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資料:国連・子どもの権利条約に掲げられている子どもの権利(分野別)

 確認するのが遅れましたが、子どもの権利条約に関する日本ユニセフ協会のページで、条約に掲げられた主な権利についての説明が変更されていました。

※以前、ユニセフは「子どもの権利条約に定められている権利は大きく分けると4つ(生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利)」との説明をしておりましたが、現在はその説明を使用しておりません。

当サイトにおいても、過去の説明を残すことで、上記「4つの原則」〔平野注/条約の4つの一般原則〕とまぎらわしいこと、また、権利が4つしかないような誤解を招きかねないこと等の理由から、該当記述を削除いたしました。

 条約の概要や特徴を説明する際には、「3P(Provision=条件整備/Protection=保護/Participation=参加)」ないし「3P+D(Development=発達)」という表現が国際的に広く用いられてきましたし(ユニセフは Provision ではなく Survival という表現を採用していたようです)、条約による子ども観の転換(「保護の客体から権利行使の主体へ」)を強調するうえでわかりやすい説明ではあるのですが、「4つ」の権利という分類で十分かどうかについては確かにいろいろな見解があり、削除するというのもひとつの判断だと思います。

 かといって「4つの原則」だけ提示しても、条約で他にどのような具体的権利が保障されているかは理解できません(4つの原則はそれ自体子どもの権利でもありますが、とくに差別の禁止(2条)および子どもの最善の利益(3条)の原則は、他の具体的権利を考慮しないかぎり原則として機能しません)。各条でどのような権利が保障されているかを順番に(逐条で)説明する資料もいろいろと作成されていますが*、全体像を簡便に把握するのにはやや難があります。

* たとえば、日本ユニセフ協会によるもののほか、最近公開されたセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン「こどものケンリ」掲載の条文一覧など参照。

 そこで、この際、私が条約の全体像を説明する際に用いてきた図を以下でダウンロードできるようにしておきます。条約に掲げられたさまざまな権利を分野別に分類した、国連・子どもの権利委員会の定期報告書ガイドラインに基づくものです**。2ページ目に掲載している説明とあわせて、適宜ご活用ください(このままご活用いただく分にはわざわざ許諾を求めていただかなくて結構ですが、気が向いたら本投稿の末尾からサポートをお願いします)。これを参考にして、より子どもたちにわかりやすい資料を作っていただいてもよいと思います。

** 定期報告書ガイドラインでは条約の実体規定が次の9分野(クラスター)に分類されています(コピーしやすいようにテキストで一覧を載せておきます)。

1.実施に関する一般的措置
2.子どもの定義
3.一般原則
4.市民的権利および自由
5.子どもに対する暴力
6.家庭環境および代替的養護
7.障害、基礎保健および福祉
8.教育、余暇および文化的活動
9.特別な保護措置

 ファイルの2ページ目で注記しているとおり、「5.子どもに対する暴力」は改訂第3版(2014年)で新たに設けられたものです(ちなみに、ファイルには注記していませんが、7の「障害、基礎保健および福祉」は当初は「基礎保健および福祉」とされていました。総括所見では、比較的早い段階から「障害」が独立のクラスターとして扱われるようになっています)。
 また、今後は締約国との対話および総括所見において新たに「子どもの権利と環境」というクラスターを用いていくことも決定されています(定期報告書ガイドラインの改訂が近いうちに行なわれるかどうかは不明です)。この決定が行なわれた第94会期(2023年9月)から、さっそく総括所見に「子どもの権利と環境」のクラスターが設けられています。参照条文として挙げられているのは2条(差別の禁止)、3条(子どもの最善の利益)、6条(生命・生存・発達に対する権利)、12条(子どもの意見の尊重)、13条(表現・情報の自由)、15条(結社・平和的集会の自由)、17条(適切な情報へのアクセス)、19条(暴力・虐待・搾取等からの保護)、24条(健康に対する権利)および第26~31条(社会保障・十分な生活水準・教育・マイノリティの保護・遊び等に対する権利)です。

【追記】(2024年2月20日)
「子どもの権利と環境」というクラスターを総括所見に設けるという委員会の決定はさっそく実行に移されていますので、上記に追記しておきました。このほか、第94会期以降、総括所見では「基礎保健および福祉」のクラスターが「健康(第6条、第24条および第33条)」「生活水準(第18条(3)、第26条および第27条(1)~(3))」に分けて記載されるようになっています。

 また、第95会期(2024年1月)に採択された総括所見では、「市民的権利および自由」の見出しが「市民的および政治的権利」に変更されているものがあります(南アフリカやロシア連邦など)。「子どもの権利の主流化」に関する国連事務総長のガイダンスノート(2023年8月発表)でも、子どもの市民的および政治的権利について、「子どもが権利保有者であるとはどういうことかという点にとっては同じように中心的重要性を有する」にもかかわらず「とりわけ軽視・否定」される傾向があることが指摘されており、委員会が共有するこのような問題意識を反映したものと思われます。

【追記2】(2024年8月9日)
国連・子どもの権利委員会、審査や総括所見で用いる新たなクラスター構成を確認〉も参照。

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平野裕二
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