティおよび学校のエンパワーメントを図る。暴力を経験した子どもを、メンタルヘルスおよび心理社会的支援ならびに司法へのアクセスのような保護サービスへとつなげる。子どもの施設措置をなくし、家庭・地域を基盤とする良質な代替的養護サービスを提供する。
■ 子どもおよびコミュニティの参加
子どもに対する暴力の解消に向けた決定および行動に、子どもたちとコミュニティの関与を得る。
子どもの保護に関する法律、政策およびサービスの策定・実施に、意味のある形で子どもたちおよびコミュニティの関与を得る。コミュニティを基盤とする機構を公式な子どもの保護制度と結びつけるとともに、フィードバック、苦情申立ておよび対応のための子どもにやさしい機構を設置する。
■ 人的資源および財源
子どもの保護のための社会サービスに従事する、多様な、資格のある、十分な支援の対象となる労働力層を確立し、これに投資する。
諸部門を横断して子どもの保護サービスを管理・提供する労働力層に対して十分な公的資源を配分するとともに、防止、早期介入および介入戦略を通じて家族のレジリエンスを強化し、かつ有害慣行に異議を申し立てる社会規範およびジェンダー規範を促進する。
■ データおよびエビデンス
政府のデータシステムを強化して、子どもに対する暴力の防止およびこれへの対応のための計画、プログラム策定および政策を改善する。
子どもに対する暴力国際分類(International Classification of Violence against Children)などによる測定指標を捕捉する包括的なデータ収集に投資する。ケースマネジメントおよびエビデンスに基づくプログラム策定を改善するため、CPIMS+/PRIMEROのような情報管理システムおよび必要なときはProGresとの相互運用を通じてデータを強化する。国家的な公衆衛生サーベイランスシステムに暴力関連の指標を組みこむとともに、すべてのデータがジェンダー、年齢、障害、移住関連の地位その他の関連の分野によって細分化可能であることを確保する。
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とくに〈切れ目のないサービス〉の項で触れられている親・養育者への支援や家族・コミュニティ・学校のエンパワーメントについては、日本でも取り組みをさらに強めていく必要があると思います(親・養育者の支援については、〈ユニセフ・WHOなどが親・養育者支援のための国際的行動を呼びかけ〉〔2021年7月4日投稿〕も参照)。
なお、冒頭のFacebookポストで言及した(採録の際には省略)、「ネットいじめを含む学校での暴力といじめに反対する国際デー」にあわせて発表されたユネスコの報告書『安全に学び、豊かに成長する:教育における/教育を通じた暴力の根絶』(Safe to learn and thrive: ending violence in and through education)については、近いうちに別途取り上げます。