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国連・子どもの権利委員会、ウクライナ戦争を背景とする子どもの権利侵害に終止符を打つようロシア連邦に勧告

 先日の投稿でお知らせしたとおり、国連・子どもの権利委員会が第95会期(1月15日~2月2日)に報告書審査を行なった6か国(コンゴ/ブルガリア/セネガル/ロシア連邦/リトアニア/南アフリカ)についての総括所見(先行未編集版)は、2月8日(木)に第95会期のページで公開されました。各総括所見の概要は、OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)のプレスリリースにまとめられています。

 やはりロシア連邦に対する委員会の勧告への関心は高く、国内外で報じられています。日本語で読める記事としては、たとえば次のものがあります。

1)ロイター:国連、ロシアにウクライナからの子ども強制移送をやめるよう要求
https://jp.reuters.com/world/ukraine/ZHMKZREJCFPF7P6ZWTBUHGOC2M-2024-02-08/

2)産経新聞(共同):「学校を政治化、軍事化するな」 国連委員会がロシアに要求
https://www.sankei.com/article/20240209-UR7HHIJ3RRJAXKL4M7N7YEKMKE/

3)TBS:国連がロシアに勧告「ウクライナの子ども早期帰国を」
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/989953

 ロシア連邦の報告書審査については、Facebookで次のように簡単に報告しておきました(この記事の見出し画像は審査時の中継動画からキャプチャーしたもの)。

 ジュネーブで第95会期を開催中の国連・子どもの権利委員会は、1月21日から22日にかけてロシア連邦の第6回・第7回統合定期報告書を審査しました。OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)によるプレスリリース(英・仏)は以下から参照できます。

- Experts of the Committee on the Rights of the Child Commend the Russian Federation on the Reduction in Child Mortality Rates, Ask about Propaganda in Schools and the Impact of the War in Ukraine on Children
(子どもの権利委員会の専門家、子どもの死亡率の削減についてロシア連邦を称賛するとともに、学校でのプロパガンダ、ウクライナでの戦争が子どもに及ぼす影響について質問)
https://www.ohchr.org/en/news/2024/01/experts-committee-rights-child-commend-russian-federation-reduction-child-mortality
.
- Examinant le rapport de la Fédération de Russie, les experts du Comité des droits de l’enfant s’inquiètent d’une propagande dans les écoles, de la violence dans les institutions de prise en charge des enfants et des conséquences de la guerre en Ukraine
(ロシア連邦の報告書を審査した子どもの権利委員会の専門家、学校でのプロパガンダ、児童養護施設での暴力、ウクライナでの戦争の影響を懸念))
https://www.ohchr.org/fr/news/2024/01/experts-committee-rights-child-commend-russian-federation-reduction-child-mortality

 審査のアーカイブ動画は↓です。
https://webtv.un.org/en/asset/k10/k108mcsuji
https://webtv.un.org/en/asset/k1y/k1ypyiyzas

「学校におけるプロパガンダ」とは戦争をめぐる“愛国教育”を指しており、審査では、2022年9月に導入された「大切なことについての会話」という授業にも言及されています*。同年12月に発足した、かつてのピオネール(パイオニア)運動を彷彿とさせる「先駆者運動」(Movement of the First)についても、その組織の性格等について懸念が表明されました。

 審査におけるやりとりについて詳しくは述べませんが、ロシア担当国別タスクフォースのコーディネーターを務めたブラギ・グルブランソン(Bragi Gudbrandsson)副委員長は、審査の締めくくりにあたり、ウクライナ、ロシアおよび世界中の子どもたちにとってのさらなる破滅的影響を回避するため、ウクライナにおける軍事作戦を遅滞なく停止することを代表団に対して求めました。

 これに対し、ロシアの代表団主席は、委員会が行なうすべての勧告に注意を払うと述べつつも、
「ロシア連邦は、ロシアの子どもの権利の充足を目的とするものではなく、偏向した、主権国家の内政に介入しようとする勧告を履行する義務はないと考える」
 と述べて、とくに戦争関係の勧告は拒否する構えを示しています。残念ながら、ウクライナとロシアの子どもたちにとっての厳しい状況はまだまだ続きそうです。

* NHK〈ロシア“愛国教育”の内幕 戦場に導かれる子どもたち〉(2023年9月19日付)↓など参照。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4823/

 OHCHRによるプレスリリースでは、ロシア連邦に関する総括所見について次のようにまとめられています。

ロシア連邦
 委員会は、2018~2027年を「子ども時代の10年」と宣言したロシア連邦大統領令と、その枠組みのなかで行なわれる主要な活動を承認した関連の政府命令に留意した。

 しかしながら委員会は、締約国〔ロシア連邦〕の立場と合致しない政治的意見を表明した子どもが訴追されているという報告について懸念している。委員会はまた、「ロシア軍の信用を傷つける(discredit)」行為について行政上・刑事上の責任を導入した2022年3月の法律についても憂慮している。委員会は、ロシア連邦に対し、意見(とくに政治情勢に関するもの)を表明したことを理由とする子どもの訴追をやめるよう促した。委員会はまた、いかなる子どももそのような意見の表明を理由として逮捕され、刑事上もしくは行政上の罪に問われまたは刑を言い渡されないことを確保するよう、締約国に求めた。

 委員会は、教育プロセスへの与党の介入およびウクライナへの戦争に関する学校での組織的な国家プロパガンダ(新たな歴史教科書、新科目「大切なことについての会話」の導入、および、ウクライナにおける戦争についての政府の立場を伝達する新たな教員研修マニュアルを含む)についての警戒の念を提起した。委員会は、学校の政治化および軍事化に終止符を打つことを求めて、ロシア連邦に対し、教育が、すべての諸人民間の理解、平和、寛容、ジェンダー平等および友好の精神のもとで、子どもが自由な社会において責任ある生活を送れるようにすることを目指して行なわれることを確保するよう、促した。委員会はまた、締約国に対し、政府の政治的・軍事的アジェンダを反映させる目的で学校カリキュラムおよび教科書を書き換えようとするいかなる試みも防止するよう求めた。

 以下、ロシア連邦に関する総括所見CRC/C/RUS/CO/6-7、先行未編集版)から、報道で注目されている問題についての指摘および勧告を訳出しておきます。


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