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世界子どもの日(11月20日)にあたり、国連・子どもの権利委員会があらためて武力紛争における子どもの保護を呼びかけ

 世界子どもの日にあたる11月20日、子どもと武力紛争に関する国連事務総長特別代表のサイトには〈何ひとつ祝うことのない世界子どもの日〉Nothing to Celebrate on World's Children's Day)と題する記事が掲載されました(この投稿のサムネイル画像は同記事のものです)。国連・子どもの権利条約が採択されて30年以上経つにもかかわらず、世界中の子どもたち、とくに武力紛争の状況下で暮らしている子どもたちが依然として暴力・虐待・抑圧の被害を受け続けていることを、深く憂慮する内容です。

 国連・子どもの権利委員会も同様に、世界子どもの日を「陰鬱な気持ちで」(in a sombre mood)迎えました。以下、委員会の声明(11月20日付)の日本語訳を掲載します。来年の世界子どもの日は、もう少し晴れ晴れとした気持で迎えられるようになっていることを祈ります。 

 世界子どもの日は、一般的に、国連が1989年に子どもの権利条約を採択して以降の成果を祝福する日と見なされてきました。しかし、34年を経た現在では、武力紛争で最近命を落とした多くの子どもたちを哀悼するための日になってしまっています。ガザではわずか5週間に4,600人以上の子どもたちが殺害されました。この戦争は、より短い期間でより多くの子どもたちの命を、私たちがこの数十年間目にしたことのない水準の残酷さで奪っています。

 委員会はかつて停戦を促しました。残念なことに、国連安全保障理事会はその呼びかけに重きを置いていません。2023年11月15日の安保理決議で人道的休戦および人道回廊が求められたことは国際社会による前向きな対応ですが、子どもたちに対して仕掛けられている戦争がそれで終わったわけではありません――それは、子どもがある日には殺されずにすむことを可能にするだけで、他の日に殺されることを防ぐものではないのです。

 セーブ・ザ・チルドレンの調査によれば、世界中で4億6,800万人の子どもが武力紛争地帯に暮らしています。ユニセフの統計に基づけば、これは、世界の子ども人口24億人の約20%を占めます。

 世界子どもの日にあたり、委員会は次のことも強調したいと思います。すなわち、私たちが何よりも気にかけているのはパレスチナ被占領地域での武力紛争ですが、世界の多くの場所の武力紛争で数千人の子どもが亡くなり続けていることを私たちは依然として痛切に懸念しているということです。このような場所としては、ウクライナ、アフガニスタン、イエメン、シリア、ミャンマー、ハイチ、スーダン、マリ、ニジェール、ブルキナファソ、コンゴ民主共和国、ソマリアなどが挙げられます。検証済みの数字によれば、2022年には、殺害されまたは障害を負わされた子どもの人数は世界で8,630人でした。深く懸念されるのは、人道アクセスを否定された子どもの人数が昨年は4,000人に達したことです。ガザの現状に鑑みれば、これらの重大な人権侵害の被害を受ける子どもの人数は指数関数的に増加しています。

 武力紛争の影響を受ける少女の苦境も臨界点に達しています。スーダンとハイチでは少女たちの誘拐やレイプの報告が確認されており、とくに女性および子どもの人身取引に関する特別報告者からは、人道サービスへのアクセスの悪化によって少女たちが武装集団によって徴用されるようになっているという懸念が提起されてきました。

 いわゆる「外国人戦闘員」の子どもたちもさらなる懸念分野です。委員会は、通報手続に基づく3つの申立てで、シリア北東部のキャンプに収容されている子どもたちを帰還させるべきであると勧告してきました(平野注/たとえばフランスフィンランドに対する勧告を参照)。子どもとその母親を帰還させるために行動した国もあるものの、推定3万1,000人の子どもたちがいまなおキャンプの劣悪な条件下で生活しています。委員会はまた、前思春期に達した段階で母親から引き離される少年たちや、刑事施設に収容されている数百人の少年たちについても、依然として非常に懸念しています。

 委員会は、陰鬱な気持ちで世界子どもの日を迎えます。世界中の子どもたちに影響を与えている戦争を前に、私たちは、停戦を、人道法の基本に立ち戻ることを、そして武力紛争を背景として子どもに対して行なわれたすべての重大な人権侵害を権限のある当局が徹底して捜査することを、あらためて求めます。

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平野裕二
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