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子どもに対する暴力をなくすための、子どもたち自身が参加する取り組み
子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表事務所(Office of the Special Representative of the Secretary-General on Violence against Children)が、暴力をなくすための取り組みへの子ども参加に関する報告書を発表しました(7月7日ごろ)。
『子どもたちが主導するとき:子ども参加で暴力に取り組む10のアプローチ』(When children take the lead: 10 child participation approaches to tackle violence)と題されたこの報告書(PDF)には、子どもに対するさまざまな形態の暴力に子どもたち自身が中心となって取り組んだ10の事例に関するケーススタディが掲載されています。
1.いまこそ話すとき! 子どもの仕事に関する子どもたちの見方(国際)
2.Uレポート:いじめ反対の声をあげる思春期の子どもと若者(国際)
3.女の子のために立ち上がる:マラウィとグアテマラにおける児童婚およびジェンダーに基づく暴力への取り組み(マラウィ・グアテマラ)
4.テクノロジーで力を得た女の子大使(TEGA)が、女の子たちが直面している問題を理解する(ナイジェリア・米国)
5.国際レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クィア・インターセックス若者・学生団体(IGLYO):活動家アカデミーとインクルーシブ教育レポート(ヨーロッパ)
6.Yo Opino:チリの子どもたち、自分たちに影響を与える問題について発言する(チリ)
7.たゆみなき発展・インド:児童婚に反対する子ども・若者のエンパワーメント(インド)
8.たゆみなき発展・タンザニア:セクシュアル/リプロダクティブライツとジェンダーに基づく暴力をめぐる沈黙を打破するための、思春期の子どもと若者のエンパワーメント
9.#StandTogether:子ども主導のいじめ解決を励ますマレーシアの諸団体(マレーシア)
10.OpiNNA:差別と自分たちの扱われ方について発言するメキシコの子どもたち(メキシコ)
これらの事例から導き出された結論と勧告の概要は次のとおりです(報告書p.xiiiの要約より)。
1.子ども参加のパラダイムは、「子どもたちの発言を聴こう」から、「子どもたちが問題を特定し、決定を行ない、必要なときは他の人々に異議を申し立て、意思決定を行なう立場にある人々から自分たち自身の仲間に至るまでの幅広いパートナーを動員できるようにしよう」へと変化しつつある。
⇒ 大人は、権限を子どもたちと共有し、権限の委譲さえ行なわなければならない(ただし、それで大人の責任が免除されるわけではないことも理解しておかなければならない)。
2.子ども主導でなければならない。子どもたちが関与するだけでは十分ではない。
⇒ 可能なかぎり早い段階から子どもたちを包摂し、主導的役割を委ねなければならない。
3.(課題をあらかじめ設定したうえで子どもたちに参加を呼びかけるのではなく)子どもたちに、自分たちが取り組みたいと思う問題を特定するよう奨励しなければならない。
⇒ 大人は、ファシリテーターおよび情報・ツールの提供者としての役割に留まるべきである。
4.子どもは他の子どもを信頼しており、同じぐらいの年齢の子どもからアプローチされたときのほうが参加しやすい傾向にある。
⇒ 効果的なピア・トゥ・ピア(peer-to-peer)アプローチを生み出そうと思うなら、子どもたちを信頼し、アドボカシーのための共通の目的を持ったパートナーとして扱わなければならない。
5.子どもたちは、プロジェクト終了後も参加を続けることが多い。
⇒ 包括的な子ども参加モデルは突き詰めればエンパワーメントにつながるツールおよび経験であるべきであり、大人が望む成果を得られた段階で終了するべきではない。
6.ICT(情報通信技術)を最大限活用している事例はまだわずかしかない。
⇒ 量的データの収集というだけに留まらず、ICTの利点を追求するべきである。
7.報告書で取り上げた事例では子ども参加実践一般に関する基準が適用・尊重されているが、ICTの要素を強化した取り組みにおいては追加的な基準が必要である。
⇒ 子ども参加モデルは子どもたちの現実にあわせて変化していかなければならない。デジタル世代は強力なデジタル基準を必要としている。
報告書では、次のような図(p.59)を示し、子ども参加実践における子どもの捉え方を「受益者」→「パートナー」→「主導者」へと変化させていく必要性が強調されています。
このようなプロセスは目の前の子どもたちの現実も踏まえて丁寧に進めていく必要がありますが、子ども参加実践の方向性を考えるうえでは参考になるかと思います。
公的意思決定プロセスに参加する子どもの権利についてのセーブ・ザ・チルドレンの報告書をFacebookで紹介していますので、そちらも参照してください。
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