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新型コロナと子ども――オーストラリアの「キッズ・ヘルプライン」に寄せられた声
少し前の話になりますが、オーストラリア国家人権委員会は、キッズ・ヘルプライン(Kids Helpline)を運営する「ユアタウン」(yourtown)と共同で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19パンデミック)が子どもたちに及ぼしている影響についての報告書を発表しました(2020年9月15日)。
● Australian Human Rights Commission - Pandemic: Serious impacts on kids
https://humanrights.gov.au/about/news/pandemic-serious-impacts-kids
『キッズ・ヘルプラインに連絡してくる子どもたち・若者たちへのCOVID-19の影響』(Impacts of COVID-19 on children and young people who contact Kids Helpline)と題された報告書は、2020年1月から4月末までの期間にキッズ・ヘルプラインに寄せられた子ども・若者(5~25歳)の声2,567件を分析したものです。
子ども・若者が提起する悩みごとの内容は年齢層や属性によっても異なりますが、全体としては次の5つの問題がもっとも多く挙げられています。
1.COVID-19に起因する精神保健上の悩みごと
2.社会的孤立
3.教育への影響
4.家庭生活への影響
5.計画していたことや通常の活動の変更
オーストラリア国家人権委員会のロザリン・クラウチャー(Rosalind Croucher)委員長は、分析の結果を踏まえ、
「子どもと若者は親、学校、友人の支援に依存しているため、COVID-19の影響をとりわけ受けやすい立場にあります。彼らがキッズ・ヘルプラインに対して提起した悩みごとは、子どもたちだけではなく、困難を経験している家族や、遠隔学習を行なっている学校に対しても、継続的支援を提供していくことの必要性を浮き彫りにするものです」
とコメントしています。
報告書では、国連・子どもの権利委員会が2020年4月8日付で発表した声明にも詳しく言及されています。政府として今後取り組むべき優先的課題として報告書が挙げるのは、以下の6点です。
1)子ども・若者に焦点を当てた精神保健サービス/支援に投資する。
2)明確かつ正確な、子どもにやさしい情報とリソースの普及を促進する。
3)良質なオンライン学習の提供に関して学校その他の教育機関を支援するとともに、脆弱な状況に置かれた児童生徒に対する援助とつながりを維持する。
4)経済的支援の提供範囲を、そのような支援を必要とするすべての家族と若者に拡大するとともに、スキル開発および若者の雇用を回復の主たる焦点のひとつに位置づける。
5)脆弱な状況に置かれた子ども・若者(家族間暴力・児童虐待・ネグレクトを受けるおそれがある子ども、障害のある子ども、ホームレスとなるおそれがある子ども・若者を含む)のためのサービスを優先する。
6)COVID-19対策および復興計画に子ども・若者の関与を得る。
日本でも、たとえば、COVID-19パンデミック発生以降にチャイルドラインに寄せられた子どもたちの声の傾向が2020年チャイルドライン年次報告〔PDF〕(特定非営利活動法人 チャイルドライン支援センター)にまとめられています(pp.4-10)。その他、子どもたちや保護者を対象とするさまざまなアンケートも発表されています。残念ながら日本には国家人権委員会や子どもオンブズパーソンのような独立機関が存在しませんが、関連省庁・自治体は、このような子どもたちの声を十分に踏まえながら長期的対策をとっていくことが必要です。
なお、オーストラリア国家人権委員会の子ども担当委員が行なってきた活動については、Facebookへの以前の投稿(2018年7月26日・2019年11月23日)も参照。
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