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国連・子どもの権利委員会、過去に行なった勧告のフォローアップなどを目的として太平洋諸島国を訪問

 国連・子どもの権利委員会が、2020年3月にサモアで開催された第84会期(特別会期)のフォローアップとして11月に太平洋諸島地域を訪問する予定であることは、〈国連・子どもの権利委員会の第94会期が終了:スケルトン委員長、個人通報議定書の批准をあらためて呼びかけ〉でお知らせしました。 

 11月13日から22日にかけて訪問が実施されましたので、その概要を紹介しておきます。

1)OHCHR: CRC Follow-Up Visit to the Pacific and the Pacific Launch of the Committee's general comment no. 26
https://www.ohchr.org/en/events/events/2023/regional-experience-sharing-workshop-implementation-recommendations-and-pacific

第84会期に審査した3カ国へのフォローアップ訪問

 委員会のメンバーは、まず11月13日~15日にかけて第84会期に報告書審査を行なった3か国(クック諸島、ミクロネシア連邦およびツバル)を訪問し、子どもたち、コミュニティ、政府関係者および市民社会組織と会って前回の審査以降の進展を確認するとともに、子どもに対する暴力、子ども司法、健康・ウェルビーイングなど、子どもたちに影響を与えている諸問題について、また気候変動が子どもたちに及ぼしている影響について、話を聴きました。

 アン・スケルトン委員長が参加したクック諸島への訪問については、ネットニュースでも報じられています。

- Cook Islands News - Climate change a major threat to children’s rights in Pacific region: UNCRC
https://www.cookislandsnews.com/uncategorised/internal/national/climate-change-a-major-threat-to-childrens-rights-in-pacific-region-uncrc/

 今回、委員会は3つの代表団に分かれて3か国を訪問しました。子どもの権利条約フォーラム2023 in とよた(11月25日~26日、愛知県豊田市)の際に委員会の委員である大谷美紀子さんと立ち話をしたところ、大谷さんはミクロネシア連邦への訪問を担当したそうです。大谷さんは、新型コロナウイルス感染症パンデミックによる渡航制限のため第84会期には現地に行くことができませんでしたので、何よりでした。なお第84会期の様子についてはFacebookへの投稿(2020年2月28日付3月4日付3月8日付)を参照。

勧告の実施に関する地域的経験共有ワークショップ(サモア)

 委員会は続いてサモアの首都アピアに移動し、11月20日~22日にかけて「勧告の実施に関する地域的経験共有ワークショップ」に参加しました。このワークショップは、委員会が訪問した3か国だけではなく、すべての太平洋諸国*の代表が参加して開催されたものです。

* 委員会が訪問したクック諸島、ミクロネシア連邦およびツバルのほか、フィジー、キリバス、ナウル、パプアニューギニア、マーシャル諸島共和国、サモア、ソロモン諸島、トンガおよびバヌアツ。一部の国については委員会の過去の総括所見を日本語訳しているので、筆者のサイト〈子どもの権利委員会の総括所見日本語訳(国別)〉のオセアニアの項を参照。

 冒頭で紹介したOHCHRのページに、ワークショップのコンセプトノート成果文書(いずれもPDF)が掲載されています。

 初日の20日には、委員会の一般的意見26号(とくに気候変動に焦点を当てた子どもの権利と環境)の太平洋地域ローンチも行なわれ、多くの子どもたちも参加しました。プレスリリース(PDF)も出ています。ワークショップ終了後に出されたプレスリリース(同)とあわせて紹介しておきます。

2)OHCHR: General Comment 26 launched in the Pacific - UN Child Rights Committee meets with Pacific children and governments to share new guidance on children and environment
https://www.ohchr.org/sites/default/files/documents/hrbodies/crc/activities/2023-11-20-crc-PR-General-Comment-26-launched-Pacific.pdf

3)OHCHR: Pacific leaders commit to championing children's rights and give children the best World Children's Day gift - United Nations Committee on the Rights of the Child Celebrates Positive Outcomes in the Pacific
https://www.ohchr.org/sites/default/files/documents/hrbodies/crc/activities/un-committee-rights-child-celebrates-positive-outcomes-in-pacific.pdf

 次のような記事も出ています。

-RNZ - 'No voice': Protecting children's rights in the Pacific
https://www.rnz.co.nz/international/pacific-news/503452/no-voice-protecting-children-s-rights-in-the-pacific

 3日間のワークショップを経てとりまとめられた成果文書(PDF)は、条約および委員会の勧告の実施に対する参加国政府のコミットメントを明らかにしたもので、次のような行動への決意が含まれています(前掲3)のプレスリリースのまとめによる)。

● 実施の加速
● 勧告の幅広い普及
● 子どもの権利の保護
(体罰、ドメスティックバイオレンス、性的搾取、子ども司法などの問題への対処)
● 太平洋諸国同士の学び
● 実施・報告・フォローアップのための国内機構
● マルチステークホルダーの関与
● 国際的連携
● 気候行動
● 子どもの権利の唱道

 人権条約機関から出された勧告を地域レベルで振り返る取り組みジュネーブ人権プラットフォームなどの手で試行的に進められており、関連する委員会の委員が個人として参加することもあるようです。太平洋諸島地域でも11月28日~30日にフィジーで開催され、フィジーのほかトンガとツバルが参加していますが、人権条約機関が公式に訪問して勧告の実施状況などを地域的に確認するのはまだ珍しいと思います。資源がそれほど潤沢ではなく、なおかつ気候変動の影響をとりわけ受けやすい状況に置かれている太平洋諸島国での条約の実施が、子どもの権利委員会による今回の訪問を機にさらに前進することを期待します。


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平野裕二
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