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国連・子どもの権利委員会、「発展の権利条約草案」への意見を公表

 現在、国連には「発展の権利」(the right to development)に関する作業部会が設けられ、条約化の可能性を含む議論が進められているところです。

 2020年1月には条約草案コンメンタリーが公表されました。草案の構成は末尾に示します。

 国連・子どもの権利委員会は、2月9日、この条約草案に対する意見書(PDF)を公表しました。

 委員会がまず指摘しているのは、条約草案には「子ども」への明示的言及がないことです。年齢に基づく差別を禁止する規定(8条1項)、特別措置または是正措置が必要となる可能性がある理由のひとつに年齢を挙げる規定(15条1項)、持続可能な開発との関係で「将来世代」に言及する規定(22条)など、間接的に子どもに関わる条項はあるものの、「子ども」の語は草案には含まれていません(コンメンタリーでは数か所で言及されています)。この点について委員会は、女性(16条)や先住民族・部族民(17条)に関する独立条項が掲げられていることにも触れながら、失望感を表明しています(パラ3-4)。「将来世代」への言及についても、子どもの権利を具体的に承認しないままでは不十分であると指摘しています(パラ6)。

 また、草案4条には次のようにすべての人の参加権を保障する規定が置かれています。

第4条-発展の権利
1.すべての人間(human person)およびすべての人民(peoples)は、発展に対する不可譲の権利を有する。この権利に基づき、すべての人間および人民は、他のすべての人権および基本的自由に一致しかつこれらの人権および自由に基づく経済的、社会的、文化的、市民的および政治的発展に参加し、貢献しかつこれを享受する権利を有する。
2.すべての人間およびすべての人民は、発展およびそこから生じる利益の公正な配分に、積極的に、自由にかつ意味のある形で参加する権利を有する。

 しかし委員会は、子どもはこのような参加権の行使にあたって特有の課題に直面することを指摘します(パラ7)。また、ジェンダー平等に関する条文(16条)では「女性および女児」(women and girls)という定型表現が4か所で用いられていますが、女性の完全かつ効果的な参加および指導的立場における機会均等について定めた規定(16条2項(b))では「女児」への言及がないことも、委員会によれば、子どもの参加権が十分に認識されていないことの表れです(パラ8)。そこで委員会は、条約草案が、4条2項の権利および国際法で保障されている参加権を子どもが享受できるようにするための効果的根拠になるよう、注意深く検討することを求めています。

 これらの点も含め、委員会は、条約草案で子ども(の権利)に十分な注意を向けることが必要だと指摘し(パラ11)、そのための対話・議論にも積極的に参加してきたいと表明しています(パラ12)。

 このほか、発展の権利に関わって子どもが影響を受ける可能性のある問題の多くは越境的性格を有するとして、条約草案において域外裁判権(extraterritorial jurisdiction)の問題を十分に取り上げるよう強く求めている(パラ10)のも興味深い点です。

 発展の権利に関する条約が採択される見込みがどの程度あるのかといった点については把握していませんが、このような議論で子どもの権利に焦点を当てることは重要であり、引き続き国連・子どもの権利委員会の役割に期待します。なお、国連・社会権規約委員会持続可能な開発に関する一般的意見の作成を開始しており、4月に子どもたちとも協議する意向を明らかにしていますので、それについて取り上げた記事も参照。

【発展の権利に関する条約草案:構成】
前文
第1部
 第1条 趣旨および目的
 第2条 定義
 第3条 一般的原則
第2部
 第4条 発展に対する権利
 第5条 自決権との関係
 第6条 その他の人権との関係
 第7条 国際法上の人権を尊重するすべての者の一般的義務との関係
第3部
 第8条 締約国の一般的義務
 第9条 国際機関の一般的義務
 第10条 尊重する義務
 第11条 保護する義務
 第12条 充足する義務
 第13条 協力する義務
 第14条 強制的措置
 第15条 特別措置または是正措置
 第16条 ジェンダー平等
 第17条 先住民族および部族民
 第18条 発展に対する権利の享受を制限することの禁止
 第19条 影響評価
 第20条 統計およびデータ収集
 第21条 国際の平和および安全
 第22条 持続可能な発展
 第23条 調和的解釈
(以下略)


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平野裕二
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