生命に対する権利/拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰の禁止
(中略)
22.「自主」避難者か「強制」避難者かの区別にかかわらず、福島原子力災害を理由とするすべての国内避難民に対して支援が提供されると締約国が言明していることは歓迎しながらも、委員会は、福島において締約国が定めている被曝水準の基準が高いこと、および、一部の避難区域の指定解除により人々には高汚染地域に帰還するしか選択の余地がなくなっていることを、依然として懸念する。委員会はまた、避難区域外に住んでいる避難民を対象とした無償の住宅支援が打ち切られたこと、および、すべての国内避難民が(自分の土地への帰還を決心したか否かにかかわらず)必要な支援にアクセスできることを確保するために設けられている措置についての情報がないことも、懸念するものである。さらに委員会は、災害以降、福島の多数の子どもが甲状腺がんと診断されまたは甲状腺がんに罹患していると考えられるという報告を懸念する。(第6条、第12条および第19条)
23.前回の勧告〔CCPR/C/JPN/CO/6, para. 24〕も踏まえ、締約国は次の措置をとるべきである。
(a)福島における原子力災害の被災者全員の命を保護し、かつ、汚染された場所の避難区域指定の解除は放射線レベルが住民を危険にさらさない場合に限って行なうこと。
(b)放射線レベルのモニタリングを継続し、かつ、被災者に対し、当該情報を時宜を得たやり方で開示すること。
(c)すべての国内避難民が、「自主」避難者か「強制」避難者かまたは自分の土地への帰還を決心したか否かにかかわらず、すべての必要な金銭的支援、住宅支援、医療支援その他の支援にアクセスできることを確保すること(避難区域外に住んでいる避難民を対象とした無償の住宅支援の再開を含む)。
(d)原子力災害が被曝した人々の健康に及ぼす影響(子どものがんの発生率が高いこととの相関の可能性を含む)を引き続き評価するとともに、被曝したすべての者(子どもを含む)を対象とする無償の、定期的かつ包括的な健康診断の実施を検討すること。
子どもの権利
44.委員会は、一部の公式書類で婚外子を「嫡出でない(illegitimate)」とする用語が司法されていることについての締約国の説明に留意するとともに、代表団が、締約国としては当該用語を削除してすべての子どもの平等を確保することを検討する用意があると言明したことを歓迎する。委員会は、児童福祉法の修正および改正に関して締約国から提供された情報には留意しつつ、裁判所の命令および親による虐待の明確な証拠がないまま子どもが家族から分離されて児童相談所における(しばしば長期間の)一時保護の対象とされているという報告があり、かつ、一時保護状の発付の必要性について裁判官が検討する不服申立て手続において親自身は自らの主張を提出することができないことを懸念する。さらに、問題に関して締約国から提供された回答は認知しつつ、委員会は、国内的事案か国際的事案かを問わずしばしば生じている「親による子の奪取」の事案に関する報告が寄せられていること、および、締約国による十分な回答が行なわれていないことを懸念する。(第17条、第23条および第24条)
45.締約国は次の措置をとるべきである。
(a)自国の法律および実務が規約第24条に全面的に合致することを確保し、かつ、すべての子どもに対するすべての差別およびスティグマを取り除くことを目的とする保護措置をとること。
(b)家族からの子どもの分離に関する明確な基準を設け、かつ分離が正当か否かを決定する義務的司法審査をすべての事案について導入するために法律を改正して、親からの子どもの分離が、子どもおよび親の意見を聴取した後に、子どもの保護および最善の利益のために必要な場合に最後の手段としてのみ行なわれることを確保すること。
(c)「親による子の奪取」の事案に十分に対応するために必要な措置を導入するとともに、国内的事案か国際的事案かを問わず、子どもの監護に関する決定において子どもの最善の利益が考慮され、かつ当該決定が実際に全面的に実施されることを確保すること。