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UN Womenと2つの国連人権条約機関が障害のある女性・女児に対するセクシュアルハラスメントについての共同声明を発表

 UN Women(国連女性機関)、国連・女性差別撤廃委員会および国連・障害者権利委員会は、10月22日、障害のある女性・女児へのセクシュアルハラスメントに終止符を打つための取り組みに関する共同声明Word)を発表しました。

 共同声明では、障害のある女性・女児に対する、セクシュアルハラスメントをはじめとする性暴力に関して交差的(intersectional)アプローチをとることの重要性を確認したうえで、次のような決意表明を行なっています。3つの機関が今後進めていく取り組みの方向性を示したものですが、当然、各国における法改正や政策形成にも影響を与えていくことになると思われます。以下、8項目の決意表明を訳出しておきます。

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 ……私たちは、以下の行動をとることにより、私たちの活動が障害のある女性・女児の声を増幅させるプラットフォームとして機能するようにすることへの決意を表明する。

1.セクシュアルハラスメントを、ジェンダー平等原則に違反する人権侵害(a human rights violation of gender equality principles)であって、障害など不平等の他の側面と交差するものとして認識する。これは、視線によるものから言葉によるもの、触れること、補装具をいじること、身体的接触、性的暴行および強制性交に至るまでの、望まれない性的行動をともなうものである。

2.セクシュアルハラスメントを防止し、これと闘い、これに制裁を科しかつこれをなくしていくための取り組み、および、セクシュアルハラスメントを終わらせるために必要な文化的変化を生み出すことを目的とした取り組みを具体化していく際の中核に、障害のある女性・女児の経験的知識を位置づける。これには、〔セクシュアルハラスメントの〕解消を追求し、女性差別撤廃条約および障害者権利条約を尊重し、かつこの声明で述べる原則を中心として立案された、アクセシブルなコミュニケーション、メッセージおよび訓練・研修が含まれることになろう。

3.女性に対するジェンダーに基づく暴力についての女性差別撤廃委員会の一般的勧告35号(2017年、一般的勧告19号を改訂したもの)にのっとり、女性に対するジェンダーに基づく暴力(セクシュアルハラスメントを含む)を終わらせるための両委員会の努力において、ジェンダー不平等と障害に基づく不平等の双方が中心的に位置づけられることを確保する。

4.セクシュアルハラスメントその他の形態の暴力を受けない障害のある女性・女児の権利の実現を妨げ、かつ障害のある女性・女児が受ける資格を有する司法的保護および権利保護を否定するさまざまな要因に対し、異議を申し立てていく。この活動には、セクシュアルハラスメントおよび暴力の事案に関する信憑性を損なうステレオタイプに終止符を打つこと、構造的および交差的差別に対処していくこと、ならびに、支援を受けながらの自律的意思決定を確保していくことが含まれることになろう。

5.障害のある女性・女児がジェンダーに基づく暴力を通報することを妨げまたは抑制するすべての法律(女性から行為能力を奪いまたは裁判所および自己が関わる公的手続での証言能力を制限する後見法制や、女性による暴力の通報を抑制するいわゆる予防拘禁の慣行など)の改正に取り組むとともに、再被害化を回避するための適切かつアクセシブルな保護の仕組み(被害を受けたサバイバーによる法的手続の開始を妨げるコミュニケーション上の障壁その他の阻害要因を解消することを含む)を促進していく。

6.あらゆる性暴力の事案(いまなお入所施設、特別学校、精神保健施設、デイケア施設および職業就労施設などの施設で居住しまたは1日の大半を過ごしている、障害のある女性・女児へのセクシュアルハラスメントを含む)を防止するため、市民社会組織およびとくに障害のある女性の団体とパートナーシップを組んで活動していく。あらゆる形態の搾取、暴力および虐待(セクシュアルハラスメントを含む)の発生を防止するため、締約国は、障害のある人へのサービス提供を目的とするすべての施設およびプログラムが独立した公的機関により効果的にモニタリングされること、ならびに、いまなお施設にいる障害のある女性・女児が性的暴力から保護され、かつ司法、救済および賠償にアクセスできることを確保するべきである。

7.自立生活を送りかつ地域社会で包摂される障害のある女性・女児の権利を充足し、かつ施設措置を終わらせるための措置を国内当局がとることを促進するために活動していく。脱施設化戦略を立案・実施していくなかで地域社会における支援・リハビリテーション・回復サービスの変革を図っていくすべての取り組みで、障害のある女性・女児の積極的関与を確保する。性暴力(セクシュアルハラスメントまたは他のあらゆる形態の搾取、暴力もしくは虐待を含む)の被害を受けた障害のある女性・女児の身体的、認知的および心理的回復、リハビリテーションおよび社会的再統合を、保護サービスの提供等を通じ、これらの女性が必要とするものを考慮に入れたインクルーシブな環境下において共同で促進していく。

8.障害のある女性・女児に対するセクシュアルハラスメントの事案が発見され、捜査されかつ訴追されることを確保するための効果的な法律および政策の採択を促進するため、協働していく。

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平野裕二
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