国連・移住労働者権利委員会、入管収容等に関する一般的意見5号のローンチイベントを開催
Facebookでお知らせしたとおり、入管収容等の問題に関する国連・移住労働者権利委員会の一般的意見5号(身体の自由および恣意的拘禁からの自由に対する移住者の権利ならびにこれらの権利と他の人権との関係)が9月23日に発表され、昨日(10月7日)、そのローンチイベントがジュネーブで開催されました。
ローンチイベントのプログラムは次のとおりです(Facebookの10月1日付投稿も参照)。
(1)イントロダクションと開会の辞(3:00~3:15 pm)
(2)元入管被収容者とのパネルカンバセーション(3:15 to 3:45 pm)
(3)一般的意見5号の主要な懸念、主な知見および勧告についての委員会メンバーによるプレゼンテーション(3:45 to 4:15 pm)
(4)国際的専門家とのパネルディスカッション(4:15 to 4:45 pm)
(5)まとめと閉会の辞(4:45 to 5:00 pm)
概要はOHCHR(国連人権高等弁務官事務所)のプレスリリースで把握できます。
★ OHCHR: Committee on Migrant Workers Launches General Comment on Migrants' Right to Liberty and Freedom from Arbitrary Detention
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=27628&LangID=E
アーカイブ動画も視聴可能です(ただし音声が非常に聞こえにくくなっているようです)。
前掲プレスリリースより、委員会の2人の副委員長の発言概要を訳出しておきます(太字は平野によるもの)。
アルバロ・ボテロ・ナバロ(Alvaro Botero Navarro)副委員長は次のように述べた。――入管収容は世界中で数百万人の人々に影響を与え、その生活を損なっている。一般的意見の中心的メッセージのひとつは、締約国およびこのおぞましい慣行(terrible practice)に関与しているすべての者は入管収容を廃止するための措置をとらなければならないということである。委員会は、入管収容の解体のきっかけとなりうる法的基準の発展に貢献できることを望む。委員会が発する明確なメッセージは、国際人権法上、国には移住を犯罪化しない義務があるということである。委員会は、この数十年間、入管収容制度の拡大と並んで、入管法の執行における民間刑事施設企業の関与と影響力の高まりを観測してきた。恣意的拘禁の禁止は絶対的である。収容のいかなる利用も、正当な国家の目的に基づく、最後の手段でなければならない。
ファティマ・ディアロ(Fatima Diallo)副委員長は、国には、収容を課す前に、個別事案ごとに収容に代わる手段を考える義務があると指摘した。収容代替措置は、収容ほど制限的ではない、コミュニティにおける措置またはプログラムを考慮するものである。多くの社会内措置(non-custodial measure)は過度に制限的であり、移住との関係では適切ではない。COVID-19の感染拡大リスクのため、社会内措置の重要度はさらに増している。収容は無期限であってはならず、無期限であれば恣意的拘禁となろう。移住者は、司法へのアクセスを妨げる多くの障壁に直面している。移住者が司法にアクセスできるようにすることは締約国の責任である。援助および領事保護に対する権利は、移住労働者による司法へのアクセスを確保するうえできわめて重要であり、とくに自由を奪われている場合には緊急性を有する。国は市民社会組織が何らの制限も受けることなく活動を遂行することを常に認めなければならないと、副委員長は強調した。
一般的意見5号の概要については、草案段階のものですが、以前の解説記事を参照。そこで指摘しておいたとおり、国連・移住労働者権利条約を批准していない日本にとっても、一般的意見5号はおおいに関連性を有するものです。
古川禎久法相は、就任後初めての記者会見で
「外国人との共生や人権に重きを置き、政策に向き合いたい」
「(入管収容等への批判を)真正面から受け止め、よいものになるよう努力する」
などと述べたとのことですが(東京新聞10月5日配信記事)、今回の一般的意見5号をはじめとする移住労働者権利委員会の見解も踏まえた抜本的見直しが求められます。
同委員会の一般的意見2号(非正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利)、3号(国際的移住の文脈にある子どもの人権)、4号(同)については日本語訳を作成・公開済みなので、そちらを参照。