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欧州評議会のランサローテ委員会、子どもの性的自撮り画像/動画に関する報告書を発表
欧州評議会・ランサローテ条約(性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する条約)の実施状況を監視しているランサローテ委員会は、3月10日付で新たな報告書をとりまとめ、4月7~8日にローマ(イタリア)で開催された欧州評議会のハイレベル会議「地平線を超えて:子どもの権利新時代」で発表しました。
★ Council of Europe: Child self-generated sexual images and videos: new report provides guidance to governments
https://www.coe.int/en/web/portal/-/child-self-generated-sexual-images-and-videos-new-report-provides-guidance-to-governments
今回の報告書(PDF)のテーマは、「情報通信技術(ICTs)によって容易にされる性的搾取・性的虐待からの子どもの保護:子どもの性的自撮り画像/動画が提起する課題への対応」(The Protection of Children against Sexual Exploitation and Sexual Abuse Facilitated by Information and Communication Technologies (Icts): Addressing the Challenges Raised by Child Self-Generated Sexual Images and/or Videos)です。
今回の報告書は、同委員会によるモニタリング活動に子どもたち(10か国・306人)が直接参加し、その声が報告書に反映された点でも注目されます。子ども参加のプロセス等については別に資料(PDF)としてまとめられています。
報告書は全227ページからなる大部なものですが、委員会の主要な知見と勧告をまとめたファクトシート(PDF)が作成されているので、以下、そこから法的枠組みと防止に関する主な勧告を紹介します。
法的枠組み
(p.4;以下の勧告のうち、最初の4項目については締約国に「要請する」(ask)、残りの4項目については締約国に「奨励する」(encourage)という文言が用いられている。)
● 自分自身の性的な自撮り画像/動画の所持、他の子どもの性的自撮り画像/動画の所持(そこに登場する子どもがインフォームドコンセントを与えている場合)または積極的に求めないのに送られてきた他の子どもの性的自撮り画像/動画の所持を理由として、子どもを訴追しないこと。
● 他の子どもと性的自撮り画像/動画をシェアする行為について、シェアが自発的なものであり、同意に基づいており、かつ自分たち自身の私的利用のみを目的としている場合には、子どもを訴追しないこと。
● 他の子どもが作成した性的表現物の頒布または送信について子どもを訴追するのは、当該表現物がランサローテ条約第20条(2)にしたがって「児童ポルノ」に該当する場合の最後の手段とすること。
● 子どもの性的自撮り画像/動画を成人が所持することについて刑事責任が免除されうる場合、次のすべての保障措置が存在しているようにすること。
-登場する子どもが、性的活動を行なうための法定年齢に達しており、かつ自己の性的自撮り画像/動画を当該成人が所持することについて同意している。
-子どもの性的自撮り画像/動画を所持している者と当該画像/動画に登場する子どもの年齢および成熟度が近い(たとえば、容認される最大の年齢差を定めておく)。
-子どもの性的自撮り画像/動画の製造・所持においていかなる虐待も行なわれなかった。
● 子どもの性的虐待行為を描いた表現物および/または子どもの性器に焦点を当てた表現物について、「児童ポルノ」ではなく「子どもの性的虐待表現物」(child sexual abuse material: CSAM)という文言を用いる。
● 子どもの性的自撮り画像/動画に関わる行為への明示的言及を自国の法的枠組みに導入する。
● 「グルーミング」(性的目的での子どもの勧誘)について、たとえそれが対面で会うことまたは子どもの性的虐待表現物の製造につながらない場合でも犯罪とすることを検討する。
● 子どもに対する性的強要(sexual extortion)に対処するための具体的罪名を創設する。または、犯罪者が、子どもの性的自撮り画像/動画を、自己に対して追加的な肉体的その他の性的行為を行ないまたは金銭的利益その他の利益を提供するよう子どもに強制し、強要しまたは脅迫するために利用した場合には、当該表現物をそもそも所持していたことおよび強要行為を行なったことの双方について訴追を行なうようにする。
防止
(p.8;以下の勧告はいずれも締約国に「奨励する」内容である。)
● 子どもの性的搾取・性的虐待がICTsによって容易にされる場合および子どもの性的自撮り画像/動画の悪用によって提起される課題との関連を含め、子どもの性的搾取・性的虐待の防止を向上させるために市民社会との協力を拡大する。
● 締約国が促進しまたは実施する意識啓発キャンペーン(どのような層が対象とされるかは問わない)に、子どもが自己の性的自撮り画像/動画を作成・シェアした場合(強要の有無を問わない)に直面する性的搾取・性的虐待のリスクについての説明が含まれるようにする。
● 子どもの性的自撮り画像/動画の現象を観測・評価する目的で、全国および地方のレベルでデータ収集および調査研究を行なう。
● 教育の場面で、ICTsによって容易にされる子どもの性的搾取・性的虐待のリスク(子どもの性的自撮り画像/動画との関連を含む)の問題について取り上げる。
● より一般的なセクシュアリティ教育の場面で、ICTsによって容易にされる子どもの性的搾取・性的虐待のリスク(子どもの性的自撮り画像/動画との関連を含む)について子どもたちへの情報提供を行なう。
● 子どもと日常的に接する人々(たとえば教育部門、保健部門および社会的保護部門ならびにスポーツ・文化・余暇活動関連の分野の関係者)が、たとえば教育または継続的研修を通じ、子どもの性的自撮り画像/動画関連のリスクについて十分な知識を有していることを確保する。
なお、やはり子どもの性的自撮り画像/動画の問題に焦点が当てられた2020年の「子どもの性的搾取・性的虐待に反対する欧州デー」(11月18日)についての投稿もご参照ください。
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