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新型コロナと子どもの権利――ニュージーランド子どもコミッショナーの取り組み

 子どもオンブズパーソン/コミッショナーのような機関が設置されている国々では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが子どもたちに及ぼしている影響を明らかにして対処するうえでも、これらの機関が重要な役割を果たしています。

 ニュージーランド子どもコミッショナーは、2020年3月~5月にかけて7週間続いたロックダウン(レベル3・4)の期間中に子どもたちが感じたこと・考えたことをまとめた報告書『ロックダウン下の生活』Life in Lockdown)を、同年11月に発表しました。

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 ニュージーランドでは、2020年3月25日にレベル4(最高警戒レベル)のロックダウンが全国的に導入され、およそ5週間続きました。その後レベル3に引き下げられ、5月13日にはさらにレベル2に引き下げられましたが、学校が再開したのは5月18日のことです。

 今回の調査は、学校再開の翌日(5月19日)から3週間をかけてオンラインで実施されました。1,373人が学校経由で、29人が若者団体経由で回答し、計1,402人の子ども・若者(8~18歳)から声が寄せられています。代表性が十分でないことは報告書も認めていますが、それでも貴重な調査結果と言えるでしょう。得られた知見の概要は次のような形でまとめられています(p.4)。

1)COVID-19ロックダウンは、回答してくれた子ども・若者にさまざまな影響を――好影響も悪影響も――及ぼした。
2)人間関係が重要である――ロックダウンが友達や家族との関係に及ぼした影響は、好影響も悪影響も含め、大きかった。
3)子ども・若者は、自分の時間をコントロールできること、自由な時間が増えたこと、新しい活動に取り組む機会が持てたことを楽しいと感じていた。
4)ロックダウン中に教育の性質が変化したことについては、不安を覚える子どももいれば、自立の機会ととらえる子どももいた。
5)ウェルビーイングが向上したかどうかは、回答した子ども・若者全体でさまざまである。

 報告書では、これらの知見のそれぞれについて、政策上の含意と今後とるべき対応が提示されています(pp.43-47)。
「子どもたちの意見を聴き、検討し、政府のCOVID-19対応に組みこんでいくことは、政策の改善と、すべての人にとっての成果の向上につながりうる」
 という指摘(p.47)は、どの国についても当てはまることと言えるでしょう。

 さらに、ニュージーランド子どもコミッショナー事務所が主宰する「子ども条約モニタリンググループ」は、2021年3月7日、『状況を是正する:COVID-19対応における子どもの権利』Getting it right: Children's rights in the COVID-19 response)と題する報告書を発表しました。

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 同グループには、ニュージーランド国家人権委員会、ユニセフ・ニュージーランド、子どもと若者のための行動・アオテアロア(NGO等の連合体)、セーブ・ザ・チルドレン・ニュージーランドなどが参加して、同国における条約の実施状況をモニタリングしています。今回の報告書は、「状況を是正する」シリーズの第3弾になります(条約実施のための基本的要素を掲げた第1弾、子どもの意見表明・参加に焦点を当てた第2弾については、それぞれ以前のFacebookへの投稿を参照)。

 今回の報告書では、「子ども・若者ウェルビーイング戦略」(2019年8月)に掲げられた6つのウェルビーイング・アウトカムに照らしてこの間の状況を検討し、政府機関等に対して計31項目の勧告を行なっています。6つのアウトカムとは次のとおりです。

1)子ども・若者が愛され、安全で、大切に育てられている。
2)子ども・若者が必要とするものを手にしている。
3)子ども・若者が幸福で健康である。
4)子ども・若者が学び、成長している。
5)子ども・若者が受け入れられ、尊重され、つながっている。
6)子ども・若者が参加し、エンパワーされている。

 先日紹介したように、国連・子どもの権利委員会はニュージーランドに対する事前質問事項(2020年7月)でCOVID-19対応についても質問しており、今回の報告書も委員会に提出されると思われます。

 このほか、ニュージーランドではCOVID-19が教育に及ぼしてきた影響に関する教育評価機関(ERO)の報告も発表されていますが、これについてはまたあらためて取り上げます。前掲「子ども・若者ウェルビーイング戦略」についても、いずれもう少し詳しく紹介したいと思います。

 各国の子どもオンブズパーソン/コミッショナーが行なってきたCOVID-19関連の取り組みについては、以下の投稿も参照。


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平野裕二
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