ユネスコ「平和、人権および持続可能な開発のための教育に関する勧告」(2023年11月)
1月24日は国連の定める「教育の国際デー」(International Day of Education)だったので、翌1月25日の早朝、Facebookに次のように投稿しました。
上記投稿で紹介したリリース等でも言及されていますが、ユネスコは、昨年(2023年)11月20日、第42回総会で「平和、人権および持続可能な開発のための教育に関する勧告」(正式名称:平和ならびに人権、国際理解、国際協力、基本的自由、グローバルシティズンシップおよび持続可能な開発のための教育に関する勧告)を採択しました。1974年に採択された「国際理解、国際協力および国際平和のための教育ならびに人権および基本的自由についての教育に関する勧告」(日本語仮訳PDF)をおよそ50年ぶりに改訂したものです。
★ UNESCO adopts landmark guidance on education's cross-cutting role in promoting peace
https://www.unesco.org/en/articles/unesco-adopts-landmark-guidance-educations-cross-cutting-role-promoting-peace
勧告の原文はこちらから参照できます。また、改訂に至るまでの経緯はこちらのページにまとめられています。
〈ユネスコ「平和、人権および持続可能な開発のための教育に関する勧告」について知っておかなければならないこと〉(What you need to know about UNESCO's Recommendation on Education for Peace, Human Rights and Sustainable Development)というページ(参考:機械翻訳によると思われる日本語抄訳)によれば、今回の勧告のハイライトは次の5点です。
今回の勧告では、「この勧告の目的の達成に向けた教育は変革志向の良質なものであるべきであり、したがって次の諸原則を指針として行なわれるべきである」として、14の指導原則(Guiding Principles)が掲げられています(パラ8)。勧告全文の日本語訳はそのうちどなたかの手で公開されるでしょうから、ここでは指導原則のみ訳出しておきます(太字は平野による)。とくに(c)で「権利の保有者としての学習者のエンパワーメント」が指導原則として位置づけられていることなどは、日本における今後の教育のあり方を考えていくうえでも課題になりそうです。
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(a)教育は公共財であり、すべての人にとってアクセス可能なものであるべきことを認識する。
(b)国際法および国際人権法に掲げられた権利およびそれに対応する義務(すべての市民的、文化的、経済的、政治的および社会的権利ならびに発展に対する権利を含む)に根ざしており、かつ人権の促進および保護を志向して運用される。
(c)国際人権法で定められているとおり、人種、皮膚の色、世系、ジェンダー、年齢、言語、宗教、政治的意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、出生の経済的もしくは社会的条件または障害および他のすべての事由にかかわらず、教育においておよび教育を通じて差別の禁止、包摂および公平を確保するとともに、権利の保有者としての学習者のエンパワーメントを図る。
(d)共生的関係、善隣および帰属感を奨励するため、互恵および共感を涵養することを通じて、ケアおよび連帯の倫理を促進する。
(e)教育においておよび教育を通じてジェンダー平等を促進する。このことは、すべての人を対象とする教育に対する権利の実現にとっての、また女性および少女のエンパワーメントにとっての、鍵である。
(f)すべての人が教育に対する権利を有しており、かつ、いかなる種類の差別もなく、そのアイデンティティを尊重しかつ自他の歴史、伝統、言語および文化について知ることを奨励する包摂的かつ良質な教育への公平なアクセスを保障されるべきであることを認識する。ユネスコの文化的多様性に関する世界宣言で述べられているように、文化的多様性の擁護は「人権および基本的自由に対するコミットメントを含意する」ものであって、「何人も、文化的多様性を引き合いに出して、国際法で保障されている人権を侵害しまたはその適用範囲を限定することはできない」。
(g)すべての学習者、教員および教育職員の安全、健康およびウェルビーイングが保護・促進されることを確保する。
(h)教育および学習が、継続的な、生涯にわたる、生活のすべての側面を包含した(life-encompassing)、ホリスティックでヒューマニスティックな変容的プロセスであることを認識する。
(i)すべての学習者が、差別なく、知識の創出および共創に積極的に関与していることを認識し、その意義を認め、かつ、すべての教育政策立案者、教育指導者、教員および教育職員の間でそのような認識を促進する。
(j)関連の国際人権法で定められているとおり、差別または暴力の扇動を構成する、あらゆる事由に基づくいかなる憎悪の唱道も禁止しつつ、思想、良心、信条および宗教の自由ならびに表現および意見の自由を確保する(あらゆる形態およびあらゆるの媒体で情報および勧化を求め、受けかつ伝える権利の確保を含む)。
(k)コミュニティ、地方、国、国際地域および国際社会の各レベルの問題の解決に、とくに現在および将来の技術を倫理的にかつ責任を持って活用することを通じて主体的に関わっていこうとする個人の意欲を奨励し、そのエンパワーメントおよび支援ならびに能力構築を図る。
(l)地方と国際社会の相互関係性を強調しながら、教育において国際的かつグローバルな見方をできるようにする。
(m)協力と連帯のための文化間・世代間対話を促進するとともに、諸人民、諸社会および諸国間の友好的関係を発展させる一助とするための効果的コミュニケーションを強化する。
(n)個人、コミュニティ、社会、国々、天然資源および生態系間の相互依存性の高まりに関する意識を喚起するとともに、グローバルシティズンシップの倫理と、平和、人権および地球の限界を超えない万人の利益のための持続可能な開発に対する共通の責任を涵養する。