ウェールズ(英国)の子どもコミッショナー、子どものニューロダイバーシティ(神経多様性)に対するアプローチを変革する必要性を強調
4月2日(日)は「世界自閉症啓発デー」でした。
国連広報センターのツイートにもあるように、最近は「神経多様性/ニューロダイバーシティ」の考え方も広がりつつあります。
そのような状況のなか、ウェールズ(英国)の子どもコミッショナーが、神経発達症群のある子どもとその家族の支援のあり方に関する報告書を発表しました(3月22日)。
シンボル入りのイージーリード版も作成されています。
『ニューロダイバーシティに対する「どの扉からも入れる」アプローチ:さまざまな経験の本』(A No Wrong Door Approach to Neurodiversity: a book of experiences)と題するこの報告書では、ニューロダイバーシティ/ニューロダイバージェンスなどの用語について次のように説明されています(p.3)。
子どもコミッショナーによれば、このような多様性を有する子ども・若者は、長期間待たなければアセスメントを受けることができず、その間はほとんどまたはまったく支援を受けられないでいます。このような子ども・若者を支援するためのやり方として子どもコミッショナーが提唱する「どの扉からも入れる」(No Wrong Door)アプローチとは、「子ども・若者が援助をどこで求めても受けることができるようにする――つまり、『ここじゃありません』(you've knocked on the 'wrong door')と言われて必要な援助が受けられないことがないようにする」ものだと説明されています。日本でいう「ワンストップ」支援に近い概念だと言えるかもしれません。
報告書の発表ページに掲載されている「キーメッセージ」は次の3点です(太字は原文ママ)。
なお、ウェールズ政府は2022年7月に「神経発達症群大臣諮問グループ」(Neurodevelopmental Conditions Ministerial Advisory Group)の設置を発表しています。報告書には主として同グループに宛てた勧告も掲載されており(p.24以下)、上記の3項目はいずれもそこに含まれていますが、このほか「支援的な学校環境」についても触れられていますので、その部分だけ訳しておきます。
日本の生徒指導提要(2022年12月改訂版)でも、
「発達障害のある児童生徒と同様に適応上の困難さを抱えている児童生徒は決して少なくありませんので、診断の有無により対応を考えるのではなく、児童生徒が抱える困難さから対応を考えることが大切です」(p.270)
などと指摘されており、「診断主導」ではなく「ニーズ主導」の対応の必要性が意識されていますが、ニューロダイバーシティの考え方も踏まえた学校・教育のあり方や子どもたちへの支援方法について、さらに考えていく必要があるでしょう。
この点につき、『“叱る依存”がとまらない』(紀伊国屋書店・2022年)でも話題の村中直人さんにインタビューした、ハフポスト日本版〈「ニューロダイバーシティ元年」を経て2023年は方向性が決まる年。第一人者、村中直人さんに聞く〉なども参照。「ニューロダイバーシティ」と「ニューロユニバーサリティ」の対比に関する説明など、わかりやすくまとめられています。